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越前焼 おさごえ窯 『 祈り火 』

 国指特別史跡「一乗谷朝倉氏遺跡」(福井県)の上城戸を抜けてさらに奥へ進むと、山裾に越前焼陶芸家、ふじのまさ代氏の「おさごえ窯」があります。

 越前焼に限らず、私はもともと陶芸そのものにまったく興味・関心がありませんでした。

 そんな私が友人を介して初めてふじのまさ代氏の存在を知ったのは数年前のことです。

 氏の陶芸展(個展)を初めて見に行った時の感動は強烈でした。
 一つ一つの作品の中に「」を感じました。作者の「」を感じました。

 このことがきっかけで、いつの日か氏の作陶現場を撮影したいという気持ちが私の心の中に高まってきたのです。

 4年前になります。氏のご厚意で特別に許可をいただき、幸運にもその願いが実現しました。

 しかし、内心は期待よりも不安で一杯でした。
 それまで私はこのようなドキュメンタリースナップはまったく撮ったことがなかったのです。

 参考までにと、窯焚きの本格的な情景写真をインターネットで随分探してみましたが出会うことができませんでした。
 
 本当に先入観なし、「出たとこ勝負」で自分の貧弱な感性だけを頼りに、腹をくくって撮影に臨むことにしました。

 いよいよその日がきました。
 一乗谷の静かな山裾に佇む「おさごえ窯」に初めて足を踏み入れた瞬間、私は言いようのない感覚に陥りました。  

 これは生半可な気持ちでは取り組めない、私は入り口に戻り心から頭を垂れました。
 そこはまさしく聖地そのものでした。

 火入れから窯出しまでの10日間、灼熱の聖なる空間に身を置き、敬虔な気持ちで全身全霊を込めて撮影に没頭しました。

 人と炎と器が三位一体となった祈りの世界に、私は心を激しく揺さぶられました。

 ちなみに、ふじのまさ代氏の作陶テーマは「灯り・香り・祈り」です。
 私の撮影テーマの「祈り・いのち」と重なる部分が少なくありません。

 撮り下ろしの作品30点で、令和元年夏に1か月間、一乗谷のあさくらギャラリーで個展「祈り火」を開催させていただきました。
 全国からお出でいただいた観光客の皆さんにも見ていただきました。

 実は、その個展の展示作品を貼った元記事は今年4月に一度投稿させていただいています。
 
 今回はその元記事を大幅に見直し、新しく創り直しました。
 拙作ばかりの24点の画像で恐縮ですが、越前焼の「命が吹き込まれる過程」をご覧いただければうれしく思います。

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