なんでさみしそうな人に心が動かされるんだろう?

なんでさみしそうな人に心が動かされるんだろう。最近見た二つのコンテンツを見て思う。

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一つは、奥浩哉の『GIGANT』。
AV女優が突然巨大化できるようになり、謎の巨大怪物と戦うことになり、、、というような漫画。
『GANTZ』の作者だけあって、戦いはグロいし、がっつりとエロい。
ただ、一番印象に残ったのは、ヒロインの寂しさだった。彼女は、暴力傾向のある彼氏、ヒロインを金づる扱いする家族と、不安定な人間関係の中にいる。
主人公へのやや極端な愛が描かれるが、これは彼女の満たされなさが故だな、と思う。物語の中で、捨て身なまでの勇気をヒロインが見せるのは、決まって主人公を守るためだ。そして、それは、一人だと孤独で、本当に大切だと思えるのが主人公しかいないからなのだろう。そう思うと、その勇気が、なんだか切なく感じられる。

もう一つは、やや書くのが恥ずかしいけど、いわゆる特撮の戦隊モノだ。前期に放送していた『機界戦隊ゼンカイジャー』。見始めて、意外に面白く、サクサク見続けている。今、33話まで見ている。
基本的に、しょうもなくさえあるギャグが中心だ。でも、テンポが良く、毎回飽きさせない工夫が凝らされている。特に、名乗りのシーンに変化をつけるのがすごい。

その中で、物語の推進力は、二人の登場人物の持つ家族の欠損だ。
主人公の五色田界人は、両親が10年前に行方不明になっている。そして、物語の序盤で、両親は敵に攫われたものだと知る。
界人は、ほとんど完全無欠の主人公に近い。常に前向きで、誰とでも友達になりたいと願い、敵を倒し世界を救うことを決して諦めない。
そのやや非現実的な人物像が、両親が絡んだ時だけ揺らぐ。他の全てを投げ打って、敵に侵入し、両親を探そうとする。そんな自分を後で悔いる。その姿はとても人間的だ。そして、彼の完璧な部分も、前向きだった両親を好きだったゆえ「敢えてそう振る舞っている」部分があるように見えてくる。
もう一人が敵のステイシー。母親を幼くして失った彼は、その母親への思慕を界人の祖母に見る。
主人公を倒すために様々な作戦を立てるのに、祖母が関わるとどうしてもそちらを助け、喜んでもらえる行動を優先してしまう。

(いい意味で)しょうもないギャグが連発される話の中、物語の縦軸として、この二人の「さみしさ」がある。そして、それぞれに微妙な感情を抱き続ける。
それが、子ども向けの中で、妙に大人びた物語に映る瞬間があって、見てて飽きない。多分、このままの勢いで最後まで見てしまうだろう。

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こうして書いてみたけど、なんでこの「さみしさ」に惹かれるのかは、やはりうまく言語化できない。
共感、はある。さみしさは自分の中にも突然ある。でも、今並べた登場人物たちのような強烈な寂しさはない、と思う。
憐憫、はある。かわいそう、という気持ちが登場人物に思い入れさせている部分はある。でも、だから好きな訳じゃないと思う。

その二つの、間ぐらいの感情なんだろうか。
よくわからない。
よくわからないまま、こういう話に感動し続けるのかもしれない。

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