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文具店(筆記用具のショートショートなど(仮))

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文房具に関するショートショートなどなど、をまとめています。名前は仮のものです。いずれ変えるかも。
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固定された記事

ペンポイント

 私は海辺を歩いている。砂の感触を足裏に感じながら、あるものを探している。  押し寄せる…

たけなが
10か月前
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シーノート

 真っ白なノート。これに文字を書くと、地球の地域ごとの潮の満ち引きに合わせて、ノートの中…

たけなが
10か月前
1

EF

 僕はいつでも細く細く生きてきた。なぜって、それが最善策で、僕にとって当たり前だったから…

たけなが
6か月前
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 人の血を使って筆記するボールペンがあるらしく、書けば書くほど体から血が抜けていくのだという。
 血が抜けていくあいだ痛みは無いため、その性質を利用して、自らの血で絵を描いた人間もいるらしい。
 その作品は未完のまま、現在はどこにあるのか、そもそも存在するのかすら怪しい。

たけなが
6か月前
2

青い炎

「青い炎」という名前のインクがある。見た目は名前の通り青いのだけれど、紙に文字を綴ると、…

たけなが
6か月前
3

バタフライレター

 蝶のように、翅を持った手紙がある。  便箋と封筒がセットになっていて、宛先と内容が書き…

たけなが
6か月前
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鮭鉛筆

 鉛筆鮭という名前の鮭がいる。元々、住処にしている岩の成分を少しずつかじりながら栄養にしているため、岩に含まれる炭素の量によって、鉛筆にしたときの色の濃さが変わる。  また、その地域ごとの様々な要因によっても変化するため、様々な産地の鉛筆鮭を使った鉛筆がある。  私はもともと、芯の柔らかい鉛筆が好きなので、炭素の含有量が多い鮭をよく使う。  一般的な鮭より小ぶりで、手に馴染むサイズ。  昔、鮭鉛筆を一から作ったときは、なんとも言えない気持ちになった。  なぜかといえば、鉛筆鮭

渦潮ガラスペン

 海で起こる渦潮の渦巻きを使って作られたガラスペンがこれ。特に、長時間文字を書き続けたい…

たけなが
5か月前
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雨色パレット

 建物の外ではバタバタと雨が降っている。ついさっきまでは晴れていたのに、と思いながら、店…

たけなが
5か月前
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修正テープ

 世界中にはいたるところに白があります。  建物の外壁、チョーク、消しゴム、新しいノート…

たけなが
5か月前
1

セロファント

 かつて地殻変動によって大地が大きく裂け、生物の生息範囲が大きく制限される事があった。 …

たけなが
5か月前
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万年筆

 海辺の街で始めた文具店。あえてあまり人目に付かないような場所にしたはずなのに、お客さん…

たけなが
5か月前
4

カカオニブ(ショートショート)

 長年愛用していた万年筆のペン先、つまりはニブ部分が劣化で壊れてしまった。  インターネ…

たけなが
2か月前
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桜象牙の万年筆(ショートショート)

「桜象牙、ですか?」  とある万年筆専門店で、私はそれを見つけた。 「はい、桜象牙の万年筆です。かつて居たとされる、小型の象の象牙から作られたもの、のこれは現代バージョンといったところでしょうか」  とても綺麗で、思わず見とれてしまった。  それは濃淡二種類のピンクのマーブル模様の中に、澄んだ水面を思わせる透明な斑点が入った万年筆。 「きれいですね」 「はい、この万年筆は、桜の咲く水辺でのみ水分補給をするという、サクラゾウという象の牙をそのまま再現しているそうです」 「こんな