【連載小説】 夕刻に死す 【全十話/第三話】
数ヶ月もの家賃滞納の挙句、夜逃げしてからは行く当ても無くホームレスになっていた、という当の鶴巻にとってはトップシークレット、世間にとっては蝿が一匹叩き潰されて死ぬくらいにどうでも良い事実は営業担当の井ノ瀬によって白日の元に晒された。
正直に話せ、と詰め寄る広瀬とは目を合わさぬまま、鶴巻はぽつぽつと語り始める。
「正直言うと……俺も随分と悩んだんだ。世話になってた年寄の大家を警察に突き出すのも悪い気がしたしさ、耄碌しているうちの母親と大家が同じくらいだと思うと、申し訳な