オーケストラ

イノベーションに求められる”コンダクターシップ”という在り方

超複雑な現代社会においてオープンイノベーションは必然であり、その場に指揮者として立つための在り方(センス、知見、マインド、技術、姿勢などを総合したもの)である”コンダクターシップ”は不可欠です。実際にプロの事業プロデューサーやファシリテーターとして新規事業に関わり自分自身でも投資して事業を立ち上げてきた経験からも、”コンダクターシップ”を発揮し続けることは本当に重要だと感じています。ただこの”コンダクターシップ”の概念は、私、渋谷健 独自のもので解説が必要なので以下にまとめてみます。


〇イノベーションが必要となっている背景
イノベーションが社会的に必要となっているのは、一言でいえば社会が複雑化しており、非常に困難な課題を解決しなければならないからです。なぜ解決しないといけないかというと、単純に社会機能が破綻して人類が存亡できなくなる恐れがあるから。これは国連が2015年に採択したSDGsにまとめられています。

一方でここまで複雑化した状況において、イノベーション創出は一人では当然、一つの会社でも実現することができません。多種多様な知見が結び付いていくことが必然だからです。イメージとしてはオーケストラのようなもので、それぞれ異なるプロフェッショナルが能力を最大限に生かしたうえで、かつハーモニーを創る、すなわち新たな価値を協働で創出しなければイノベーションはなしえなくなっているのです。これは「オープンイノベーション」という言葉で表現されたりもしています。


〇イノベーションに必要なコンダクターシップ
イノベーションを創出するには「オーケストラのようにそれぞれのプロフェッショナルが協働しなければならない」とするならば、真ん中に立つ指揮者が必要になります。大勢の人たちの期待や不安を一身に受ける中、創造性を発揮して、全員から最高のパフォーマンスを引き出し、かつハーモニーを創り出す重責を負う存在です。この指揮者としての在り方(センス、知見、マインド、技術、姿勢などを総合したもの)を”コンダクターシップ”と呼んでいます。

コンダクターシップの実践はひたすらに地道です。複雑な社会の中でまずは多様性を尊重することから始まります。一人一人の在り方を認め、自分の意見を言っていい・自分を表現していいと気づいてもらい、”やりたい”を引き出していくところから始まります。そして”やりたい”という気持ちを持った人同士をつなぎ、お互いを信頼できる関係性を築いていきます。すると互いの強みを活かして弱みを補完し得るチームに育っていきます。そのうえでそのチームが持っている可能性を広げていき、新しい価値をみんなで創っていくとともに、その価値を求める人に丁寧に届けていくのです。最終的には社会全体が”幸せ”を感じることができる価値を共有していくことになります。


〇コンダクターシップの拓く未来
コンダクターシップは第4次産業革命の先をいきます。人類かこれまで経験してきた社会変革のほとんどは、コミュニケーションの変革でした。第1次・第2次産業革命は動力を生み出し、物理的な距離を解決することでコミュニケーションを変革しました。第3次・第4時産業革命はデジタルにより、時間的な手間を解決していっています。AIやロボットはその最たる例です。ではその先には何があるのでしょうか?残されたコミュニケーションの課題に”心理的な壁”があります。コンダクターシップはこの心理的な壁を”人と人との純粋な信頼”によって解決し、社会変革を実現していきます。

もしイノベーションにチャレンジする立場にあるなら、企業などの組織において戦略を担う立場にあるのなら、コンダクターシップを身に着けること・扱えるようにすることは必然です。AIやロボットがカギだ、と言っている戦略担当は今すぐ改めたほうがいいです。なぜならそれはもはや”誰でも想像できること”であり、”当たり前”のこととして扱うべきだからです。今ある技術革新のその先を見据え、人の可能性を最大化することにチャレンジすべきです。コンダクターシップの考え方はそのチャレンジを成果に結び付けることを可能にするのです。


〇コンダクターシップを伝える私の願い
コンダクターシップは、実際に真ん中に立って指揮を執る人だけが必要なものではありません。指揮を受けて自分自身のプロフェッショナルとしての能力を最大限発揮しようとするの立場であったとしても、またハーモニーが生まれてくる様子を見守ってその価値を享受しようとする立場にあったとしても、コンダクターシップについて理解していることは重要です。なぜならコンダクターシップには、多くの人の協力が不可欠だからです。コンダクターシップという概念が、事業に関わる人たちにとって当たり前のものになってくれたら、世界はきっとよくなります。だから少しずつでもこの概念を、これからも可能な限り、伝えていきたいと思います。


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