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ハッピー バースデー

今年の誕生日は日曜日。
久しぶりのゆっくりとした朝だった。いつもだったらもう朝食を済ませている時間に目が覚める。
目が覚めても、今日が誕生日だということをすっかり忘れていた。
ふとんの中で、しばらく考え事をしていて、あれ?もしかして今日って…誕生日だ…と思い出した。

そして、途端に最悪の気分になる。寂しさが靄のように心の中に立ち込める。クリスマスを一人ぼっちで過ごす気分に少し似ている。
私にはもう、あの、毎年全力で誕生日を祝ってくれた最愛のパートナーはいない。ある日突然旅立って、今年で8年。
なんて大きな愛に私は包まれていて、そしてなんて大きな愛を失ったのだろう…と毎年思い知る。

そして思い知った途端に自分を罵るのだ。そう毎年。
なんだよ、それ、祝ってもらう前提かよ。お前はあの人にどんだけのことをしてあげたんだ? 優しくしてたか?思いやりを注いでいたか?そんなにプレゼントが欲しいのかよ。ワガママだなあ。贅沢だなあ。なんて欲が深いんだ。そんなやつ、誰も愛してくれるわけないじゃん。

そんなワードを頭の中でグルグルさせていたら、能天気な笑顔で「おはよー」と声が聞こえた。

息子だ。
顔を合わせるなり、寝起きのぐちゃぐちゃな髪の毛をさらにくしゃくしゃかきあげながら、さり気なく言ってきた。

「HAPPY Birthday〜」

そして、スマホを見ればSNSには幼なじみや、中学の同級生たち、親友、かつての呑み友だち、仕事仲間などからたくさんのメッセージが届いていた。

朝一番に、悪魔になりかけた私の心は、たった一人の家族と、友人たちによって浄化していく。
こうして年に一度の私の記念日は、笑顔で過ごすことができている。
今をともに生き、つながっている人たちがいてくれるから、私は悪魔にならない。人はそれをなんと呼ぶか。

そう、幸せだ。

幸せのカタチはひとそれぞれ。
私にとっての幸せ。そのからくりは、天国の主人が作ってくれたと思っている。今日の幸せは、たくさんの人からの「Happy Birthday」と、息子が作ってくれたディナー、そして買ってきてくれたモンブラン。

幸せの味。

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