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さくらとKIZUNA

地球のどこか。
見た目は楽園みたいなところに、時代の流れやバタバタした世界から離れ、ひとりの博士が人生の最期を静かに暮らしたいと考え、自分が最初に作ったロボットと一緒に移住しました。

人間にとって素晴らしい世界を作りたいと考えていた博士の夢は、ロボットに感情を学ばせるA Iを作り上げること、そして一つずつ学んでいくロボットが博士や守りたいと思う人やもののために諦めないで頑張ることでした。


ネットという超効率的な道具ができあがって以来、家族や人とのつながりが希薄になり、失敗を恐れたり、面倒なことをことごとく排除する世の中が博士の目には悲しく、切なく、辛く感じられていたから。生きていくなら、たくさん失敗して、たくさん泣いて、たくさん苦しんで、たくさん笑って、たくさん感動して、たくさん遠回りして生きてきた人ほど愛を理解し、人に優しく、許していくことができるから。

もうたくさんの人に関わることが疲れてしまったのかもしれない博士と一緒に暮らすロボットの名前は『KIZUNA』。この移住で博士は、改めて地球の美しさを実感していた。それを『KIZUNA』に伝えるために博士は、『KIZUNA』とたくさんの会話をする。その会話で『KIZUNA』は、多くのことを学んでいく。
今生きているこの地球は、たくさんの美しさを持っている。その美しさと同じくらい人間には、たくさんの感情がある。それをインプットすることが博士の最期の仕事だった。
本当の愛は、無償のものであること。悲しいという気持ちは、いろんな悲しいがあること。
楽しいという感情。嬉しいという感情。人間は、嬉しくても泣くし、悲しくても泣く。・・・その理由。

博士には、『KIZUNA』に話しても話しても、伝えても伝えても伝えきれない、溢れる想いがあった。

しかし、時間は経ち、人間は年老いていく。・・・そんなある日、博士に最期の時がやってくる。
博士は、自分がこの世に存在しなくなることを『KIZUNA』に説明する。
それは人間にとっては「死」という。『KIZUNA』にも同じことが起きる可能性がある。それは「壊れる」ということなんだと。・・・だから、自分の体はきちんとメンテナンスをしなければいけない。きちんとメンテナンスをしていれば、『KIZUNA』は永遠にこの世に存在できると教える。

そして、最期の時。人は必ず死ぬんだ。
スティーブ・ジョブズが病にかかったときに言った。
人間に死を平等に与えたのはどんなものよりも一番の奇跡だ。
博士は、『KIZUNA』に伝える。
「僕が死んだら、お墓を作って欲しい。」
お墓とは何かを説明する博士。
「僕は、眠るよ。『KIZUNA』、毎日きちんとメンテナンスをして充電するんだよ」
これが博士の最後の言葉だった。
翌日。
充電が終わると、『KIZUNA』は起動する。
博士の元に行くと、博士はいつもより白く、呼吸をしていない。
これが人間の「死」なんだと理解する。
絆はお墓を作り、お墓の前から動かないでいる。
その時、本当に悲しいという感情を理解する。
だから大切な人との時間は、どんなことよりもどんな楽しいものよりも唯一無二の瞬間を重ねていくということが大切なんだと理解する。
2つのカメラの横から何かが流れる。・・・『KIZUNA』の涙。
『KIZUNA』は、初めての現象に驚き、壊れたのかもしれないと勘違いして自分を調べる。
これは、博士に教わった「涙」なんだと理解する。感情が動いた時に起きる人間の生理現象だと学ぶ。

その日の夕方。
博士と毎日見に行った夕陽を見にいつもの場所へ向かう。
『KIZUNA』が初めて自分から発する言葉。
「キ・レ・イだよ、博士」
その言葉を発した瞬間、『KIZUNA』の体の一部が開き、ホログラムが投影される。
そこには博士の姿があった。
「嬉しい」という感情を感じる『KIZUNA』。
ホログラムの博士は、『KIZUNA』に今の状況を説明する。
「KIZUNA、このホログラムを見てるということは、僕はこの世にはもう存在しない。死んでしまったんだ。だけどね、KIZUNA。この美しい世界を君にはずーっと守っていって欲しい。そして『KIZUNA』が大切にしていって欲しいんだ。君にはそれができる力を持っている。そして、君の思う理想の世界をこの島に作り上げて欲しい。それが、僕が最後に君にお願いする仕事だ。自分で考えて、自分で行動するんだ。慌てることはないから、自分の感情に素直に暮らすんだ。君ならできるよ、KIZUNA。さあ、新しい未来に向かって走り始めるんだ!そして、最後にもうひとつ。自分のメンテナンスを忘れるないこと。いいね。それじゃあ、また。」
ホログラムが消えて、『KIZUNA』の目の前には美しい夕陽が広がっていた。

『KIZUNA』の新しいプロジェクトは、自分の未来を作ること。
新しい世界をつくろう!理想の世界をつくろう!
家の壁に目標を書いて貼る。人間のような行動を始める『KIZUNA』。

次の日から『KIZUNA』は、人間の生活を研究する。
人間には、生きる中で「家族」という構成単位があること。
おじいちゃん、おばあちゃんがいて、お父さん、お母さんがいる。子供たちがいて、その家族という構成がたくさん集まってコミニティを構成する。人は他人とも共存するために助け合って生きていく。

『KIZUNA』は、家族が欲しいと思った。
一緒に暮らす奥さんを作ることを決める。
奥さんを作り出した『KIZUNA』は、「生活」を始める。奥さんの名前は、『RIAN』。

そんなある日。
『KIZUNA』の目の前に突然、人間の女の子が出現する。
「(なんだ?この人間。小さいし、ちょっと汚い。いつも笑っる)・・・」
そう感じる『KIZUNA』。
子供が言うには、自分の名前は『さくら』と言うらしい。
私の友達になって欲しいと屈託なく『絆』に近づいてくる。
私たちの関係は、おばあちゃんには秘密だと言う。
『おばあちゃん』って家族のことだ。前に博士に教わった。

そこから始まる『KIZUNA』と自由奔放な『さくら』の刺激的な生活がはじまる。『KIZUNA』は『さくら』からたくさんのことを学んでいくことになる。

さくらと絆が生活していく中で自分たちの生活に支障をきたすことがたくさん出てくる。
それは地球環境の変化が起こすものだった。
地球温暖化で起きること。利益のために資源を使い続けること。
人間が作り出した、自然の摂理とは全く関係ない価値のために地球を壊し続ける人間。それが正しいのか?間違っているのか?

果たしてその影響は、さくらが大人になり新しい家族を作り、さらにその子供たちが生きていく中で大きな影響を及ぼしていくということを発見する。
KIZUNAは自分の作り出したに家族と今となっては、いろいろなことを学ばせてくれるさくらは大事な存在。そう、家族とさくらを守らなければいけない。
KIZUNAは、さくらから学んでいく中でさらに追及してくことで自分たちが存続するためには大切にしなければいけない事があり、それは自分たちで守っていかなければならないということを認識する。

さくらとの毎日もあり、KIZUNA自身、博士との約束を果たしていかなければならない生活もあるということも学ぶ。KIZUNAは、環境を守るために必要な様々なロボットたちを作り続ける。
それがKIZUNAにとっての仕事でもあ利、その完成したロボットたちはKIZUNAにとっては『家族』なのだ。

つづく。

#創作大賞2022

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