「アルファベット」とは
今年はハリケーンが多く発生したため、予め用意していた「アルファベット」順の名前が涸渇してしまったそうです。「アルファベット」の後はギリシャ文字を使うことが決められており、「アルファ」「ベータ」という名前のハリケーンが続けて誕生したとのこと。
英語などで使われるAからZまでの26文字は確かに「アルファベット」ですが、正確に言うとギリシャ文字も「アルファベット」です。今回は、その「アルファベット」の定義について。
アルファベットは音素文字の一類型
世界中に数多ある文字体系は大きく表音文字と表語文字とに分けられ、表音文字は音素文字と音節文字とに分けられます。
音素文字は、表記の特徴によって更に3つに分類され、アルファベット、アブギダ、アブジャドに分類されます。
このようにアルファベットとは、表音文字のうち、音素文字の一類型を指す言葉なのです。
音素文字の3類型
音素文字とは、音を表す表音文字のうち、一つひとつが母音または子音を表す文字のことです。これに対して、一つひとつが母音を中心とした音のまとまりを示す文字を音節文字といい、仮名文字がこれに該当します。
音素文字は更に、アルファベット、アブギダ、アブジャドに分けられます。
アルファベット
一つひとつの文字が、原則として一つの母音または子音を表す文字体系です。
私たちが普段「アルファベット」と呼んでいる、A、B、C、D……などの文字は、正確にはラテン文字と言います。主にA、E、I、O、Uが母音を表し、その他の文字が子音を表しています。
ラテン文字以外には、ギリシャ文字とキリル文字などがアルファベットに該当します。
アブギダ
子音字を中心に、母音を補助的な記号で表す文字体系です。
ヒンディー語などで使われるデーバナーガリーが典型です。
上の画像は、デーバナーガリーで「ヒンディー」と書いたものです。左半分が[ヒ]、上の点が[ン]、右半分が[ディー]です。
左半分を例に取ると、हが[h]の音を示し、その左側にあるिが[i]の音を表す母音記号です。
アブジャド
子音字のみで表記する文字体系です。母音を表す補助的な記号もありますが、アブギダと違って必須ではありません。
アブジャドの例として、アラビア文字が該当します。
上の画像は、アラビア文字で「クルアーン」と書かれています。右から見ていくと、[q]、[r]、[aː]、[n]の音を表す文字しかないことがわかります。長母音の[aː]はあるものの、その他の母音は音韻論に沿って読み手が補う必要があります。
なお、アラビア文字をはじめ、アブジャドに分類される文字体系の多くは、子音字が一部の母音の表記に転用されることがあるため、アブジャドとして純粋なものではないといわれています。
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