商店街のテナントミックス

「商店街活性化」をはじめ、定義されないまま、各人各様、時々によって異なる意味で使われることさえ珍しく無い専門用語。
その存在はそのまま商店街活性化にとって「躓きの石」となっています。

その典型的な例が「テナントミックス」です。
実は本家筋であるショッピングセンター業界でもこの言葉はきちんと定義しないまま、テナントリーシングと同義のように使われていたりします。
向こうはそれでも特に問題はありません。ショッピングセンターを立地と想定しているチェーン企業が数多く存在しているので、テナントミックス=見繕いリーシング(出店交渉)で間に合います。
しかし、商店街活性化でこの用語を使う場合はきちんともともとの意味を正しく理解した上で使わないと、とんでもない結果をもたらしかねません。
まずは定義です。

商店街関係者でこの用語を定義無しで安易に使う人は、肩書きはなんであれ、活性化実現に必要な専門的な知識を持っていませんのでご注意あれ。

テナントミックスとは、中活法・基本方針に言う「業種揃え・店揃えの最適化」のことです。「最適化」の基準は何かと言えば、当該商業施設(集積)のコンセプトです。コンセプト(広域商圏で分担する商業機能の簡潔な表現)を実現する爲に必要な売場の全体構成を計画するのがテナントミックス、それぞれの位置に特定の企業・売場を配置するのがテナントリーシング。

コンセプト無くしてテナントミックスは計画出来ません。
ショッピングモールがコンセプト無しでテナントリーシングをしているのは、先行モールの「模倣と差別化」でOKだからです。

商店街の場合、模倣できる商店街のテナントミックスは存在しませんから、コンセプトから自分たちで作らなければならない。自分たちで作るのは難しいので、我々が作って提案しているのが「コンビニエンスマート」ですね。

ちなみに国は、閣議決定『中心市街地の活性化に関する基本的な方針』に於いて、“中小小売業の競争力の根幹は業種揃え、店揃えの最適化である” と強調していますよ。
誰も(国の関係機関も含め)復唱しませんけどね。
この「業種揃え・店揃えの最適化」こそが「テナントミックス」であり、最適化を実現するには基準となる“コンセプト”を決定しなければならない。
そこまで閣議決定は言ってませんが、専門家にとっては当然、前提となることです。

ということで、商業集積としての再構築、「コンセプト主導の業種揃え・店揃えの最適化」という“文脈を外れたところで「商店街のテナントミックス」などを説く人は素人ですから、ご用心。テナントミックスサポーターとかいますからね。

ちなみに。
基本方針の「業種揃え・店揃えの最適化」が論じられているのは 『基本方針』 の第七章「経済活力の向上・・・」p13~
1.経済活力の向上のための事業及び措置の必要性
2.具体的事業及び措置の内容等
です。

商業者たるもの、しっかり読んで頭の中に収納、必要な折にはスラスラ出てくるようにしておきましょう。

一読されると、商店街活性化(「経済活力の向上」)が販売促進事業で達成出来るものか、商業集積としての再構築」を目指す取り組みなのか、理解出来ると思います。
関係各方面、どうして理解出来ず、専ら「不毛な販売促進事業」に精出されるのか、謎ですね。

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