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【自家製サッカー概論】97 なでしこ ポゼッションとそのディフェンス

 7日深夜に、シーブリーズカップでなでしことアメリカの一戦があった。
 
 試合は、開始早々に清家貴子選手(浦和レッズレディース)のゴールで先制したものの、アメリカに逆転を許し、敗れた。
 
 内容的にも劣勢を強いられた感のある試合だった。
 
 色々と分析があるだろうが、気になった点を一つだけ。
 
 なでしこのポゼッションとアメリカのそれの比較である。
 
 難しいことを抜きにして、以下の様な感じを受けた。
 
 ・パスの受け手を探してGKに戻すなでしこジャパン
 ・中盤にボールを付けてゴール前に迫って行くアメリカ
 
 この違いは何だろう。
 
 ごく単純に、ポゼッションでノッキングを起こす場合、「パスの受け手を増やそう」と考えるのが定石だと思う。
 
 センターバックがボールを持った際に、どれだけボールを受けられる選手を増やすか。
 
 ボールが一つ前に運べれば、そこを起点に、また選手がボールを追い越してパスを受けようとする。
 
 全体的に走力を上げるのである。
 
 対して、アメリカはなぜポゼッションが上手くいったのか。
 
 中盤にボールを付けても奪われることが少なかったから、の様に見えた。
 
 なでしこが、守備時の球際の弱さを露呈した感じだった。
 
 それは攻撃でも同じで、ボールを持ち相手をいなす迫力が少なかった様に感じた。
 
 パワーで優位に立つ相手にどう戦うか。
 
 これも単純に考えて、「自分たちの選択肢を増やす・相手の選択肢を削る」という考え方はどうだろう。
 
 攻撃時では、ボール保持者の選択肢を増やしてあげる。
 
 ドリブルで持ち込めれば、パスも出せる。さらにはロングボールも狙える。
 
 こうした状況を作るためには周りの選手はどうしたら良いか。
 
 守備では、相手の選択肢を削るのである。
 先ず、逆サイドへの展開を削る。攻撃の方向の選択肢を削るのである。
 
 パスコースの選択肢を削る。縦や中を切ると言った感じである。
 
 ボールを受ける選手の前を向く選択を削る。マークの激しさである。
 
 その為には何をしないといけないか。
 
 攻撃の方向性を削るためには、チーム全体でどういう意識を持った方がよいか。
 
 パスコースの選択肢を削るためには、ボールに対してどうアプローチして、どうマークに付くべきか。
 
 マークが離れていては、相手に前を向かれ、「前に仕掛けることが出来る」「(前に)パスを出せる」「もう一度後ろに戻してやり直せる」と相手に様々な選択肢を与えてしまう。
 
 こうなると相手が先手を取る。
 
 相手に自由にさせないためにどれくらい距離を詰めないといけないか。
 
 そのためには先ずボールに対してどれくらいの強度で行くか。(取りに行ってかわされては意味がないので)
 
 中盤のマークもどれくらい近づかなくてはならないのか。
 
 そのためにはコンパクトさが必要で、最終ラインの押し上げも大事だが、背後のスペースも気になる。
 
 そうなると、逆サイドの選手のポジションも肝になって来る。
 
 共通認識を持って、どれだけチームで対応できるか、そんな所でばらけた感じがあり、個々の局面を個々が対処するだけの感じに見えた。
 
 そうなると選択肢を持つパワーのある選手が有利である。
 
 谷川萌々子選手がパワーで負けない姿を見せた。将来的にはこうした選手が出て来るかも知れないが、現時点では少ないと思う。
 
 そうなると、“チームで”となる。
 
 その「チームで」の部分で、どんな共通認識があったのか。
 
 ワールドカップの時の様に自陣に引いて戦っても良いし、中盤でボールを奪う形を試しても良い。
 
 中盤で奪いたいなら、前線は何をしなくてはならなくて、最終ラインはどうサポートをしなくてはならないか。
 
 それをチーム全員がきちんと認識していたのか。
 
 これがクラブなら、もっと細かい戦術に落とし込むだろうが、代表ではそこまでは難しいと思うから、もっと単純な共通認識を持つことが大事ではないかと思うのだ。
 
 相手がポゼッションをした時、なでしこは、どうやってボールを奪いたいのか。
 
 そのために、前線はどう追いかけて、中盤はどう狙い、最終ラインはどうした方が良いのか。
 
 その辺りで選手間の意思疎通が必要なのでは、そんなことを思わされた試合だった。

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