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【お仕事回顧】ライバルの関係性を描く騎士物語

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

騎士達の成長物語を軸にした王道ファンタジー。全6作のシリーズ物のうちの2作目


期間

2019年10月~2019年11月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ゲーム内で展開するストーリーのシナリオと、その他必要な資料の作成を行いました

資料

特になし

納品物

企画大枠、キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

ボリューム

60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

感想

 ひとことプロットは
「悲劇の剣術を学ぶ孤高の剣士が、大陸統一戦争の中で死闘と悲劇を乗り越えて心技体を備えた剣聖へと成長する物語」でした
 全6編のシリーズ物の2作目でした。シリーズ物としての道筋を固めたストーリーで、この物語の主人公を全6編のシリーズ全体の主人公にする予定でした
 ゲーム内にはアーサー王をモチーフにした歴史的な英雄がいたので、その人物を補佐する円卓の騎士のようなイメージで人物像を膨らませていきました
 決まっていた事項は「歴史上、英雄を補佐する双璧となる騎士がいた」「主人公は後の世で剣聖と謳われた」「騎士のどちらかは死んで異形となる」でした

 ストーリーの軸は「相棒物」です。ザ・騎士物語のストーリーラインに、騎士2人の様々な感情を絡めようと思いました。
 設定したキャッチワードは「剣火(けんか)」。剣と剣がぶつかって生まれる火花という意味の造語で、その光景に騎士2人のライバル関係を重ねました

 設定作りの際、思ったよりとっかかりが少なかったので、決定している事項から考えていきました。歴史上の資料ではライバル騎士は両方とも男性の設定でした。が、登場人物が偏り、男臭いストーリーになってしまう(それはそれでやりたかったですが)ため、どうにかしてヒロインを入れたかったという裏事情がありました
 どうヒロインを入れるか。例えば絶世の美女を登場させて、ライバル関係の主人公2人が取り合い、その女性を含めた三角関係にする、など悩みましたが、あまり芳しくなく……。結果、騎士の片方を女性にして「歴史上は男性だが実は女性であることを隠して男社会で頑張っていた」上杉謙信女性説みたいなパターンを使ってみました
 ライバル役の騎士はモチーフありで、「ローランの歌」からローラン。反映しているのは名前と死に様くらいです

 主人公が女性、ライバル兼相棒を男性にしたことで、性別の女&男、性格の陰キャ&陽キャ、真面目&ナンパ、才能の無し&有りなど、見た目を含むあらゆる点で正反対のキャラ設定になったため、会話や関係性が非常に作りやすく、結果的に主人公を女性にしたのは大成功だったと思います
 第三の人物として2人の教育係の軍師を設定しました。歴史的に重要な役割を持ちつつ、教育係として2人を見つめる大人役として活躍できました。モチーフは三国志の諸葛孔明です
 本筋と関係がなかったため割愛しましたが、軍師が主人公に想いを寄せている裏エピソードがありました。後の世で軍師の子孫が主人公の子孫に想いを寄せるストーリーも展開しており、そちらとつながっていたりもします
 ライバルが変身させられる異形のモンスターの見た目は「騎士」。異形の容姿なのに剣術が美麗というアンマッチな雰囲気のイラストが非常にスタリッシュでカッコよかったです

 あらすじ。
 恩人に報いるために性別を偽って騎士になろうと努力する主人公。性格も生き方も真逆のライバルと出会い、互いに切磋琢磨しながら成長していきます。ライバルの背を追いかけつつ性別も友情も超えた関係性を築いていく2人ですが、ライバルが不慮の死を迎えてしまう……。

 書きたかった感情は「嫉妬と羨望」です。ネガティブな意味で使用されることが多い感情ですが、自分にとっては人生において成長するために欠かせない感情です
 才能は無いけど努力家で、恩人のために尽くしたいと考えている主人公の前に現れたのは、やる気も無いのに才能マックスパラメータの人格者。しかも自分が認められたい恩人に褒められる有様。これは悔しい
 悔しくて悔しくて、殺してやりたいくらい嫉妬して、そんな自分に対して自己嫌悪をして……という、通常汚いと嫌悪される嫉妬の感情を主人公には逃げずにしっかりと向き合ってもらいたかったです
 嫉妬は恋愛に似てると思います。悔しくてムカついて憎くてって、それだけたくさん相手のことを見つめて、相手のことを考えているわけで……

 才能の無い自分は主人公と感情がリンクする部分が多く、主人公が嫉妬を吐露するシーンなんかはいろんな記憶が蘇り、非常に力が入りました

 クライマックスで自軍を襲う異形の中身がライバルであることを主人公が気づきます。その異形が放つ剣術が、一緒に研鑽を重ねてきたライバルの剣と同じであることに気づいたことがきっかけでした。ライバルを追いかけ続けてきた主人公だからこそ気づくことができました

 やりたくなかったのが「お前、女だったのか!?」というシーン。「女性であることを隠して頑張る」物語のお約束のシーンではありますが、騎士同士のライバル関係をしっかり描きたかったので、性別を前提にして実力差にバイアスがかかるようなシーンは入れないようにしました
 が、ライバルが主人公を女性であると察していることも感情を描く上で必要だった(キャラ的に気づかないのも違和感がある)ので、ライバルが察しの良さを発揮する形になりました

 もうひとつやりたくなかったのが「ライバル関係が恋愛に発展する」流れです。主人公2人は男女ではありますが、互いを騎士としてリスペクトしています。だからこそ生まれる「恋愛感情すら超えた絆」を描いてみたかったです

 ライバルキャラが実力者のため、死を迎える手段や方法に非常に悩みました。魅力あるキャラが簡単に死んでほしくないし、「これなら死んでも仕方ないよね」という状況作りがこのシリーズ毎回の悩みの種でした

 このストーリーを作成するタイミングで、シリーズのクライマックスが視野に入ってきたので、ストーリーのラストに、シリーズの結末を示唆するポストクレジットシーンを入れる試みをしてみました
 このシーンの通りのクライマックスを描かなければいけないプレッシャーが生まれましたが、ラストの盛り上げに一役買ったかと思います

印象に残っているシーン&セリフ

過去に囚われる主人公に対してライバルが叱咤するシーン。シチュエーションが違えばただの告白、を目指しました
「うるせぇ!!
 もう過去なんか見るな! 俺だけを見ろ!!」

異形となってしまったライバルに対して主人公が感情を吐露するシーン
「オマエが憎かった。
 オレより才能にあふれて、オレよりずっと人に好かれて、
 オレよりギルザ様に認められて、オレより先に騎士になった!!

 追いつきたくて、追い越したくて……。
 いつまでもそれが叶わないから、ずっと近くにいて……!
 オマエはずっと……オレの憧れだった!
 そんなオマエが……何をやってるんだよ。」

「俺だけを見ろ」と言われた後日、主人公が決意した心を語るシーン
「騎士になるなら、序列は第2位がいいです。
 オレはアイツの下でいい。
 ずっとそうしてきたんです。
 背中を見て、追いつこうと走って、並んだと思ったら離されて……。
 アイツにだけは負けたくない。
 アイツをずっと追いかけていたい。

 だからオレは、序列2位がいい。」


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