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池袋北口──徘徊する女衒と新華僑の街

筆者が初めて池袋を訪れたのは、就職活動で名古屋から上京したときのことであった。それ以来ずっと、何となく辺り一面に灰色の澱んだ空気が立ちこめる、陰鬱な街という印象を抱いていた。

池袋駅に降り立てば、誰でもその陰鬱さに気づくはずだ。改札を一歩出れば、目に付くのはたむろする浮浪者や周辺の俗めいた街並み。毎度不動産業界が吹聴する「住みたい街」のイメージとはほど遠い。

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池袋で健全な施設といえばせいぜい淳久堂書店か東京芸術劇場くらい、あとはディスカウントストアや飲食店の他は、遊技場か娼館か連れ込み宿しかない。皇居の北西に位置してはいるものの、山の手副都心というよりは、垢抜けない埼玉文化圏の一角というべきか。事実、明治の初期に池袋の一部は浦和県に属していたし、また池袋駅から埼玉方面に伸びる鉄道路線でやってくる埼玉県民も多い。

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池袋駅東口

その池袋でもとりわけ治安が悪いのが、「北口」と呼ばれる駅北西側一帯に広がる歓楽街。池袋西口公園の周辺に淫靡な空間が広がっており、薬物汚染や暴力団同士の抗争もあった土地である。

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