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【第20話】生きたまま火葬する事故はホントにあるの? 火葬場の都市伝説を元職員が詳しくぶった切り!【下駄華緒の弔い人奇譚】


―第20話―

「生きたまま火葬!?」
都市伝説的にネット上でよく語られる話題で、生きたまま火葬をしてしまう事がある……
炉の中で苦しさのあまり暴れて叫び声を上げているがもう間に合わないので職員は火を止めることはない……

――というような事がまことしやかに囁かれています。
想像するだけでも本当におぞましいですが、先に言っておくと現代日本でそんな事はありません。都市伝説が大好きな方には申し訳ないのですが残念ながらあり得ないことなんです。

何故かを火葬場職員と葬儀屋の目線でお伝えします。
まず、日本で人が死ぬと死亡診断書、もしくは検死案件書というものが必ず発行されます。
法治国家ですから国民が何故、どういう理由で、どのように亡くなったのかをキッチリと管理しています。なのでお医者さんに出していただく死亡診断書や検死をした後の検死案件書は「法的書類」としてみなされます。
それくらい国民の死亡理由をキッチリ管理しておかないとそれこそ殺人事件が起きたとしても気づかれなくなりますよね。何故死亡したのかを判明させるのは法治国家として必ず必要な事柄なんです。
そして、この国の医療は世界的にもちろん進んでいて死亡診断を誤ることはまずありません。
しかも日本では24時間以内に火葬をする事が基本的に禁じられています。なので、死亡診断書が発行されてから必ず24時間以上経ってからの火葬となります。

さらに、これは葬儀屋目線なのですが人は亡くなると急速に熱を無くします。さらにどんどん死後硬直が始まっていき遺体は遺体らしい振る舞いをしていきます。
例えば、ある方が病院でお亡くなりになりました。葬儀屋が駆けつけお通夜とお葬式の段取りを組みます。
1日、2日…と経つうちに遺体は冷たくなったり、硬直があったり、もちろん死臭もしてきます。しかも腐敗を抑えるためにドライアイスを遺体の体にあてます。
ドライアイスを一日中遺体の胸にあてるとどうなるか? 胸の辺りを中心にもうカッチンコッチンに凍ってます。ドライアイスをあてる部位は厳密に言えば葬儀屋によって若干の違いはあるかも知れませんが、胸の他にも左右の首元やお腹にもあてます。
この時点で、そもそも死んでいるどころか健康な人でもおそらく命がありません。

ここまで説明すると、いかに「生きたまま火葬する」という都市伝説が現場からするとトンデモ説であるかがわかると思います。

そして、これは火葬場職員目線なのですが、もし――もしも、叫び声が聞こえたら、絶対に火を止めます……


著者紹介

下駄華緒 (げた・はなお)
2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。

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