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ネガティヴ状況to絶対真理

知り合いが陰謀論者になってしまった。
大病し、病院通いの毎日の中で、読書くらいしかすることがなくなったようだ。あとは動画漁りだそうで。
彼が言うには「本当のことにたどり着いた。世界はとんでもないことになってるから気をつけて。」とのこと。
ミスター都市伝説みたいだなあと思う。
「ワクチンてなんか変だよね。おかしいよ。ネットだって全部監視されてるんだよ。」だそうだ。

たしかに、病気されたということで、生命力みたいなものが減退する日々だと推察する。先の見えない状況こそ、無理やりこじつける陰謀論に傾倒するのはよくわかる。

しかし、この手の話は、たとえどんなに「正しくても」どうすることはできないと考えている。
理由は以下のとおり。
1)「裏で誰かが糸を引いていることを誰も気づいていない。」はずなのに、誰も気づいてないことを語るあなたはどうして知ってるのか?「書店においてある程度の本」や「YouTubeで試聴した」程度の軽い下調べごときで。

2)「裏で誰かが糸を引いている。」くらい暗部の話ことなのに、本やYouTubeでバレバレなら、もう「表立って」いないだろうか?もう「裏」の話ではない。

3)「真実を知って行動すべきだ。」では、それを信じて行動した結果、今までより何か良いことはあったのか?それを教えてほしい。目覚ましい変化があれば、ソースは1だが説得力はあるだろう。

4)「科学的根拠や歴史文書に記載があるんだ。」それを真理だと判断している根拠はなにか?
このようなことから、陰謀論を追いかけることはおそらく意味がない。

5)「今居る世界はホンモノではない。」ことを立証することはできるか?夢の中にいるときに、それを夢と認識してコントロールすることはできるだろうか?できると言うのなら、ウソの現実からホンモノの世界に自分を引き上げたらどうか?

これら5つを崩すことはできるだろうか?
ちなみこの5つは、一般男性が15分くらいで適当に考えたものだ。この程度の、ゆるい条件すら中々クリアできないのが陰謀論だ。

次に、刊行されている書籍から、陰謀論者になりやすいとはどういうことか考えてみたい。

「賢い人ほど騙される」を読んだ。

陰謀論的思考を、心理学の視点で解明している。一概に陰謀論が悪くて、洗脳された読者を救いたい、という感じではない。

都市伝説・陰謀論は、「誰か悪い人がいて、私たちは操られている」というのが基本構造だ。
神を宇宙人にしてみたり、世界を牛耳る大富豪を登場させてみたり、秘密結社を出したり、あの手この手で「だれかの陰謀」を核に物語が始まる。

例えば、「海外ではマーガリンが禁止されているんだから食べちゃダメだよ」という意味付けがされる。いわゆる健康・美容系の本を見ると必ずといっていいほど記載がある。
丁寧な暮らし、とか、オーガニックな生活なんて文脈でも、よくトランス脂肪酸が引き合いに出される。

本書では、根拠という行為、判断という行為を区別する。「根拠」は単体として存在し、それをどう「判断」するかは私たちの問題だということだ。

以下の例を見てほしい。

「マーガリンはトランス脂肪酸という成分がある」
「トランス脂肪酸には発がん性があるとの研究」
「原価が安い。企業が儲かるため使われる」
「マーガリンは海外では違法である」

こういう事実や根拠が無秩序に羅列されていると、脳が因果関係として組み直し、秩序立てて整理しようとする。

この論法がうまく配列されれば、一発で「マーガリン、怖い」という気持ちを引き出すことができる。

いやたしかに、本当にある一定の恐怖心は生まれてくる。しかし、マーガリンを食べ続けた日本人の中で、がんが発症した人はどれくらいいるか?その人達は本当にマーガリンだけが原因で死んだのか?
そう、結局わからないのだ。

つまり、ホンモノでもウソでも、暗躍組織がいようといなくとも、私たちは「とりあえず」生きているのだ。
そして、これからも進んでいくだけなのだ。

まず、この人間特有の悪いクセを自覚したい。


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