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【さまざまなお客さん】

列車には様々なお客さんが乗ってきます。とはいえ、今回は人間ではなく、僕が乗務していたローカル路線ならではの、特殊なお客さん?のお話です。

自然豊かなローカル線。そんなところの列車では、虫も列車に乗ってきます。
彼らにも運賃を請求したいところですが、まあそんなことはお構いなしですね。
まあ、僕はそこまで虫が苦手ではないので、気にすることはないのですが、やはりお客さんからすると、あまり気分の良くないもの。
車掌室にいたら、青ざめた顔で「車掌さん…」と来るので何事か!と思ったら、そこにカマキリが…
なんてこともありました。
とりあえず乗務員室につまんで持ち帰り、次の停車駅でホームに強制下車してもらいました。

まあそれぐらいならいいでしょう。一番困ったのは、「ハチ」
危害を加える恐れがありますので、これこそ早急に対応せねばなりません。
僕の乗務している列車にハチが乗ってきたことは2回ありました。
(あくまで僕が知った範囲です。長い編成で先頭の方に乗られたら、それはしらん)

一度はまだ、一人前になって直ぐのころでした。
駅間距離が短いところで、集札のために先頭から最後尾まで乗務員室間を移動しなければいけないという小忙しいところでよりにもよってのタイミングでヤツは来てくれました。
速足で歩く僕に声を掛けるお客さん。普通なら少々お待ちください!と後回しにするところなのですが、「そこにハチが!」と言われたら一瞬足が止まります。
うわ!どうしよう…と思いましたが、ラッキーなことに、その時、添乗に来ていた助役さんがその場にいました。ちらっと見たら「わしに任せておけ!退治しておくわ!」とありがたい言葉。
いつもは助役の添乗など、有難迷惑でしかなかったものの、この時ばかりは助かった!ありがとうございます~~!とそそくさと乗務員室に向かったのだった。

そしてもう一度。
とある駅で特急の通過待ちで停車中、お客さんから呼ばれて車内へ入ると、ハチが…
ドアが近ければさりげなく(?)ご退場いただくことも可能ではあるが、残念ながらドア間のど真ん中。
発車まであまり時間がない。
しょうがない、退治してみるか…と手持ちの使えそうな武器を考えると、
車内発券機⇒壊れる!問題外
運転時刻抜粋カード⇒ちょっと攻撃力弱そう…
忍び鍵⇒当たればダメージを与えられるけれど、そんな技術は持っていない
帽子⇒ちょうちょやトンボを捕まえるならいいんだけどな…
ということで、これだ!と取り出したのは業務用の長財布。
運がいいことに、それなりに小銭がたんまり入っているので、重くて攻撃力も高そうだ。
ちょっとお客さんには離れてもらい、見守られながら窓に止まっているハチをめがけて慎重に一撃。
バン!車内に響き渡る音。見事命中し力なく落ちるハチ。今思えば、ガラス窓が割れなくて本当に良かったと思う。
おお~!と小さなどよめきと拍手に軽く一礼し、サクッとハンカチで回収して乗務員室へと戻っていった。

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