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★我楽多だらけの製哲書(52)★~ミサイルよりも遠くまで届くゼレンスキーのメッセージとバインケルスフーク~

読売新聞オンラインでは、「北朝鮮は24日午後2時33分頃、同国西岸付近から東方向に弾道ミサイル1発を発射した。ミサイルは約71分間、約1100キロ・メートル飛行し、同3時44分頃に北海道渡島半島の西方沖約150キロ・メートルの日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下した。防衛省が発表した。」という記事が上がっていた。

長距離ミサイルの技術向上により、国際社会の安全保障概念は根本から変わっていると思われる。長距離ミサイルの技術向上に対応する形で迎撃システムの技術向上も進んでいるが、弾道が不規則なものや低空飛行のものについては迎撃が上手くいかないようで、迎撃システムによる防衛には限界があることが分かる。

18世紀のオランダの法律学者であるバインケルスフークは領海の幅を、陸地から大砲が届くまでの距離であると主張し、それが領海3海里の考え方の元となった。この考え方は「着弾距離説」というが、当時は、支配領域というものは大砲などの武器によって影響を及ぼすことができる範囲であり、それが領海の幅を決める根拠の一つと考えられたわけである。しかし大砲など武器の技術向上によって、相当遠くの海域まで影響を及ぼせるようになり、現在はこの考え方で領海を決めているわけではない。現在は国連海洋法条約によって基線から12海里(1海里は1852m)までと定められている。

また島がどこの国の支配領域であるかを考える際、「実効支配」という言葉がよく出てくる。これはその地域に実質的な影響力を及ぼしているかどうかであるが、それは端的に言えば「武力・軍事力」を及ぼして支配しているかということになる。

国境と国境が接している地域は、海や島とは支配領域の考え方が違う。しかし、国境線ギリギリから長距離ミサイルを発射し、相手国の領土に「武力・軍事力」を及ぼしているから届く範囲まで「実効支配」しているようなものだと考えたり、現に侵攻を行い「実効支配」を既成事実化させた後に当たり前のように支配領域として振舞ったりするようなことがまかり通れば、陸における安全保障も成り立たなくなってしまう。

「武力・軍事力」によって優劣をつけるというのは、本能的な世界に留まるものであり、人間の叡智や理性が発揮されているとはいえない。現在ウクライナ情勢について不当な侵攻であるとして注目が集まっているが、クリミア併合を各国指導者が事実上黙認してしまったことが現在に繋がっているといえる。

そしてゼレンスキー大統領の議会などでのスピーチには賛否両論あるが、彼がここまで国際社会に向けてメッセージを送っているからこそ、クリミア併合のときのような黙認の流れにならないような歯止めがかかっているとは言えないだろうか。

実際、アフガニスタンについては、タリバンが反撃し復権したことについて、確かに政府が早くに亡命したという事情はあるが、そうだとしてもそのまま黙認されているわけで、各国指導者が黙認できないように国際社会にメッセージを送ることの重要性が浮かび上がってくる。(ウクライナ情勢では逆に欧米諸国から亡命政府のアイデアも出ていたので、亡命したら既成事実にするしかないという主張は成り立たない)

声を上げ、各国国民に届くようにメッセージを送らねば、各国指導者は動き出さないという寂しい現実がウクライナ情勢を見ているとはっきりしてくる。メッセージは情報化社会では長距離ミサイルよりも遠くまで飛ばすことができ、各国国民に届けることが可能である。そして国際社会を動かし、平和を実現するためには各国国民の意識が大切なのである。国際政治は指導者任せではない。

「ペン(メッセージ)は剣(武力)よりも強し」
これを各国国民が意識して、平和への動きを作り出していく時である。
(この記事を書いていたらベランダに偶然、平和の使者が来ていたので、以下で紹介)

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