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違う世界の自分なら

朝から
血の繋がった敵①、
血の繋がった敵②、
血の繋がった中立の少女、
血の繋がった中立の女性、
の話し声で目が覚めた。

・・・朝からやかましい。

ふすま1枚隔てただけではやはり夢でさえ侵食されてしまう。

金属製のロフトベッドが軋むため、必要最低限の動きだけで寝返りを打つ。

枕の下のスマホはいじらず30分。

エネルギーの足りないぼんやりした頭で孤独感をなぞっていた。


虚無・・・・

だが決して輪の中に入りたいわけではない。

ただ胸の当たりに気色の悪い風が吹いているような感覚がするだけだ。

これ以上深く考えないようにスマホを取り出して電源ボタンを押す。

目に痛い光の中で最初に浮かんだ''8:19''。
こんな早くに起きられたのは久しぶりだ。

ロックを解除すると、YouTubeの
「癒しの音楽♪ 雨の中のピアノ 〜微睡みに誘う3時間〜」
という動画が、ふんぞり返った矢印を残して静かに光っていた。


寝付けない時にいつも使う最終手段の寝落ち用音楽。


通知バナーを確認する。

・・・

''○○さんがあなたの投稿にコメントを···''
''Yahoo!Yモバイルからのお知らせ 今月···''
''教務課からのお知らせ 緊急事態宣解···''
''無料ガチャを引けるようになりました···''
''○○さんがあなたとマッチングしまし···''

無機質な帯の連なりから、反応を待つような息遣いが聞こえる。
本当に煩わしい。




アイツからのメッセージはLINEもInstagramのダイレクトメッセージも何も無いというのに・・・・・・・・



何もする気が起きない体でとりあえずの寝返りを打つ。

そこでふすまが開いた。

粗暴な開け方をした時の嫌な軋み方だ。

視界の淵で確認した影の長さから見て、
おそらく血の繋がった敵①。

月収30万の男の影が、沈黙したまま縦に少し伸びる。

何も知らずに寝ているように見せかけるため、静かに固まる。
幸い、2段ベッドの上に横たわって、壁の方を向いている人間の顔を拝めるような位置ではない。
そのうえ背中側は、数年前にゲームセンターで祖父がとった、特に興味の湧かない涼しそうな衣装の女の子の抱き枕が守ってくれている。

怒りが滲んでいるであろう沈黙。

怒りが滲んでいるであろう沈黙。

怒りが滲んでいるであろう沈黙。

隅々の筋肉に固着するよう念じる。

はやくどっかいけ

・・・全身から汗がそうっと滲み始める。

また乱暴にふすまが軋む。

「そろそろいい加減に出ようや。」
血の繋がった敵①の、深く老いた耳障りな齢50の男の声。

「ちょっと待って、私まだ化粧終わってない。」

血の繋がった敵②の、上擦りすぎずかといって決して低くもないような不快な声。

「いいからみんな早くして。」
血の繋がった中立の女性の、果物の果肉のような声。
「もう遅れるから行くねー。」
血の繋がった中立の少女の、まだ少しあどけなさを感じるような勢いの強い声。

指は触れずにスマホの画面を光らせたままで、まだ輪郭のはっきりしない頭の中に静かに怒りを広げていく。

この家で蠢いている2種の生物のせいで朝からなんだか不健康だ。

軽快な少女の足音。

はやくどっかいけ

血の繋がった敵①と血の繋がった中立の女性が愛用している鍵束がチャラチャラ鳴る音が2つ。
はやくどっかいけ

大っ嫌いなあのヒールから出るコツコツや、
石張りの床とスニーカーが擦れる音。

はやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけはやくどっかいけ────────。

鍵が掛かる音。






ようやく静かな朝が来た。


全てノンフィクションなのだから笑ってしまいたい。

さぁ、これからの数時間をどう過ごそうか。








はい、貴重なお時間を頂いてしまったのにつまらない文字の羅列ばかりでごめんなさい笑
ちょうど今朝あったことです。
ウソかホントかはご想像にお任せしますー笑



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