遠い空の向こうで ―まだ誰かが想っている―
冬の金曜日。居間のソファに家族で寄り添いながら、テレビで「アナと雪の女王」を観ていた。アナの声が部屋いっぱいに響く。その声には、優しさと強さが混ざっている。
CMになって、物語が途切れる。アナの声の主のことを考える。もう、この世界にはいない。この映画を一緒に見ることは、これからずっとできない。
静かになった部屋で、昔よく聴いていた歌の言葉を思い出す。
この言葉の意味が、ずっとわからなかった。でも今、少しだけわかる気がする。
生きている人のことは、いろんな想像ができる。今、どこかでこの映画を見ているかな。違う場所で、違うことをしているかな。そんなことを考えられる。
でも、もういない人のことは、そんな想像さえもできない。
物語に戻ると、アナが走り出す。その元気な姿を見ながら、胸の奥が少し痛んだ。
生きているってことは、誰かのことを想像できるということ。明日会えるかな。電話がかかってくるかな。同じ空を見上げているかな。そう考えることができる。
その想像さえも、できなくなってしまうこと。それが、本当の寂しさなのでは。
どこかで、あなたのことを想像している人がいるかもしれない。今はまだ見えなくても。
冬の夜は長い。でも空は、ゆっくりと明けていく。