素晴らしきゲーム音楽の世界[15]MOTHER
本日は1989年にファミリーコンピューターで発売された『MOTHER』のゲーム音楽についてお話します。
本作はアメリカを舞台にしたロールプレイングゲーム。当時のRPGといえばファンタジー世界が主流だったのに、現実世界の……しかもアメリカを舞台にするとは異色でした。
家の中で突然、12歳の主人公に襲い掛かる怪奇現象。それがひいおじいちゃんの研究と関係していることを知り、謎を探るために旅立ちます。
武器はバットやフライパン、魔法の代わりに超能力。装備はデパートで揃え、お金はパパが銀行に振り込んでくれる。ステータス異常は風邪や喘息とすべてが現代的。斜め方向に移動できるのも画期的でした。
発売した任天堂にとっては、初めてのロールプレイングゲームだそうです。2020年3月現在はニンテンドーバーチャルコンソールで配信中。名作はいつまでも語り継がれて欲しい。
ゲーム中に流れる曲はどれも素朴な感じがします。
気持ちを高めてくれるというよりは、ゲームに寄り添うような音楽。ファンタジーRPGのように「魔王を倒す勇者の冒険!」ではなく「子供たちが広い世の中を知る青春の旅」ってイメージが強く残っていますね。
ファンタジーにおけるダンジョンがMOTHERでは墓地や幽霊屋敷、廃工場にあたります。フィールドのBGMがほんわかしているせいか、ダンジョンの音楽がより怖く、異質に聴こえてきます。現実味があるせいでしょうか。
自分が好きな曲は『SNOWMAN』スノーマンという雪が降る街の周辺で流れるBGMなのですが、深々と雪が降り積もるイメージを想起させる曲なんです。北国に住んでいたから、余計にささったのかもしれません。
YouTube-MOTHER プレイ映像 より
好きな曲を何度も聴きたいとサウンドトラックを購入したのですが、1曲ずつ分けて収録されていません。内容に沿ってつなげられた一つの曲になっているんです。
だから好きな曲だけをヘビーローテーションできない(これはこれでいい)
メインは原曲のアレンジバージョンです。壮大なオーケストラ調になっていたり、アメリカンチックになっていたり、ゲームの世界観を深めてくれるサントラになっています。
特にクイーンマリーの城で流れる曲に歌詞をつけた『Wisdom Of The World』は、もはや気高く尊い……女王の正体と結末を知っているせいか、じーんと来ましたね。
作品の発売当時、自分は小学生でした。
友達の家でプレイしているのを見ていて「面白そう」と感じ、中学生になってから中古ショップで買って遊んだ記憶があります。
なかなか売っているお店がなかったんです。近所にはないと知ると、自転車で隣の駅まで探しに行ったり、行ったことのない場所を探索してみたり。
その後の行動範囲が広がったのはMOTHERのおかげかもしれません。見つけたときはもちろん嬉しかったですね。やっと遊べるって。
冒険は終わったのです。
今は便利な世の中になったし、最小効率でほしいものを手に入れるようになりました。疲れることはしないし、したくありません。
大人になるってこういうことか。
MOTHERの主人公たちはどんな大人になったのだろう。自分のようにすっかり落ち着いてしまったのか、それとも少年の心を忘れずに生きているのか。
いずれにせよ子供のころの体験は貴重な宝。箱の中に大事にしまっていることでしょう。たまに開けて懐かしんでは、いま生きていることを自覚する。それは寂しいことじゃなくて、頑張る自分を少しでも支えるため。
自分がメロディを懐かしむ旅を続けているのも、日々の自分にエネルギーを与えているのかもしれません。
頂戴したサポートは今後の創作活動の資金として使用させていただきます。 より楽しんでいただける文章や作品作りを目指しますので、どうぞこれからもよろしくお願い致します。