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メイク3[オレンジチーク]

らっこちゃん。なにしてんのー。
気ままでいいわね。
貝殻かんかん叩きつけたらかわいいいーーって。
ちっちゃい子にもおっきい大人にもはしゃがれて。
『りく、行こう!つぎペンギンいるよ!』
最近会ってなかった高校の同級生のさきか。
LINEもしてないのに、なぜか、りくが好きな水族館行こうって、いきなり誘ってくれた。
わたし、水族館好きなんていったっけ?
と思いながらも、いざ来てみると、物言わぬ動物たちが何を考えてるのか想像するのは楽しい。
あのペンギンなんて、一番てっぺんに立ってちょっと顔横に向けて、さー、俺を撮れ、なんて、人間より偉そうじゃない。
今日は薄い水色のコットンレースのワンピースの下にデニムをはいた。チークはオレンジ。
『りく今日もかわいい』
さきかは会うといつもわたしの服を褒めてくれる。
例のえらそうなペンギンを見てたら、なんか思った。
『わたし、さきかみたいな彼氏がいいわ』
『何言ってんの、りく。やられすぎ笑 でもたしかに、わたしもりくみたいな男がいいかも。うん、ありあり。』
わたしよりもいつも甘めなスタイルのさきかは、目もくりくりと輝いてて、笑うとキュッと細まるとこなんか、何年経ってもずっとかわいい。
『男となんて永遠に分かり合える気しないわ』
『わかる。ってか家に帰って男がいるよりかわいい女の子がいてくれる方がよくない?』
『うわ、たしかに。元カレいるより、さきかがいる方がぜったいいいわ』
『もう、同棲しちゃう?笑』
さきかは会うといつでも楽しそうだ。
さきかが落ち込んでるところってあんまり見たことないな。
いつもどうしてるんだろ。わたし、いつか返せるかな?なんてちょっと焦るけど、さきかはたぶん、そんなこと気にしてない。
こんな、包容力ある男、どこにもおらんわ。(詰み)
別に、深い話をするでもない。
『今日もありがと。たのしかった。またね。』
『たまにはりくから誘ってね、ばいばい』
ちょっと前向きな気持ちになって、お風呂でメイクを丁寧に落とす。
いつもよりちょっとだけ、かわいいじゃん、わたし。
単純でよろしいこと。

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