「IFA」は、日本において、投資運用の救世主となりえるか?


IFA(インディペンデント・ファイナンシャル・アドバイザー)という存在が、数年前から注目されている。
証券会社や銀行などに勤務していたセールスパーソンが、顧客本位のセールスを追求したいとの想いから独立して活躍しているようだ。
昨今、新聞等でも取り上げられ、IFAこそが顧客の立場に立った、投資運用のプロフェッショナルというようなイメージも持たれているが、実態としては、玉石混合であり、手数料目当てで販売しているようなIFAも存在している。
それでは、どのようなIFAを選ぶことが、人生100年時代に向けた投資のパートナーになりうるのだろうか?

一口に、IFAといっても、実態については、あまり知られていない。
現在、IFAと呼ばれる、金融商品仲介業者の免許を持つ者は 874者(2021年5月)。そのうち、法人格を持つ業者が600社以上を占めており、東京で約200社、大阪で約100社の法人IFAが活躍している。また、金融商品仲介業者に登録されている営業員の総数は、4200人程度(2020年12月)である。1年前と比較すると約3800人であったため、増加傾向にあることは間違いない。
彼らは、金融商品取引業者である証券会社と契約を締結し、その会社の商品を販売しているわけだが、IFAとの取引数でみると「エース証券」「SBI証券」「楽天証券」「PWM証券」「あかつき証券」などがその代表的な会社である。
IFAは複数の商品取引業者との契約も可能であるが、複数の証券会社と取引しているIFAは170社ほどにすぎない。複数の証券会社と取引しているIFAに理由を尋ねると、やはり証券会社において得意不得意の領域もあるらしく、会社の販売方針に合わせて、取引証券会社を選んでいるようだ。

次に、会社規模を見てみると、小規模の会社が多く、社員数5名以下のところが50%強であり、社員数20名を超えていれば、IFAとしては大手というような位置付けである。

さらに特徴的なのは、会社として正社員を雇用しているところは少なく、大多数は業務委託契約の締結により、業務委託社員として活動しているケースがほとんどである。
業務委託社員であれば、会社としての費用負担が少なく規模が拡大できるメリットがあるうえ、社員の側から見ても、会社の指示や細かい規則に縛られることなく、自分の裁量で顧客と接していけるというメリットもある。

このようなIFA業界であるが、保険代理店業界と比較してみたい。
保険代理店は、歴史的に損保代理店が古くから存在するが、90年代後半から生保中心に販売する募集代理店も増加してきた。現在、生命保険の法人募集代理店は3万強あると言われており、IFAとは圧倒的に数の違いがある。
これら生命保険の募集代理店は、一時期、保険会社も多数乗り合い、業務委託契約社員を大勢集めることで、すべての保険会社の手数料率やボーナスの最高レートを獲得。
個人や少数で代理店を行うよりも、大手代理店に属したほうが、手数料やボーナスが多く手に入れることができるという体制を確立することで大型化が図られてきた歴史を持つ。
2014年の保険業法の改正に伴い、規模や業務特性に応じた体制整備を義務づける規則が導入。代理店の募集人は、業務委託社員から正社員化が求められることになった。
実は、この時から数年間、業務委託型社員で成長してきた代理店のビジネスモデルに急ブレーキがかかるなど、保険代理店業界では大混乱が起こった。
その結果、淘汰されるところもあれば、逆にビジネスチャンスとしてとらえ、正社員を抱え、しっかりと社内教育を行い伸びてきた代理店なども出現した。
このような観点から、IFA業界を考察していくと、保険代理店の辿ってきた道が、今後、IFとしての成長に関して、参考にあふれているような気がする。

昨今、これら保険代理店が、金融商品仲介業に関心を抱き、IFAとして登録する例が増えてきた。保険だけの販売では限界を感じているというところも理由にあるようだが、やはり顧客の立場に立ってみると、万一の保障という観点だけではなく、100年時代に向けて将来の運用というところまで手厚くアドバイスすることが、顧客にとって大変重要だと感じたからに違いない。
保険業界で最初に習う単元に、『貯金は三角』『保険は四角』という言葉がある。
貯金は徐々にしか積み立てられないが、保険なら、最初からしっかりとした保障が得られるという意味なのだが、保障分野だけではなく、この三角部分のアドバイスの重要性に気が付いてきたようだ。

今まで、証券業界、銀行業界の出身者が多くを占めてきたIFA業界だが、今後は保険業界出身者が増えてくるようだ。逆に証券出身者の保険代理店登録も増えている。
このように顧客の人生を守るために、多角的なアドバイスできる人が増加してくることこそ、望ましい姿かもしれない。

2020年には、FA協会というIFAの会社が集まった協会が旗揚げし、活動を活発化させている。今後は、この協会に加盟しているIFAを中心に、理想的な顧客本位のセールスを目指してほしいと願っている。

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