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言葉の覚え書き

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2021年4月の記事一覧

「首をもたげる」?

勢力を強め始めるという意味では、通常「頭をもたげる」と言います。「もた(擡)げる」は、持ち上げる、起こすという意味。「頭をもたげる」を漢語で表すと「擡頭(タイトウ)」となります。 なお、「鎌首をもたげる」という表現はあります。「鎌首」とは蛇が威嚇するときの首の形を鎌にたとえたもので、よくないことの起こる兆しがあるといった意味を表します。

電話機のボタン「⚹」「#」は何と呼ぶ?

俗に、「⚹」は「米印」、「#」は「シャープ」と呼ばれますが、正しい言い方ではありません。 「⚹」(Unicode:U+26B9)は「スター」です。「米印」は「※」(U+203B)を指します。また、「アステリスク」(「*」、U+002A)とは違うものです。 「#」(U+0023)は「ナンバー」。アメリカでは「パウンド」とも。一般的な文書では「番号記号」ともいいます。「シャープ」(「♯」、U+266F)は音楽の記号です。

「ゴールデン・ウィーク」

「ゴールデン・ウィーク」は、もともと映画の観客動員を狙って編み出された宣伝用語でした。 NHKは、仕事で休めない人からの抗議が殺到したなどの理由からこの呼称を避け、「大型連休」などに言い換えているとのことです。 現在では宣伝用語という意識が薄れるほどに定着していますが、個人的には俗語の範疇との考えから、私も「大型連休」あるいは単に「連休」などの語を使うようにしています。

「怒り心頭に……」

2012年度の「国語に関する世論調査」によれば、「怒り心頭に達する」を使うと回答した人の割合は67.1パーセント、「怒り心頭に発する」は23.6パーセントでした。 正解は「怒り心頭に発する」。「心頭」とは心の中。怒りが心の中で生ずるという意味です。怒りは、最終的に心の中に行き着くようなものではなく、心の中でしか生まれないものなので、「達する」ではなく「発する」が適切です。 「心頭」を使った言い回しとしては、他に「心頭を滅却すれば火もまた涼し」があります。

「まんじりともせず」

2013年度の「国語に関する世論調査」によると、「まんじりともせず」の意味として、「じっと動かないで」と答えた人の割合が51.5パーセント、「眠らないで」が28.7パーセントでした。 正解は「眠らないで」。「まんじり」は少し眠る、まどろむの意で、「まんじりともせず一夜を明かす」のように使います。

読点としてのコンマ

縦書きでは、読点は専ら「、」(Unicode:U+3001)を使いますが、横書きではこれに加えてコンマ「,」(U+FF0C)が用いられる場合もあります。 コンマを用いるのは1951年の「公用文作成の要領」で定められたもので、英語の影響によるものです。句点もピリオドにしようとする動きもあったようですが、見やすさの観点から「。」(U+3002)に落ち着いたそうです。 現在は公用文でも、「、」に変えることを文化庁が検討しています。

「取り付くひまがない」?

2012年度の「国語に関する世論調査」では、「取り付くしまがない」を使う人が47.8パーセント、「取り付くひまがない」を使う人が41.6パーセントという結果でした。 答えは、「ひま(暇)」ではなく、「しま(島)」。 島は航海のときに頼りとなるものであることから、頼るところがない、また相手の態度がつっけんどんで頼れないことを「取り付く島がない」といいます。

「のべつくまなく」?

正しくは「のべつまく(幕)なく」。 途中の「ま」と「く」を入れ替えてしまい、さらに「くまなく探す」の「くまなく」に引きずられて、満遍なくの意味だと思っている人がいるようです。 「のべつ」とは、絶え間なく、ひっきりなしにの意。ぶっ続けで幕を下ろさずに芝居を演じ続けることから、休みなく続くことを「のべつ幕なし」といいます。

「押しも押されぬ」?

「押しも押されぬ」ではなく、「押しも押されもせぬ」。押しも押されもしないということで、実力があって立派であるという意味です。 「押しも押されぬ」は、「押しも押されもせぬ」と「押すに押されぬ」とを混同した表現だといわれています。「押すに押されぬ」とは、押しても押せないということで、れっきとした事実であるという意味です。

約物の使い方──アステリスク「*」

アステリスクは、半角で上付きの「*」(Unicode:U+002A)を使います。 一般的な文書では、脚註を表すのに用います。複数ある場合は、「**」のように重ねたり、「*2」のように数字を併用したりすることで区別します。 また、本マガジンでも用いていますが、言語学の分野では、非文と呼ばれる、文法的に成り立たない表現を示す用法もあります。「木を倒す(*木を倒れる)」のように、先頭に付けて記述します。 プッシュ式電話機のボタンにあるスターマーク「⚹」(U+26B9)とは異な

「混じる」と「交じる」

「混じる」は、他のものが一緒になり、一つにまとまること。 彼女にはフランス人の血が混じっている。 「交じる」は、異種のものが分け入りつつも、統一されていない状態をいいます。 子供に交じって遊ぶ

作品名の書き方、こんなときどうする?──作品名の中に既に括弧類がある

著作物名の表記法は、過去に本マガジンでお伝えしました。 では、著作物名の中に既に括弧類が使われている場合は、どうすればいいのでしょうか。 この場合、元の状態を保持したまま、上のルールに沿って記述します。 例えば、 超解読! はじめてのカント『純粋理性批判』 という書籍ならば、 『超解読! はじめてのカント『純粋理性批判』』 となります。これがもし雑誌の記事名ならば、 「超解読! はじめてのカント『純粋理性批判』」 となります。 括弧の入れ子のルールに準ずる

約物の使い方──亀甲括弧「〔〕」

亀甲括弧「〔〕」(Unicode:U+3014、U+3015)は、引用文の中で引用者が註釈を入れるときに用います。 これは、〔中略〕引用元の文献に敬意を払うというモラルの問題でもあります。 特に、原文に既に括弧があり、引用者の註釈と区別をする必要があるときに用います。 〔ウェルズ・ファーゴ〕が想定する最悪シナリオで、3月のGDPが半減すれば9000億ドルの付加価値(所得)が失われる。(亀甲括弧内筆者、丸括弧内原著) 次の記事も参考にしてください。

中国語・朝鮮語人名の表記

中国語及び朝鮮語の人名は、漢字表記・日本語読みを原則とします。日本語の口語文では、漢字は新字体で表記します。 漢字表記が不明な場合は、片仮名表記・原語読みを採ります。上記の2つの例で示すと、次のようになります。 姓・諱・字歴史的に、中国の人名には、血族を表す姓、名にあたる諱(いみな)、そして字(あざな)の三つの要素があります。諱は本名であるために儀礼上これで直接呼ぶことは避けられ、代わりに字で呼ぶ習慣がありました。 日本では、姓と諱とを組み合わせるのが通例です。 但し