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今こそ「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」をSWガチ勢がガチで語ろう

タイトルの通りです。自分はダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)やソード・ワールド(以下SW)などファンタジー系のTRPGをそれはもう多分にやってきたのですがD&D映画を見てGM視点で「うわ~~!めっちゃある~~!」ってなるとこが多々あったのでシナリオの展開で良いなと思ったところを『実際のセッションではどのような展開になっているのか?』を中心に語っていこうかと思います。ともあれさっきGM視点って表記した通りD&DのほうでDMをした経験は数えるほどしかなくSWでGMした経験の方が圧倒的に多いので主にGM視点で語ることになると思います。まためっちゃネタバレしますのでまだ見ていない方は読み進めない方が良いかと思います。

D&Dとは?

人によってはそっから!?という感じではありますが一応この映画の元となるTRPGであるD&Dがいかにすごいゲームなのかについても触れておきます。TRPGどころかRPGの中で元祖となるもので今日のゲームにおいて非常に大きな影響を与えているTRPGです。「ドラクエ」や「FF」シリーズの元となったコンピューターゲーム「ウィザードリィ」「ウルティマ」はいかにTRPGの「D&D」をコンピューター上で再現できるかといった視点で作られたものです。また「遊戯王」の元となったカードゲーム「MTG」の誕生にも「D&D」が多分に関わっており、そういった大きなコンテンツのおじいちゃんにあたるものと考えてもらって良いです。今日のTRPG,RPG,TCGのすべてがここを祖に帰結するものであると思ってもらえればいかにこのTRPGが後世に影響を与えているかわかると思います。そしてこのTRPG、すごいのは昔のゲームではなく今もなお大人気TRPGなんですよね。海外では今もなお最もプレイされているTRPGであり現在進行形で様々な影響を及ぼしています。まあ日本ではクトゥルフ神話TRPGが一番強くてD&Dは日本語版サポートが終わったりあまりぱっとはしていないんですけどね。

※追記
D&DのサポートについてですがHJのサポートが終わるだけであり引き続き大元のWotC社によって直接、日本語版の展開を進めるそうです。そうであればこの映画やバルダーズゲートなど追い風がかなり吹いているのでこれからD&Dは盛り上がっていくかもしれません、ご指摘いただきありがとうございました。

さあ映画について語ろう!

D&Dはすごいんだぞと言うことが分かったところで早速いきましょう

冒頭のシーンが凄い!

まず最初は牢獄に閉じ込められたエドガンとホルガが脱獄するシーンから始まります。ここから早速この二人のPLはやらかしてくれていますね。鳥人間と共に地上へ落下することで脱獄するのですがこの行動は初っ端からGMの想定していたルートではないと思います。RPで『鳥人族のジャーナサンはまだ来ないのか!?いやー彼なら分かってくれるのになー』とその場に鳥人族のNPCを生やすように既成事実を作ったうえで「GM!この部屋に窓はありますか?」と聞くPLの姿がありありと浮かびますね。

そのPLに対応するGMも素晴らしいです。まずGMはPLにPCの設定を語らせてから恩赦を与えて脱獄させる流れだったのだと思いますがPLのやりたいことを即座にくみ取り【ジャーナサンを遅刻させ、PCの設定が語り終わったら登場させる】ことで結果的に物語の大筋を変えることなくPLのしたいこともやらせることに成功しています。ここで脱獄させることでさらにPCのキャラクターも立たせてあげられることもできますね。「恩赦するつもりだったのに!!!!」というのはGMの叫びでしょう。即座にアドリブ対応するGMのタダものではなさも光ります。初っ端からめっちゃ笑いました。無茶ぶりに揉まれてきたGMは強いんですよ、このPLとの付き合い長いんでしょうね。

脱出シーンが凄い!

これは脱獄のことではないです。途中で仲間にしたドリックが様々な動物に変身しながら逃げるシーンですね。ここはD&Dを語るうえで非常に重要なシーンで【ドルイドが動物に扮して逃げる】ことに全員慣れてるんですよ。「動物になったぞ!?」とかいちいち驚かない。その辺の兵士たちもむやみに取り乱さず粛々としつこいくらい追いかけまわす。ここにこの世界の深さと異世界の人々の日常がしっかりと描写されているんですよね。ジャガイモがあるかないかじゃないんです、魔法や変身に慣れ切っている様子を描くことこそが異世界の日常を語るうえで一番大事なんです。

このシーンを用意しているシナリオも非常に親切です。確かにドルイドは動物に変身できるしそれは割とRPでいくらでも便利に使えますが【シナリオ側でドルイドが変身して活躍する場所をちゃんと用意してあげる】というのは非常に大事なことです。キャラも立ちますしね。もちろんその気になればドリックの変身に頼らずともエドガンやホルガで偵察することもできたかもしれませんがちゃんと見せ場が均等になるようドリックに見せ場を譲っています。これが出来るTRPGゲーマー少ないんですよ。

ボスギミックが凄い!

セクシーパラディンこと「ゼンク」と合流したエドガン一行は魔法破りの兜を手に入れるためにダンジョンの最下層まで来ますがそこでアンデッドの暗殺者たちと戦うことになります(戦ったのはゼンクだけですが)首尾よく倒したものの蘇ったアンデッドたちに追われることになる一行ですがその後おなじみのデブなドラゴンことテンバーシャウドにアンデッドもろとも襲われます。こういう感じのどうしようもないほど強大な存在が現れて敵と一緒に逃げる羽目になるって展開大好きです。PLによってはここでアンデッドの暗殺者たちやゼンクと協力して戦闘する選択もあったかもしれませんね。まあここでPLは逃げる方に舵を切ったのでアンデッドも最後の最後に主人公たちを殺そうとしてドラゴンに食べられる――こういったPLの選択を見てからあと腐れないようにあたかも【最初からこいつらとは和解できませんでした】感を出して胸糞展開にしないのはGMの腕の良さが光ります。

そしてここがこのシナリオの特筆すべき点です。一行はテンバーシャウドに追われ続け最後に小部屋に追いつめられる、しかしテンバーシャウドも太っているため顔しかその部屋に入ることが出来ない。そう、条件付きボスバトルが発生するんですね。敵はテンバーシャウドの頭のみ、そして倒す必要はなく勝利条件は【テンバーシャウドが怒る程度にダメージを与えること】です。これがこのシナリオの妙ですね。SWやD&Dにおいてしばしその時のレベルでは到底かなわないような強大な敵に何かしらのハンデを負わせてボスとして登場させることがあります。駆け出しの冒険者に出しても問題ないような序盤のボス敵って種類が少ないためにどうしても【村を襲う狼の群れの親玉】とか【洞窟にいるゴブリンを束ねるオーガ】とか展開が固定されがちですからね。そこで序盤から有名なクリーチャーを出すことでPLにハラハラ感を演出することが出来ますしその後ハンデ無しのボスを倒すことによって成長を実感させることが出来ます。例えばこの映画のシナリオがキャンペーンとして続いて自分DMならPCが強くなったころを見計らってボスに「頭に傷がある太ったテンバーシャウド」をボスとして出します。

今回はテンバーシャウドを肥えさせて小部屋に頭だけ入れるようにすることでこの舞台を用意したわけですがめちゃくちゃうまい展開ですね。テンバーシャウドは最初からハンデを負っているわけではないので大暴れさせることが出来ますし、この展開だと一見すると一行が部屋に追いつめられたように見えるためご都合主義感もありません。非常に優れた出来のシナリオだと思います。

そんなこんなでセクシーパラディンこと「ゼンク」はパーティから離脱します。お助けキャラ的なポジションでしたね、長期キャンペーンとかしてるとどうしても忙しくてたまにしかスケジュールが合わない人がいます。そういう人にはこういう「ゼンク」のようなキャラクターの役割をあてがうと時間が会うときだけセッションに参加できて良いんですよね。もしかしたらDMが用意したNPCかもしれませんが個人的にはたまにしかスケジュールが合わないPLが参加したのかな?って思ってます。

アドリブが凄い!

嫌いな人はいないと思います。馬車のシーンです。ここは完全にアドリブですよね。ここでのPLの発想は見事というほかありません。ここでのPLは好き勝手していますがGM的には(どう忍び込もうともどのみち強制的に捕まるし、宝は船に運び出してるから好きにしてクレメンス)って感じのパートですね。こう見ると酷いような気もしますが実は酷くないんですよ。強制的に捕まる展開をシナリオ側で用意することで工夫が出来ないPLでもクリア出来るようにしているのは非常に親切です。極論を言えば正面突破だー!うおおおおお!しようがこれはもうダメだ!逃げる!!!ってしようが話は進みますし闘技場のシーンまで行けます。強制的に捕まるって聞くとえって思う方もいるかもしれませんがシナリオの強度が高いからこそアドリブで好き勝手出来る幅が広がるというのは覚えておいて損はないと思います。逆に強制的に捕まる展開がなくてPLが「絵画に転移魔法仕込もうぜ!」って喜々として言い始めた時にDMが「え……それはちょっと困るんでやめてもらっていいですか」ってなるシナリオとどっちがいいかという話ですね。

そういうもんさ、の美学

無言で危機に陥った街に引き返すシーンなんですが最高ですね。普通であれば誰か一人くらい「何で引き返すの!?」って言うみたいなやり取りがありそうなもんですが、これはD&Dの映画です。プレイヤーは平穏などではなく最高に盛り上がるクライマックスと名誉を求めています。なので無言で船を引き返すんですよね。さらにここでタイトルに【アウトローたちの誇り】と入れているのが上手いです。無言で引き返すことに対する答えは映画を見始める前から我々は知っているんですね。D&Dだから、そしてタイトルで提示されているから、ともすれば自殺行為に匹敵するこの英雄的な行動を「そういうもんさ」で片付けられるのです。

もう一個だけ言わせてほしい

これはシナリオ展開とかと関係ないんですけどこれだけは言わせてください。ボス戦の戦闘描写良すぎませんか!?1vs4の戦闘で何が起こっているのかを突き詰めた究極の結果だと思います。自分はここで泣きました。ああ、俺たちがパーティを組んでるときはずっとボスとこういう戦闘してたんだな。って答えを教えて貰った気分でした。だいたいのファンタジー映像における複数人で連携してボスを倒すシーンは”ショー”って感じがして、こういう泥臭い”戦闘”を描写してる映画ってなかなかないんですよね。

終わりに

以上がD&Dの映画を見た感想となります。いやー実写だからこそ思い浮かぶ情景がたくさんあって、実写で良かったと思いますね。最高の映画でした、続編100本くらい作ってほしい。エドガンとサイモンはよく出目洗ってね。

それでは~ノシ

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