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“イマーシブ・フォート東京“に行ってきた ~森岡毅氏はこんどは何をしでかした?

2024年5月下旬のとある平日、62歳がひとりでイマーシブ・フォート東京に行ってきた、その体験談です。(経緯など前振りを1~3で記載してますが、結果だけ知りたい方は4をどうぞ)


1.   大人気のUSJも存続危機に直面していた

 2001年3月にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がオープンした当時を思い出すと、映画好きの私の心はときめいたが、一方でこの事業は本当に成り立つのか、途中で破綻をきたすのでは、という思いがよぎった。何故なら個々のアトラクションには多大な投資が必要だが、ひとつひとつの映画寿命はシリーズでも続かない限りそれほど長いものではない、映画マニアはそんなに多数派ではない、との考えから。実際にオープン年は入場者1,100万人であったが、その後ほとんどの年で700~800万人台へと落ち込む。そしてパークは驚くべきV字回復を見せるのだが、マーケター森岡毅氏によるものが大きい。その分析力、発想力、実行力により、2010年代後半(コロナ前)には年間入場者数は約1,500万人(推定値)に達し、世界のテーマパークに引けを取らない地位を確立した。

2.森岡毅氏はUSJで何をした?

 このくだりはご存知の方も多いかと思うので簡単にまとめてみる。一言でいうと、彼はUSJを “映画の専門店テーマパーク” から “世界最高のエンタテイメントのセレクトショップ” へとそのコンセプトを変えた。そして顧客ターゲットを “関西の映画好きの大人“ から、”日本のそしてアジアの子供や女性層” まで拡大し集客を増やした、ということ。具体的には、子供向けエリアの充実、閑散期対策のハロウィンイベント、比較的投資が少なくて済む人気アニメの期間限定アトラクションや、安定集客が見込めるコースターへの投資、そして貯えた資金でハリーポッター投資へと。
当時、ハリーポッターはともかくも、ワンピースやらマリオ、ポケモンが出てきた時には「これユニバ?ちょっと本筋外れてない?」と思ったものでしたが、これらにより見事なV字回復。”既成観念に捕らわれていては何もおこらない“ ことを目の当たりにし、同氏の影響力に衝撃を覚えた経緯がある。

3.そうか、“イマーシブ・シアター東京” 行こう

 ある日TVを見ていると、同氏が出演、新たに企画したテーマパークが東京お台場に出来たと。“おっ、森岡氏、今度は何しでかした?”とTVに喰いつく。よくよく聞いてみると‐‐ これまでの娯楽というのはステージ上のパフォーマンスを客席で楽しむのがメイン、しかしここでは、演じる役者さんたち、お客さんたちが同じステージに立つ、というか、お客さんたちがいるその場所、その隣で演者のパフォーマンスが繰り広げられるという、“鑑賞”ではなく“体験”する娯楽。これは是非見てみたい、直で味わいたい、楽しめるのか、完成度はどうなのか、確認してみたい、そんな興味本位で行ってきました。

4.体験報告 
 ~“没入体験“は出来たか?

平日は11時開場ということで、15分ぐらい前に到着した時には少し列が出来ていた。家族連れ、カップル、女子グループなどがほとんど。“ひとりだと気兼ねなく好きに回れるから気楽”、こんな理由で単独で乗り込んだが、周りにいるグループの人達を見ると少し寂しくて孤独。そうこうしてるうちに開場。
“さぁ、くまなく見て回るぞ!”と気合を入れる。

〇 体験したアトラクション

・ザ・シャーロック
・【推しの子】パブリック・ビューイング
・イマーシブ・ストーリーズ~①ヘンデルとグレーテルのルート②魔女のルート
・パーティー・フェスタ!
・ジャック・ザ・リッパ―
・第五人格 イマーシブ・チェイス
・ザ・キャバレーナイト
・フォルテヴィータ事件簿

それぞれのアトラクションの感想はこちら(あくまでも個人の体験談です)。

・ザ・シャーロック

 全体の入場料6,800円以外に追加料金が必要なアトラクションが3つあり、そのひとつ。(他の2つ、“江戸花魁奇譚”と“東京リベンジャーズ”は今回体験せず。)ネタバレになるので細かくは説明できないが、ベイカー街の怪しげな雰囲気、時代を感じる衣装やセットなどワクワク感が盛り上がる。すぐ横で役者たちが演技する、ホームズたちの殺人現場の検証やら、メイン以外の役者の動きも独特の雰囲気を醸し出し、おどろおどろしい場面の数々で臨場感満載。ただ難点はエリアが広く、最初ホームズ、ワトソンについていったが、ここまで速く移動できるの?ぐらい階段の昇り降りや場所移動が頻繁にあり、こちらは途中で息切れ、追っかけは断念。後半は広場のようなところで通り過ぎる役者さんを見るにとどまった。それはそれで面白かったのだが少し残念だったことは、広すぎてすべての進行の確認が難しいこと、ストーリー全体の流れが解らなかったこと、そのせいか終わっても不明点多くスッキリしなかったこと、など。ではどうだったらもっと良かったかというと、どこにいても全体の流れが解るような仕掛け、例えばメインキャスト以外でも事件の噂話などで進行内容を周知するとか、時代背景とは違うがモニターなどの工夫で他の場所で起きていることを伝えるとか、はどうかとは思う。他の体験者ブログなどで“何度か行かないとわからない”とか、“追っかける演者を変えるとまた別の見方ができる”とかもあるので、再度トライはしてみたいのは本音。このアトラクションの個人的評価は5段階で3点。再体験してどこまで評価が上がるか、と “役者が隣で演技する斬新さ” の今後の展開に期待したい。

・【推しの子】パブリック・ビューイング

 街の中央広場“ゴールデンプラザ”で行われる、雑誌やTVで大人気となったマンガに登場するアイドルの推し活体験。実はこのアニメ全く知らなかったが、なにか体験してみたくて若い人たちの間で見よう見まねで腕を回したり踊ったりして少しだけ没入体験してみました。(知った人に見られたら、かなり恥ずかしかったであろう)これの評価はこのアニメを知らないので控えますが、知ってる人はかなり盛り上がれるでしょう(多分)。

・イマーシブ・ストーリーズ

 ヘンデルとグレーテルの童話について“ヘンデルとグレーテル版”と“魔女版”二つのルートで見れる。最初に若干空いていた“魔女版”を体験、なるほど、と感心。後で時間があったので“ヘンデルとグレーテル版”も体験。映像も含め美しく良くできていた。どちらかというと、最初に“ヘンデルとグレーテル版”を見てから“魔女版”を見た方が、“そうだったんだ“と頷き度は高くなるだろう。評価は4点、まずまず楽しめた。

・パーティー・フェスタ!

 【推しの子】と同じ広場で開催する音楽と踊りのライブショウ。少し疲れたので広場にあるレストランのテラス席でビールを飲みながら鑑賞。広場には円形のステージがあり、これを有効活用。1日2回開催されるお祭り的イベントは街を活気づけ、場所と人のココロを盛り上げる。評価は4点。

・ジャック・ザ・リッパ―

 連続殺人鬼が出没するロンドンの裏路地、という設定だが、いわゆる海外版お化け屋敷体験。但し、MAX8名のグループ全員でひとつのロープを握って歩く(これは決して走らないように、はぐれないように、との意図であろう)。我がチームはカップルや女子2人連れなど3組と私で7人、そして係の人から私が先頭を歩くよう命じられた。薄暗い通路を恐る恐るロープを持って歩く、次の路地、次の路地といく度に恐怖の瞬間が訪れる。そのたびにチームメンバーがキャーキャー言うのだが、リーダーの私は怖がってなどいられない。先頭を進み、所々で壁に違和感があれば“ちょっとここ、でてきそうだよ”と示唆してあげ、メンバーは脱落者なく無事出口まで到達するのであった。出口ではメンバー女子から“おとうさん、ありがとう”と感謝もされた。もし、このアトラクションがそれぞれ個別で歩くものであったら、ひとりおじさんとしてどうしていただろうと想像するとそれはそれである意味恐怖である。知らないひとたちと一緒にロープで繋がる絆体験は、私にとって恐怖体験以上に満足なものであり、いい思い出となった。
もちろん評価は5点満点。

・第五人格 イマーシブ・チェイス

 複数人1チームで協力して暗号解読しながら、ハンターの追撃をかわして脱出するゲーム感覚のアトラクション。確かによくできているとは思うが、元ネタのゲームを知らないのでルールが完全に把握できてなく、あっという間に終わってしまった。ここでは残念ながら、“ジャック・ザ・リッパ―”のようなチームの絆は生まれなかったし、“おとうさん、ありがとう“と感謝されることもなかった。人気のアトラクションのようですが、私的には評価3点。

・ザ・キャバレーナイト

 カジュアルレストラン“ザ・キャバレー”のステージで繰り広げられるエンタテイメント・ショー。ストリートから立見もできるが、運よく空いていたのでステージ横のかぶりつき席を一人分確保、ここでもビールをオーダー。楽器や女子・男子ダンサーたちの踊り、そして女子ボーカルの美声は最高、ステージ下まで演者が降りてきて会場を沸かす。最後にはキャバレーならではのスカートフリフリのフレンチカンカン、観客の飛び入りもあり、更に盛り上がりを見せる。楽しいステージでしたねぇ。評価は4点。

・フォルテヴィータ事件簿

 これは終日街全体のどこかで、役者さんたちと一般客とで引き起こす、ミニイベント的な事件の数々。ストリートを普通に歩いていると、軍人が一般客を整列させ号令かけたり、路地裏バーではオカマねえがカウンターでお笑いライブみたいなのやってたり、街角で歌手の卵が歌の練習してたり。ただし、それぞれが全体的なストーリーの中で流れとしてつながっている。このイベントというかアトラクションは特に自分のいる真横で何か始まる感が強く、いわばフラッシュモブ的な面白さがある。このパークコンセプトの代表的な体験が出来る企画であると感じた。自分としても楽しめたが、参加していたお客さんもそれを見ている友達や家族たちも一緒に楽しんでいる。楽しさの原点となる、この感じをもっと掘り下げて売りとしてPRすべきであろう。時間切れで夜6時からのエンディングまで見れなかったのは非常に残念。評価は満点の5点。

〇 まとめ

 森岡毅氏発の“新しいエンタテイメントのあり方“ として興味心をそそられたイマーシブ・シアター。個々のアトラクションで感動度合いはまちまちだったが、総じて満足でした。
“上から演技、下から見る”ではなくて、“真横で、目の前で始まる面白さ” はこれまでになく独特、一度体験してみる価値ありです。個々にはもっとこうしたら、とかの意見はありますが、まだまだ伸びしろがある娯楽であると体感、今後もまた楽しみです。役者さんと絡めるのも楽しいけど、知らないお客さん同士でうちとける、そんな志向も目指していいんじゃないかな、と個人的には思う。
大人向けかなと思い臨んだが、いやいや、家族連れも子供たちも結構ノリノリで楽しんでましたよ。

後日談ですが、友人とこんなとこに行ってきたと話したときに、“参加型はいいよね”という話から、実は古くから日本には参加型の娯楽はある、と。これって“盆踊り”に似てる、ということで落ち着きました。プロの役者さんがいるのは少し違うけど、”躊躇せず自分解放でノリノリで参加したら楽しめ度が更に深まる” だね、と振り返り納得していました。

最後までお読みいただき有難うございます。
                       



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