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【お仕事回顧】海を舞台にした男女の大人の恋愛物語

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

幽霊船を舞台に、出会いと交流と別れを描いた物語のシナリオ制作


期間

2018年3月~2018年4月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ゲーム内で展開するストーリーのシナリオと、その他必要な資料の作成を行いました

資料

特になし

納品物

キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

感想

 ひとことプロットは
「墓標船メリーセレステ号に乗って海を彷徨う主人公が、自分の生霊と対峙して過去を乗り越えるお話。」でした

 決まっていた事項は「墓守」くらいでした
 季節柄もあり、舞台を海にしようと考えました。「墓守+海」というミスマッチ(墓標はそもそも大地にある)がギャップがあって、形にできたら面白くなりそうだなと思いました。ストレートな海賊の冒険ものは以前にやったことがあったので、せっかくなので舞台である海を別の切り口で物語化できればと考えました

 ストーリーの軸は「変形タイタニック」型。映画タイタニックは最初と最後に現在の時間軸が提示されるサンドイッチ回想ですが、本作は現在と過去を行き来しながら主人公が旅の中で何かしらの形で変化、成長する物語を目指しました

 設定したキャッチワードは「幽霊船」「海」「歌姫」でした。キャッチワードから発想する形で船に墓標を積んだ幽霊船や、幽霊達の魂を導く役割を担った未亡人風の美しい女性船長、などの設定を決めていきました。プロットを考える段階で主人公を成人の女性にすることを決めて「大人の恋愛物語」を目指すことにしました。ロマンチックでほの哀しいストーリーラインをどう作るかに苦慮しました

 大人の恋愛とはなんぞや、と考える中で思い至ったのが、現在進行系で始める恋愛よりも、酸いも甘いも経験した上で過去の恋愛を偲ぶ、回顧録のような形式でした。現在と過去を行き来して、過去と現在の対比、変わらない想いと変わっていく想いの対比、そして主人公の成長を描ければと思いました

 時代背景のイメージは海に多くの人々が漕ぎ出した「大航海時代」にしました。モチーフにした出来事は「メアリーセレスト号事件」です

 キャラ設定を考えている時に、せっかく幽霊船をテーマにするんだから、登場人物を全員死者にしてみよう、と思いついて、サブキャラクターも含めて全員死んでいる設定にしました。最初は死者と生者の交流、という形でストーリーを考えていましたが、登場人物が全員死者のほうが結果的に面白い設定になったと思います

 キャラクターのモチーフは特にいませんが、船乗りが海から聞こえてくる美しい歌声に引き込まれる……といったセイレーン伝説をイメージして、歌を生業にしていた主人公のイメージやエピソードを決めました。キャラクターの名前は少し文字数多めの語感のいい名前にしようと探していて(なんとなく名前が長いと大人の女性、という安直なイメージがありました。オードリー・ヘップバーンみたいな)、昔から語感が好きな言葉「エーデルワイス」をもじって命名しました。他の登場人物はフランスの有名な通りや宿泊業における給仕(ギャルソン)などから取りました。いずれのキャラクターも語感がとても気に入っています。

 あらすじ。
 主人公の女性は港町の歌姫でした。冒険家の男性と燃えるような恋愛をしますが、恋人は海へと消えてしまい、主人公も墓標を積んだ船を海へと漕ぎ出し、恋人の後を追って死を選びます
 主人公の魂は船に縛り付けられ、死後、主人公の女性は死者の魂を歌声で導くシャーマンのような役割を担い、かつて愛し合った恋人への想いを探しながら海を彷徨っています。200年後、とある冒険家と出会い船に乗せることで、主人公の物語が動き始めます

 書きたかった感情は「慕情」と「過去との決別」です。
 書きたかったシーンは「過去の素敵な思い出を振り返る成熟した大人同士の会話」です。いつか見た、場末のスナックでウイスキーを片手にバブルの頃を思い出すスナックのママと常連の客の会話を「大人だなぁ」と眺めたのを思い出しました

 主人公が多弁ではないため物語の視点となる狂言回しが必要でした。サブキャラクターとして別の幽霊キャラなどを配置してその役をやってもらいましたが、思った以上にキャラ同士の親和性が高く、テンポのよい会話が展開できたと思います

 各話に主人公が書いていた日記のページの内容を記載して、順番に並べると時系列順に主人公の生い立ちや想いがどう変遷していくかがわかる、という仕掛けを入れました。最後のページだけは物語の最後に追加されたページになっており、主人公の気持ちが最終的にどう変化したのか、止まった時間が動き出したことがわかるようになっています。個人的には頭を捻って形にしたお気に入りの演出でしたが、あまり気づいた人はいない仕掛けでした。もう少しひねりを入れられたら効果的になりそうだったので反省しています

 事件が少なく全体的なエピソードとしては地味な部類の物語になりましたが、目標だった「大人の雰囲気」が、セリフの端々から漂っていればと思います

印象に残っているシーン&セリフ

水平線に夕日が沈む時、主人公が恋人に指輪をもらうシーン。冒険の失敗で指輪の輪っか部分しか渡せない恋人だったが、沈む夕日が指輪の上に乗り、一瞬だけ、どんな宝石よりも美しく輝く

「ううん、これでいいわ……。」

「これでいい……? そんな安物の輪っかでいいって……。
 あ!! さては俺の腕を疑っているな?
 大丈夫だって。今度の情報は確実。絶対に間違いないんだ。
 海賊王ボーネットの部下の兄弟の同級生の友達から聞いた話でな……。」

「……ううん。ちがうの、これがいいの。」

「どういうことだよ。そんな質素な指輪、君には似合わないぜ。」

「……愛するあなた、あなたからもらった贈り物。私の大好きな街。
 今、この時間……この瞬間だけよ?」

「私の指に、永遠があるの……。」

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ではまた!

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