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F-14という機体を模型的に熱く語ってみる③

さて、F-14の機首について長々と書かせていただいたが、今度はF-14の胴体について模型的に考察してみたいと思う。

F-14の胴体については、長い間正しいプロフィールのキットが存在しなかった。
胴体…というよりも、インテーク〜エンジンナセルへ続くラインの解釈が追いつかなかった。

悲しいかな、F-14のキットの「あぁ、またか」と思う部分がこのインテークからエンジンナセルにかけてのライン。例えばタイトル上のハセガワ(凹モールド新金型版)の写真をみてもらえれば分かるが、インテークの左側面が壁のような存在感を放っている。インテーク口を表すくさび形の赤いコーションデカールを貼っていないので余計に空虚感が目立ってしまうのかもしれないが、ハセガワF-14の欠点がこのインテーク部分の造形にあるのは明白で、F-14フリークの間では有名な話。

個人的にF-14の造形美は正面形にあると思っている。特に映画「TOPGUN」の終盤、グースを失ったマーヴェリックが失意のままミッションに向かうシーン。高くなった陽をバックに愛機に向かうシーンでF-14の正面形が映し出される場面は何度見ても胸アツ。F-14は駐機状態でも若干前かがみに見えるので、それこそ獲物を狙う猫のよう。たくましい機首の両脇に抱えるグローブ部は怒り肩のような迫力を醸し出し、大きく口を開けたインテークはF-14のパワーを感じさせ、ピンとそびえ立つ垂直尾翼から醸し出すただならぬ佇まい…。

この感動が、ハセガワのキットからは感じなかった。その原因はずばりインテーク。F-14のインテークは正面から見ると逆ハの字になっていて、そのハの字に沿うようにグローブセクションが存在するため、必然的に怒り肩になってしまうのだが、ハセガワのキットはこの再現が弱く、F-15の様な垂直的なインテークになり、グローブ部は「なで肩」となってしまう。結果、横から見るとインテークが厚ぼったく、猫科動物のような猛々しさがスポイルされてしまっているのだ。

実はこれ、当時それまで発売されていたF-14キットのどれもが同じことをやっている。これは想像なのだが、当時流布していたF-14三面図(誰が書いたかはわからないが)の影響もあるのではないかと思う。正面形は確かに逆ハの字にインテークが存在し、横から見た図もインテーク周辺にはあまり問題もない、しかし問題なのは後で触れる下面図。よって、この図面を3Dデータ(あるいは立体物で)化しようとすると、インテークのあたりで辻褄があわなくなってしまうのだった。

F-14の正面形図解

言葉だけでは上手く伝わらないと思うので、簡単に書いてみた。
ハセガワのF-14を正面から見るとインテーク部分の取り付けが水平に近く、F-15のような形状になってしまっている。
そのことにより、点線で示したようにインテークの厚みが露見してしまい、横から見た時の「厚み」の原因となる。さらにその厚みを持ったままエンジンナセルへと続いていくことによって、インテーク〜エンジンナセル部分の全体的なボリューム感が形成されてしまい、ハセガワのF-14は「どこか厚ぼったい」という印象になった。
今回Illustratorで簡単に作図してみたが、インテーク/エンジンナセルセクション以外は位置関係を触っていない。本当に少しインテークの開口部の角度を修正しただけで、「クラウチングポーズ」のようなF-14の正面形が生まれる。

インテークの角度をよりハの字に回転させたため、偶発的に怒り肩になってしまうわけだが、そのことによりエンジンナセルはひと回り小さくなった。
また、点線で示した通り、インテークが回転したことによってサイドの面積が少なくなるため、この場合だとハセガワのキットのような「壁」は解消される。
また、同時にインテーク下に装着される増加タンクの位置が上に引き上げられ、地面とのクリアランスも増えている。ハセガワの旧キットは増加タンクの後端が地面すれすれになっていて、実機であれば離陸時の機首上げで地面に擦ってしまうことは容易に想像できる。スジ彫り版になって幾分解消されてはいるが、それでもまだクリアランスに余裕がなく、胴体の厚ぼったさが目立ってしまっていた。
実はこれ、当時発売されていたレベルの1/32でも同じことが起こっていて、レベルの1/32のキットはハセガワの凸版(旧キット)を参考にしたのではないかと言われている。キャノピーの雰囲気も似ていたから、あながち間違いではないかもしれない。

ハセガワがスジ彫り版のニューキットをアナウンスした時、モデラーからアンケートキャンペーンを行ったような覚えがある。どんな仕様が良いのか、どの部隊のデカールが欲しいのかを徹底的にリサーチしたはず。
その結果、各サブタイプ(ブロック別の作り分けや、あとに続くB/D型など)へのコンバージョン、フラップ(F-14の場合はエルロン)の選択、パイロンパーツ、時期によって異なるアンテナへの対処、ラダーパーツ、垂直尾翼の補強板の有無、スピードブレーキの開閉選択、エンジンノズルの開閉選択など、書き出せばキリがないほどのギミックを盛り込んで満を持して発売されたキットであっただけに、このこの部分の読み違えは残念だったが、当時そこに気づけた人はどれだけいたのだろうか。「なんか違和感がある」とは思ったが、何を隠そう自分も気付けなかった人間の一人である。

しかし、これより数年が経過してあの「レベルの新1/72キット」が発売され、F-14の胴体形状について回答が出たのであった。

➡F-14という機体を模型的に熱く語ってみる④(完結編)へ続く



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