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『三国志演義』の「演義」とは

日本人に人気の「三国志」は、しばしば2つの書物が混同されて受容されています。

書物としての『三国志』は、西晋の陳寿(ちん・じゅ。233年―297年頃)の著作です。歴代中国王朝では、前王朝に関する歴史書の編纂が慣例となっていて、『三国志』もその事業として編まれました。いわゆる正史と呼ばれるものです。

もう一つの書物は『三国志演義』(原題は『三国志通俗演義』)で、日本で一般に「三国志」と言われているものはこちらを指します。明の羅貫中(ら・かんちゅう。生歿年不詳)の作とされ、庶民向けの歴史話の講釈を集大成させたものです。文体も正史の『三国志』とは違い、特に会話文では話し言葉の要素が含まれ、漢文訓読で読み下すと無理が生ずることがあります。

その『三国志演義』ですが、「演義」の「演」には引き伸ばす、押し広げるという意味があります。論理学で、一般的な前提から個別的な結論を得ることを演繹(エンエキ)と言いますが、この「演」も同じです。つまり、「演義」とは、事実を引き伸ばして(おもしろく)書いたもの、という意味になります。

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