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ペットボトルの蓋はプルルァーダパーティへの招待状

私は奇抜な格好が好きなだけの者だった。

その日は海で拾いあげた投網を空色に染め上げた衣をまとっていた。海も空も好きだから。

だから私はいたって普通の者で、まさか後をつけられているとは思いもよらなかったのだ。

「あなたは変わった格好をしておりますな」

声をかけてきた老人は虹色のサングラスに大量の白髪ねぎを頭にぶちまけたような様相をしていた。杖は毛細血管の模型のような複雑な形状をし、もはや杖の役割を果たしておらぬように思われた。

「いきなり声をかけて申し訳ない。あなたの服装が気になり、つい後をつけてしまった」

後をつける理由にならない。私はただの奇抜な格好が好きなだけの者だ。見た目は怪しいが、真の怪しいやつに免疫はないのだ。恐ろしい。何だこの老人は。

「私はこういう者で、いまプルルァーダのパーティ帰りなのだよ」

突如、黒いカードを取り出し、さらさらとしたためる老人。鮮やかに渡されたカードには名前なのだろうが、抽象絵画のような線がのたくっている。

プルルァーダとは最新ファッションブランド。このような老人が入れる場所なのだろうか。格好はそれっぽいが…

カードをカバンに入れようとしたとき、つい手がもつれ握りしめていたペットボトルの蓋が転がり落ちた。つまみ上げた老人の目が かつ と見開き周囲に響き渡る哄笑。羞恥心と怒りで腹が熱い。

このペットボトルの蓋を集めると何か特別なことが起こるらしい。友人が目の色を変え集めているからあげようと思って握りしめていた。私のカバンは迷宮なので入れたら再び手に持てるか分からない。

老人から奪い返す。友人が欲しがっているものを握りしめて何が悪い!

「その空色の衣装。ペットボトルの蓋。私の眼に狂いはない。君には資格がある」

私の眼前に差し出された封筒。螺鈿に光る「PLUUUUXADA」の文字。

「招待しよう。プルルァーダの選ばれしパーティへ」



つけヒゲに憧れているのでつけヒゲ資金に充てたいです。購入の暁には最高のつけヒゲ写真を撮る所存です。