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【自家製サッカー概論】05 二種類の守備と、続・二大哲学について

略語一覧 SB:サイドバック(サイドの守備選手) FW:フォワード(前線選手) MF:ミッドフィールダー(中盤選手) DF:ディフェンダー(守備選手) CB:センターバック(中央を守る守備選手)

 前回は、守備の二大哲学を紹介した。①人を潰すか、②ボールを制限するか。これが、①マンマーク守備、②ゾーン守備になるのである。
 そして今回、守備についてもう少し深めてみたい。テーマは「二種類の守備」である。

 二種類の守備と言っても、実に単純で、それは「A:失点を防ぐ守備」と「B:ボールを奪う守備」である。
 この二種類の守備の決定的な違いは、「チームの重心」である。
「A:失点を防ぐ守備」では、チームの重心は「ゴール前」にある。反対に、「B:ボールを奪う守備」のチームの重心は「ボール」にある。

 考えれば当たり前で、「ゴールを守る守備」の場合、ゴール前のスペースを少しでも小さくしようとする。だから、「自然とゴール前に守備者が集まる様になる」のである。

 逆に、「ボールを奪う守備」では、ボールを奪いに行くので、「自然とボールの周りに人が集まる」。それで、チームの重心はボールになるのである。

 これは当たり前だと思うかも知れないが、試合では「FWがボールを追いかけ、DFが自分の背後を意識し、中盤にスペースが出来る」なんて場面をよく見かける。
 これは前線が「ボールを奪う守備」をし、守備側が「ゴールを守る守備」を意識してしまうからだろう。

 二種類と聞くと、「どちらの守備が大事か」と思う人がいるかもしれないが、「どちらの守備が大事か」なんて意味がない。
 なぜなら、敗けている状況で「ゴール前を固める」チームはまずないだろうからだ。
 状況に応じて「ボール奪取か?」「ゴールを守るか?」を、チーム全体で判断するのである。

 守備の細かな動きを練習する前に、「今は、ボールを奪いに行くのか、それとも背後のスペースを意識するか」の判断を的確にした方が良いのではないか。
 中盤にスペースが出来る時は、この判断のずれを観察してみるのもポイントだと思う。

 ここで前回の「守備の二大哲学」と、今回の「二種類の守備」を掛け合わせて考えてみたい。
 例えば「ボールを奪いにく(プレス)守備」で、相手のSBをはめる状況である。

 マンマークなら分かり易いだろう。ボール(相手SB)にアプローチをかけ、パスを受けそうな相手MFやDFにマークを付ける。これで相手を囲むのである。或いは、出し所を失った相手が蹴るロングボールを回収し、マイボールにする。
 
 では「ゾーン(ボールに着目する)守備」ならどうなるか。
 相手SBにアプローチを掛けるのは同じである。だが周りの味方の配置は異なる。相手SBから出されるパスコースを封じるポジションを取るのである。

 アプローチする選手の脇のパスコース、相手SBの真横のパスコース、斜め後ろのパスコース、こうしてパスコースを封じていく。
 相手選手がどれだけ動こうと関係ない。パスコースを切っていけば、相手SBは出し所を失うのである。

 肝は、相手の動き出しにつられないことである。相手のボランチが飛出したりしても関係ない。ボールがどう動くかに注力するのである。
 それだけ相手を囲むので、人数が必要になるが、はまれば隙間の無い守備陣形を作ることができる。

 何よりも、こぼれ球に対する反応が早い。例えば、相手SBにアプローチをかけ、ボールを奪えないまでもこぼれ球になったとする。
 その時、周りの選手のボールへのアプローチはゾーンの方が早いのである。なぜなら、ゾーン守備では人の動きではなく「ボールに集中している」からである。

 逆に、マンマークだと、人以外に所にボールがこぼれた場合、重心が人にあると反応が遅れることがある。

 こう書くとゾーン守備が簡単に見えてくるが、マンマークに慣れた選手は、「人が動くたびにそれに気を取られてしまう」ので、ポジションが簡単にずれてくるのである。
 これが、日本で「ゾーン(ボールに着目する)守備」が浸透しづらい理由だと思っている。

 今度は「ゴールを固める守備」の場合だ。マンマークだとクロス対応で強さを発揮するが、パスで崩された時、CBが相手FWに付き、ゴール前にスペースが生まれることがある。こうしたこともマンマークとゾーンの違いで重要なポイントである。

 守備の特徴を理解して、応援するチームがどんな守備を意図しており、どこまで出来ているかをチェックしてみるのも面白いと思う。
 19日から始まったE-1サッカー選手権。日本代表選手の守備が、ゾーンか、マンマークかといったところに注目して観てみるのも、一つの観戦法だろう。

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