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オーケストラか独奏か

”俺はオーケストラをやっているけど、長さんは独奏だな”。この言葉がたまに頭をかすめる。
簡単に言えば、シェフが大人数の指揮を執って料理を作る事と一人で料理を作る事の比喩である。

10年程遡って。ディヴィーノをオープンして2年くらい経った頃だっただろうか。かの有名シェフが私に言った言葉。
どんな意味で仰ったのか、どういった経緯だったかなどのその前後の話は忘れてしまったが。当時開業から2年くらいの頃でほぼ一人で厨房を切り盛りしていたので当時は”まぁそうだな”くらいに思っていたのが、お店を続け、年齢を重ねるほどにその言葉が頭をかすめる様になった。

周りを見るとワンオペレーションのお店も多いし、ご夫婦で営業しているお店も。かく言う私自身もコロナ禍を挟んだ一昨年あたりからはまた一人で厨房を切り盛りしていたのだった。

新しくお店を開ける際にも無理なく一人で責任のとれる範囲内での営業を考えてはいたのだが、研修などで他店へ出向くことが増えたことによって少し考えが変わりつつある。
一人黙々と作りあげる料理も悪くはない(今までこれを正義と思っていた)が、皆で作りあげる料理もいいもんだなと感じるようになった。サービスとその空間もしかり。そこには指揮者の腕前あってこそではあるのだが。

”皆で分かち合う喜び”と言ったらよいのだろうか、自分もオーケストラとまでとは言わずともそんな姿にやや憧れるのであった。このご時世、飲食店の雇用については(従業員の確保、賃金の上昇など)かなり難しい事ではあるのは重々承知ではある。想うのは自由。

前出の有名シェフは独奏に向けてご準備をされているとのこと。年始よりお一人でお店をオープンされるらしい。全てをやり尽くした上で集大成に入られるのであろう。
私といえば只今(今更ながら)、大慌てで物件探しといろんな可能性を現在模索継続中。一緒に働いてくれる人が誰も見つからなければ仕方はないが、そのうち小さな合奏団くらいのチャレンジはしてみたいと思う。

これからが私の全盛期だと信じて。






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