韓国映画について

ボクの韓国映画デビューは高校生の頃。

友人に誘われて行った「シュリ」だった。面白かったかどうかは覚えてないんだけど、チェ・ミンシクの鬼気迫る演技に鳥肌がたったのは覚えている。

元々、映画好きで金さえあればレンタルビデオで洋画を中心に漁っていたが、これが初の韓国映画デビューだった。

「JSA」「チング友へ」と、ハリウッドのビッグバジェット映画をも凌駕する高いクオリティーと面白さにすっかり韓国映画ファンになっていたボクにトドメをさしたのがポン・ジュノの「殺人の追憶」だった。

確か阪本順治監督の推薦コメントだったと思うけど、「黒澤明の孫が韓国で生まれた」という表現に凄く共感した。個人的スリラー映画のベスト1である黒澤明の「天国と地獄」と並ぶ傑作だと思った。こんな傑作をデビュー間もない監督が撮ってしまうなんて、一体どんだけ凄い国なんだと興奮していた。十数年後、「パラサイト」で世界的巨匠の仲間入りを果たしたポン・ジュノだが、個人的には「パラサイト」より「殺人の追憶」が好きだ。

そして、イ・チャンドン監督。

「オアシス」で度肝を抜かれ、それ以前の作品である「グリーンフィッシュ」(まだ無名時代のソン・ガンホも出演してた)、「ペパーミントキャンディー」を見て明らかに見る前の自分と、後の自分の価値観が変わってしまったという感覚。大袈裟じゃなく。

「ポエトリー」、「シークレットサンシャイン」、そして最新作「バーニング」。もう70歳近くの監督が撮ったとは思えない、瑞々しく繊細で、エッジの効いたサスペンス映画。「いま何故これなのか」という作品に対する問題意識が非常に高く洗練を極めている。だからこそ現代に生きる人間に突き刺さる傑作だった。これ一本撮っただけだったとしてもボクは監督の大ファンになっていただろう。

いずれも世界の映画史に残るであろう傑作ばかりだ。そんな作品を一人で撮っている。

こうなると黒澤明うんぬんどころの話じゃない。もう韓国映画は日本映画なんかと比較するのもおこがましい、次元が違うところへいってしまっている気がする。

こういう本物の映画に触れると、邦画で評価されている映画がいかに貧弱かが浮彫になって哀しい。

最近の業界界隈で評価の高い「宮本から君へ」や「よこがお」、「火口のふたり」、「新聞記者」など。

確かに「ダイナー」や「翔んで埼玉」のような半年たてば誰も思い出さないようなオモチャよりも映画的価値が高いのは解っているが、その作品の「映画的な強靭さ」で比べると、何とも貧弱で心もとない気持ちになってしまう。

ポン・ジュノ、イ・チャンドンばかりではない。「チェイサー」や「哀しき獣」、「コクソン」のナ・ホンジン、「オールド・ボーイ」や「渇き」のパク・チャヌクなど第二のポン・ジュノになりえる監督がゴロゴロとひしめいている。そして常にその背中を追う優れた新人監督が後から後から現れる。

今後もますます楽しみな韓国映画だ。



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