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実録!大学懇親ゲームの実態+改善案

大学の新入生向けオリエンテーション行事で学生同士の親交作りを目的として実際に行われた懇親ゲームについて記録・分析し、もっとこうしたほうがよさそうという改善案を考えます。

ちなみに、これを書いている私は大学教員で新入生行事の担当を何回かやっていたりもするのですが、行事の中身や当日の進行はほとんど学生スタッフの自主性に任せています。(心の中ではもっと相談に来てほしいと思っています)

目標設定

そもそも良い懇親ゲームとはどんなものでしょうか?それを考えるためにはまず、適切な目標を設定する必要があるように思います。たとえばこんな感じでしょうか:

目標1:同じクラスになった人との親交を深める
目標2:今後、教室や食堂などで話しかけやすい人を発見する
目標3:そのほか学内に「なんとなく知ってる人」を増やす

このように、一口に「懇親」と言ってもグラデーションがあるはずです。これらの目標はオリエンテーション全体で達成するもので1つのゲームで一気に達成できるものではありません。「このゲームではこの目標」と各個撃破していく方針で考えるのが基本となるでしょう。

詳細は省きますが、オリエンテーション行事の別のパートでクラス単位で行う活動がありますので、懇親ゲームでは目標2と目標3に狙いを定めます。

ターゲット

次に、懇親ゲームは誰にためにやるのか?をはっきりさせましょう。もちろん、懇親がやや苦手な人たちのためです(得意な人たちはほっといても懇親します)。「懇親したいけどちょっと怖い」と思いそうな人たちです。そういう人たちが求めているのはあまり怖くないゲームです。普通に話しかけてみるよりも怖いやつは求めていません。きっと。

以上を踏まえて実際のゲームを見ていきましょう。140人くらいの学生が体育館でワーワーします。

100分の1ゲーム

1. チームに別れる(1チーム10人程度のクラスとは異なるチームでした)
2. 各チームが(自分たちを除いた)新入生全体でピッタリ1人が当てはまりそうな質問を考える
3. 考えた質問を順番に発表して、当てはまった人は起立する
4. 人数が1人に近いほど高得点(0人はもちろん0点)

まず、普段のクラスとは違うチーム分けにしたのは良かったと思います。この後のゲームもこのチーム分けを使いました。1日で全員と深く知り合うのは無理で、まずはたまたま同じチームになった人つながりで目標2を達成していく狙いです。

そして「ピッタリ1人が当てはまる質問」を考える過程で出てくる質問案について、自分たちが当てはまるかどうかを話すことになるので、共通点があって話しかけやすい相手が見つかる可能性もありそうです。

改善すべき点としては「(質問によっては)起立するのが恥ずかしい」ということが挙げられます。実際に、1人だけ起立したときにマイクを向けられた学生が「恥ずかしいです」とコメントする場面がありました。

改善案1:質問のテンプレートを用意する。例「○○に行ったことがある」「○○を食べたことがある」など。その場にふさわしくない質問が出にくくなることに加え、短いシンキングタイムでも効率よく自己紹介を促進できそうです。各チームに別のテンプレートを渡すことでバリエーションも確保できます。完全自由よりも少しは型が決まっていた方が時間が短いときやグループで協調するときにはうまくいきやすいです。

改善案2:「当てはまっても立ちたくなかったら立たなくていい」とあらかじめ宣言しておく。これだけでも、答えたくない質問を考えるのはやめようという雰囲気になるはずです。この場合には、立った人がいたチームにも得点が入るなど、立つメリットがあるルールに変更することも必要でしょう。オプトイン・オプトアウトを考えるのは消極性デザインの1セオリーです。

仲間探しゲーム

1. お題と選択肢が発表される。例:「好きなテレビ番組のジャンル(ドラマ・アニメ・音楽番組…)」
2. わらわら一斉に移動して同じ選択肢の人どうしで集まる
3. 一番選んだ人が少なかった選択肢の人に得点(所属チームに点が入る)

趣味が似ている人どうしがお互いに発見できそうなゲームです。趣味が共通、は話しかけやすさの王道ですが、大勢で集まるだけなので、目標2を達成したいけど目標3くらいしか達成できていない惜しい状態でした。また、ゲームなのに得点のためにがんばれる要素がなくて「??」でした。

改善案:私なら「同じ選択肢の人を見つけて、ペアになってダッシュでゴールに来てください。各選択肢について先着5ペアまで得点が入ります。その選択肢を選んだ人が少ないほど高得点になります。」というゲームにします。早く見つけるためにがんばれる要素を用意しつつ、大勢で集まるのではなくペアになることで印象に残りやすくして目標2を達成していく案です。デザインの観点でも「少ない方がいい」ことは多いです。

おまけ:得点の集計がばたつきそうなので、色違いのシールか何かを用意しておくとよさそうです。

伝言ジェスチャーゲーム

伝言ゲームとジェスチャーゲームを組み合わせたゲームです。
1. チームのメンバーが二列に並ぶ
2. 先頭の二人にジェスチャーのお題を見せる
3. 二人でジェスチャーをして次の二人にお題を伝える(次の人以外はジェスチャーを見ないように後ろを向いておく)
4. 最後の人がお題が何だったかを予想する

ジェスチャーゲームは普通に話しかけるより怖いので懇親ゲームとしてはハイリスク・ローリターンですが、伝言ジェスチャーゲームはかなりマシです。
・みんなが同じジェスチャーをする、二人でする(恥ずかしさ軽減)
・伝わらなかったときに誰のせいかわかりにくい(失敗感軽減)
この辺りの考え方・工夫は汎用性が高そうです。

全チームで一斉にやれば、恥ずかしいジェスチャーでも見ている人は二人だけなので良かったのですが、隣のチームのジェスチャーが見えてしまうとダメという事情があって体育館の4角で各1チームずつゲームをし、他のチームはそれを観客として見守るというデザインでした。結果、ギャラリーがかなり多くなってしまったのは厳しいなと感じました。惜しい。

改善案:近くに他のチームがいてもお題が違えば同時進行できるので、ギャラリーが少なくなって良いように思いました。やっぱりジェスチャーゲームはテレビでアイドルがきゃっきゃとやるのを観るものみたいな気がして自分でやるのは気は進みませんが…

多種目リレー

風船を二人が顔で挟んで走る、風船ドリブル、3人4脚、ぐるぐるバットしてからダッシュ、縄跳びラン、借り物などなど多種目のリレーです。

風船を顔で挟む、3人4脚などは接触があるのでなんだかんだ言って懇親効果がありそうです。チームの中で分担できるのでそういうのが苦手な人はやらなくていいのも(狙ったのかどうかはわかりませんが)配慮が行き届いているように思いました。

伝言ジェスチャーゲーム~リレーの流れでチームの協力要素が多いので、目標2が達成できそうです。

改善案:あまり思いつかないです。種目を選択できるようにして、接触種目を選ぶとちょっと有利になるようなゲームバランス設計をがんばるといいかもしれないと思いましたが、費用対効果はよくなさそうです。

良い懇親ゲームを目指しましょう

懇親ゲームは短時間で効率よく安心して懇親するのが目的で、そのためにできる工夫がたくさんあります。

・理想的な振る舞いに導く行動のテンプレートを提供する
・大人数は覚えられないので少人数になる部分を作る
・やりたくない部分を回避できるようにしておく

消極的なままでも無理なく生きていけるように配慮してものごとをデザインする「消極性デザイン」にまつわる記事をまとめています。

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