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引退車両の騒乱

引退車両が発表されると、鉄道マニアの方たちがお別れ乗車にどんどんやってきますね。
最近はSNSが発達していることもあり、そういったマニアの暴走が注目されるようになったと思いますが、同じようなことは昔からそれなりに発生していたのかもしれないと思います。
僕の駅員時代、とある車両(仮にW系とします)が引退するときのちょっとお騒がせなお話をしてみましょう。

画一的な車両たちのなかで、ひときわ存在感を放っていたW系。別会社から乗り入れてくる車両ですが、とてもカッコいいデザインで、鉄道マニアだけならず、子どもなどからも人気な車両だったように思います。
しかしその反面、特別仕様が仇となって居住性が劣っていたり、特別な旅客案内も必要だったりと、いろいろとわが社からしたら面倒な存在だったのも事実でした。
結局新型車両に統一することもあり、僕の勤務していた駅の路線からは引退することが決定。ラストの日が近づくにつれて、1日数本のその列車を目指してホームに見に来る人が多くなりました。

そして迎えたその日は、丁度僕は泊まり勤務の明け番。多客対応もあり、ホームの安全確保要員として残業となりました。いつもは明けはサッサと帰りたい派ではありましたが、この時は是非見送りたかったから嬉しかったなあ。
最終日の列車は、いつもは高速走行で汚れが目立っていた運転席上の辺りが綺麗に磨かれており、最後の有終の美を飾らせてやろうという保有会社の想いが伝わり、ちょっと良いなあ…と思いました。

そんな感動の日から数日後、僕が出勤する日に事件は起きたのです。
支度を終えてホームに上がると、なにやら騒がしい。ちょうど来た列車が、なんかいつもより止まり方がぎこちない気がする…。丁度アケ番の人に聞いてみたところ、とんでもないことが判明したのだ。
なんとこの日、引退した車両専用の停止位置目標を撤去したそうだが、その時に誤って全ての列車の停止位置目標が撤去されてしまったのだとか!
始発列車が据え付けされるとき、やけにそろりそろりと停車するものだから、どうした?と思ったら、そんな事態になっていたのだそうだ。

え?うそやろ?そんなことってあるの???
関連会社のミスだろうけど、作業した人もおかしいって思わないのかな?
まだ勤務開始まで少し時間があったので、思わず野次馬に先頭部へ。
うん。綺麗に全部なくなっとる(笑)笑いごとやないけど…
ではどうやって列車が止まっているかというと、駅の助役さんが出て来て、手旗信号で停車させていたのだ。
この駅はホームの安全柵があるため、少し停止位置がズレるといけない。
結局その影響で半日ぐらいはダイヤに乱れが出ていたかな?
これはまだまだ第一線で走れるのに引退させられた、W系の呪いじゃなかろうか?

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