ミックスヴォイスの迷宮[後編〜ゴールは見えるのか]
ヴォーカルトレーナーの竹本です!
本日も音楽ブログをお届けします。
まさかの3部構成となってしまった巨大迷宮のお話。今しばらくお付き合いください!
諸説ある『ミックスボイス』ですが、個人的には「ある側面から捉えると近いものは“あるかも”しれないが、魔法のような声は“ない”」といった印象を持っています。
今日はアプローチ方法(捉え方)を、一部ですがご紹介していきましょう。
【竹:ここからは私的なアプローチ方法(捉え方)です。】
トレーニングの大前提として・・・
①ミックスボイスという決められた声は探さなくていい
ここまで読んでいただいた方には、『ミックスボイス』というものが、とても曖昧なものだということはお分かりいただけたと思います。“言葉”に囚われる必要はありません。それ以前にやらなくてはならないことが山のようにあります。その領域に達した時に改めて考えましょう。
②地声・裏声という呪縛を捨てる
そもそも日本人が「地声・裏声」の2つに分けてしまうことも、話がややこしくなる原因なのかもしれません。便宜上使っていく上でも、“どの声のことを指すのか”トレーナーと共通の認識を持ちましょう。個人的には、レッスンでは伝わりやすさ優先で言葉自体は使用します。『裏声=ファルセット』と使うことが多く、一般の人がイメージする地声的な声を育てていくため③で示すようなアプローチをしていきます。
③大きな“3つ”の声区(ボイスレジスター)がある
地声・裏声の呪縛を捨て、声域を広げていくとほとんどの人(全員と言っても良いです)が、“大きく”3段階に声が切り替わっていくことを感じるようになります。どの音でどう体感が変わっていくのか、そもそもその変化自体に気づくことが大切です。
低域から高域にかけて、[低音域]チェストボイス→[中(•高)音域]ミドルボイス→[高音域]ヘッドボイスとなります。声帯が近づいた状態で振動し、伸展・弛緩(伸び縮み)や振動部分の削減などが起こり、声帯の振動が変化していった結果、高さが変わります。これはファルセットとは違う動きになります。声区自体は感覚に頼る部分が大きいため、分からなくても焦る必要はありません。(具体的な声帯の動きに関してはまた別の機会に)
↓こちらの過去記事も参考にしてください
『声域が広がって気づくこと』(2020.9.10)
④ミドルボイス≠ミックスボイス
個人的に“ミドルボイス”としている高さは、男女共に半音で4つ(ブレイクポイントを入れると6つ)程度の幅しかないのですが、一音一音で音色が変化していきます。弱ければ弱いほどその変化は顕著です。音圧(呼気圧)が高められると一定の音色でも保てるようになります。特に『息を多く混ぜる』ようなこともなく出すことができます。息漏れの状態が習慣化するのは発声上のトラブルの原因にもなるので注意が必要です。
⑤各ボイスの境目では『混ざり合う』ような感覚は“ある”
ブレイクポイント(換声点)とも言われる切り替わりのポイント(音)があります。
その前後では少しづつ音色が変化していき、次のボイスへと置き換わっていきます。これを『ボイスミックス』と呼びます。各ボイスが半音3つ分の音程度、短ければ半音1つ分の音でも上手く溶け合っていくようになります。幅広い音域を使いこなすには、ここの安定とスムーズな行き来が大きな課題になります。「むしろこの1音だけ何とかなれば」となっていく人もとても多いですよ。この辺りが一人歩きして「ミックスボイス」という“幻の声探しツアー”が乱発される原因になっているように思います。
その中で、“ミックスボイス”という状態を経験したいのなら・・・
『各ボイスを充実させ『小さくも大きく』も出せるようになること』
・・・です!
恐らく最も重要な指標で、特にミドル〜ヘッドが『小さく出せる』ようになることが鍵を握っています。少しの息の送り込みでも声帯が反応して正しく動き、安定して声が出せるようになりましょう。ブレイクポイントを行き来する際、もう少し強く出すのか弱く出すのかなどの微調整もやりやすくなります。力の抜き加減・入れ加減がコントロールできるようになりましょう。
結果、スムーズな声区の行き来が行えるようになり、弱めて軽く出すことも、少し息を多めに混ぜることも、力強くエネルギッシュに出すこともできるようになっていきます。
これができるようなるには、前編でもお伝えしたように、呼吸や発声、脱力すらもコントロールできるくらい身体(楽器)を使いこなせていなくてはなりません。
それができていない人が、飛び越えて手に入れられるようなものでは、決してないのです。
巨大迷宮のお話、文章ではなかなか伝えきれないお話でしたが、少しでもゴールは見えましたか?
初心者ほど“ミックスボイス”というものに惑わされがちです。
先日、レッスン中に生徒さんが『これはこの領域に辿り着けないと分からないですね・・・』と悟った瞬間がありました。そして少し嬉しそうにしていました。
日々の積み重ねが実を結んでいきます。今やるべきことを、今しかできないことをやりましょう!
長いブログになりましたが、結局語り尽くせなかったので(笑)、いつかまた一緒に考察していきましょうね!
それでは次のブログでお会いしましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?