コロナ禍の大学新入生が人間関係を築くには ― 学生からの提言レポートまとめ
2020年度は大学の新入生にとって特に大変な1年になりました。多くの授業はオンラインで行われ、多くの行事は取りやめになってしまいました。対面できる機会が少ない影響で同級生や先輩との人間関係を築くのが難しくなり、孤独を感じること、普段ならちょっとした雑談から得られたであろう情報を見逃してしまうことなどが増えました。
2021年度はどう取り組むべきでしょうか?一教員として考える note です。
2021年度の大学が置かれる状況
残念ながら、2021年度もコロナ禍はしばらく続くことになりそうです。入学式の開催や部分的な対面授業の実施を予定している大学が多いものの、対面できる機会は限られます。タダ飯を餌にしたサークルの新歓活動なんかはまだできないでしょう。
昨年は大学側にとっても初めての危機でしたので、うまく対応できないことがあっても多少は仕方がない面もありますが、2年目になりますので言い訳できません。新入生が同じ苦しみを繰り返してしまうことがないように、これまでの経験を踏まえて準備をしていく必要があります。
レポート課題:学生からの提言
この一年、大学側だけでなく、新入生たち自身も制約の中で様々な工夫を試みてきたようです。それ以外にも、実現には至らなかった「こうすればよかった」という後悔、「こうしてくれたらよかったのに」という不満などを多くの新入生が心の内に抱えているものと思われます。
このような新入生の声は、より良い新年度を迎えるため、大いに参考にすべきと考えました。また、そうした声を大学側と共有すること、新入生同士で共有することは、対面できる機会が少なかった私たちが一年越しの想いを共有して、より良い新年度に向けての準備に、同じ組織の仲間として一緒に取り組むための基礎になると考えました。
今回、神戸大学国際人間科学部グローバル文化学科の一年生後期の必修授業「情報リテラシー演習」において、これに関する演習課題、レポート課題を出しました。
演習課題:大学入学してから今までの振り返りドキュメントを1年生全員(約140人)で共同編集する(Google Documentを使用)。何があったかだけでなく、そのときどんな気持ちだったかなどを書くよう指示しました。匿名での活動でしたが、ひどく荒れることもなく、多くの情報・気持ちが書き込まれました。この活動に対しては「知らないことがたくさんあった」「自分と同じような気持ちの人がいたことがわかって安心した」といった感想が多く寄せられ、気持ちや情報を共有することがそれだけ難しい一年だったのだということが改めて実感されました。
レポート課題:演習で作成された共有ドキュメントを踏まえ、より良い新年度のための提言を行うレポートを書いてもらいました。大学側も色々と考えてきたと思いますが、この一年を新入生として過ごした実感を伴った提案は参考になるものがかなりありました。
「三人寄れば文殊の知恵」と言いますが、多くの提案が集まりましたので存分にいいとこどりしていきたいところです。ここからはそれらレポートからまとめていきたいと思います。
新入生が人間関係を築きやすくなる状況
まず、新入生たちによる提案内容から新入生がこんな一年でも人間関係を築きやすいと感じている状況が見えてきました。
・オンラインで事前につながっている人と対面であったとき
・オンラインで繰り返し会ったとき
・何かに一緒に取り組んだとき
オンラインで事前につながっている人と対面で会ったとき
後期からは対面での活動が少しずつできるようになってきたのですが、そこですぐに仲良くなれたという人もいれば、既に形成されていた輪にうまく入れずオンラインに籠るようになってしまったという人もいたようです。
対面の機会が多くあって避けることができない状況であれば、話しかけるのが苦手な人たちでも覚悟を決めて話しかけたかもしれません。全員が初対面の状態で対面すればまた違ったかもしれません。対面機会が少ないのであれば、事前の人間関係構築に出遅れてしまう人が少なくなるように工夫する必要がありそうです。
繰り返し会ったとき
オンラインでも、単発のイベントではなく、少人数の演習授業などで繰り返し会った人とは仲良くなりやすいようです。教員が一方的に話していて学生はずっとビデオオフみたいな授業ではそうはいかないので、少人数の授業を担当する場合は、人間関係を築く貴重な機会だと思って授業の運営を工夫する必要がありそうです。対面で会える機会はまだしばらく限られそうなので、同じメンバーで繰り返し会うようなオンラインイベントを設計するのも有効でしょう。
何かに一緒に取り組んだとき
オンライン・対面のどちらでも、ただ会って話すだけではなくて、何かに一緒に取り組むことを提言するレポートが多くありました。何かに一緒に取り組むことが繰り返し会うことに自然につながりますし、話しかけるのが苦手な人でもある程度参加しやすくなるところもありそうです。
提言ピックアップ+α
最後はみなさんの具体的な提言をまとめて+αしたものを紹介します。
大学公式のオンライン(匿名)掲示板を提供する
大学公式のSNS新歓アカウントを作る
新入生の中には「春から○○大」などとハッシュタグをつけたり、検索したりして入学前から積極的につながろうとする人が少なからずいて、Zoom会を開催したりする人もいたようです。ここで出遅れてしまうと取り戻すのに少々苦戦します。また、積極的につながろうとするあまり、個人情報を出しすぎることが後々別の問題を生じさせる可能性も指摘されるところです。
大学アカウントで利用できる掲示板があれば、出遅れてしまっても過去にさかのぼってコミュニケーションの様子を確認することができますし、個人情報の心配も少なくなります。大学公式のSNS新歓アカウントがあれば、出遅れてしまっても他の新入生をすぐに見つけることができます。(個人情報の心配は残りそうです)
専用のマッチングアプリを開発しようというような提言もありましたけど、大学側にはそこまでできるリソースがないので、つよつよな学生エンジニアに期待したいです…。
近くに住む人どうしが近所で集まる機会を上級生主導で作る
授業以外に対面で会う機会を無制限に増やすことは望ましくありませんので、より効果的な使い方を考えることが必要です。近くに住む人どうしが屋外で集まるのは人との接触が最小限で済みます。近所の学生と早めに仲良くなっておくと、たまにはお互いの住まいで一緒にオンライン授業を受けたり課題に一緒に取り組んだりと、オンライン授業に伴う孤独を最低限の対面で軽減する効果も期待できます。
会ったときには、お互いの自己紹介動画を撮影しあうなど、近くに住む人以外との交流にも役立つようなものを準備する活動に一緒に取り組むのがよさそうです。また、その後オンラインでも繰り返し気軽に集まれるように Discord などを用意しておくとよさそうです。
新入生どうしが心理的に安心して会うことができるよう、上級生が主導して、大学の公式行事であるとアナウンスすることが必要でしょう。留学生は生きていくだけでも最初は大変なので、上級生が迎えに行ってあげたいですね。
オンラインで集まって一緒に授業の課題をするタイムを作る
オンライン授業では課題がたくさん出がちで辛いという声が多くなりました。新年度では多少は配慮されると思いますが、この傾向も続きそうです。1人きりで取り組んでいることがその辛さを倍増させていることでしょう。
Discord などに集まって一緒に課題をする曜日・時間などを決めておくことで「オンラインで繰り返し会う」&「何かに一緒に取り組む」ことができて、仲良くなりやすい状況ができそうです。課題以外にも、昼休みに一緒にご飯を食べるとかもよさそうですね。
2020年度は、授業ごとにチャンネルを作って情報交換する Slack があったそうですが、だんだん過疎っていってしまったそうです。課題タイムやランチタイムを通知してくれる bot を用意するなどして、授業以外にも気軽に集まる雰囲気を出すといいのかなあなどと思っています。
まとめ
・大学側で新入生 Discord を用意しませんか?
・対面の交流イベントは公園でしませんか?(宴会はしないでね)
ここまで読んでくださってありがとうございます。サポートいただけましたら意欲ある学生を支援するのに使わせていただきます。