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中国のブロックチェーンとその活用事例(国家戦略・規制)

中国政府は評価しており、産業の発展に繋がるとして支援する姿勢

前回、中国本土における仮想通貨ついて、現状はネガティブに取り扱われていると書いた。

一方、仮想通貨を生み出すブロックチェーンの技術自体は、中国政府は評価しており、産業の発展に繋がるとして支援する姿勢。

スタートアップも増加中

実際に中国のブロックチェーン業界は急激に発展中で、資本の流入とスタートアップも増加中。

「ブロックチェーン特区」の設置も実施

中国の多くの地方政府は、経済発展の原動力としてブロックチェーンに期待しており、一部では「ブロックチェーン特区」とよばれる優遇政策区画の設置も実施。

特区とは、省や市レベルにて設置する優遇政策区画であり、ブロックチェーンの技術や事業開発に特化したものをブロックチェーン特区と呼んでいる。

2020年のブロックチェーン特区は20以上

2016年11月、初のブロックチェーン特区が上海市宝山区に設置されたことに続き、杭州市、広州市、重慶市、青島市、武漢市、長沙市、仏山市等で、ブロックチェーン特区が設置された。

2020年の時点で、20以上のブロックチェーン特区が設置されている。

湖南省では2025年までに5つのブロックチェーン特区を設立する予定

湖南省で承認されたブロックチェーン特区は、「湖南省デジタル経済開発計画(2020-2025)」に基づくもの。

この計画では、IoTやAI、ビッグデータといった分野と並んで、ブロックチェーンが主要プロジェクトに指定されている。

それに加え、2025年までに5つのブロックチェーン特区を設立することが明言されている。

大手ブロックチェーン企業10社を組織するスローガンも掲げる

また、「2025年までに多くのポピュラーなアプリケーションシナリオを展開し、全国的な影響力を持つ大手ブロックチェーン企業10社を組織する」というスローガンも掲げられている。

参画企業への報奨金支援もある

参画企業に対しては、年間最大50万元(約750万円)の出資や、研究成果に対する最大100万元(約1500万円)の報奨金、研究所や開発センターに対する最大300万元(約4500万円)の報奨金、上級技術者や管理者に対して3年間、100%生活手当等の支援が実施されることが定められている。

既に公立病院でブロックチェーンのプラットフォームを使用している

ブロックチェーンの公的な事例としては、この海南省にある公立病院「澄邁県(ちょうまいけん)人民病院」において、2021年1月11日、ブロックチェーンで設計された請求書の管理プラットフォームを使用し、患者に電子請求書を送信した。

同省における、ブロックチェーンによって請求書を発行し、記録する最初の病院となった。

行政プラットフォームには組み込み済み

海南省においては、公共機関のオンライン行政プラットフォームにブロックチェーン技術を組み込んでおり、限定地域のみで利用可能となっている。

同省は、このような公共機関の公式文書の処理にブロックチェーン技術を採用することに注力しており、今後、他の地域にもサービスを拡大する予定とのこと。

人民元のデジタル化も実現見込み、既にトライアルも行われている

なお、中国の法定通貨の人民元のデジタル化もブロックチェーン技術によって実現見込みであり、中国人民銀行は、その実現に向けて動いており、2019年10月24日には、習近平が「ブロックチェーン技術推進に取り組むべき」と発言している。

この翌日に、中国資金の流動化の期待感からか、BTC価格も前日比15%程度上昇したとされている。

既に一部の地域で、トライアルも行われているが、オープンになっている事例としては、上海交通大学の医学院付属同仁病院で、携帯電話が介在しない前提での、デジタル人民元が搭載可能なカードである「ハードウォレット」のトライアルが開始。

小さい事例であるが、職員食堂で、このスマートカードを使ってデジタル人民元で代金を支払うことが可能。

このスマートカードは、カード上の窓枠に、支払い金額、残高、支払い回数が表示される。

この病院では、この次の段階として、受診者への診療費、健康診断や駐車場の料金などの決済シーンで、デジタル人民元を試験的に導入する予定であり、その目的は、高齢者や収入の格差による「デジタル格差」を解消することも含まれているとのこと。

習近平はコア技術のうちの一つとして推進、投資を加速すると示唆している

習近平は、2019年の10月に開催されたブロックチェーンに関する研究会にて、ブロックチェーンを中国のコア技術のうちの一つとして推進する意向を示し、それに伴う投資を加速すると示唆した。

中国の国際的な発言力やルール制定力を高めたい意図が見える

次世代の通信企画である5Gに続いて、ブロックチェーンの技術向上についても中国主導で進めることにより、技術の標準化を握り、中国の国際的な発言力やルール制定力を高めたい意図も見え隠れする。

まとめ

前回と今回を簡単に総括すると、以下の二つに集約されるだろう。

1. 中国本土での仮想通貨取引については、政府のコントロール下にて再開される見込み。
2. 但し、ブロックチェーン技術そのものは肯定し、積極的に技術向上を奨励している。

なお、仮想通貨とブロックチェーンについては、マイニングというものと切り離せないが、マイニングの環境とその事業や収益性についは、やはり中国本土は複雑な事情である。

これについては、次回か、また機会を見計らって述べてみよう。


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