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MOTORCYCLE ride2

新車は、慣らし運転が必要だ。二輪車であっても同様である。
アルバイトで稼いで自分で買ったバイクだったし、何よりもそのバイクが大好きだったから、大切に乗るために、自分なりに慣らし運転がてら、郊外へ単独ツーリングに行っていた。

ヤマハのSRX250という、一見すると125㏄の小型バイクにも見えるほどスリムなデザインが気に入って決めた。単気筒エンジンで取り扱いもしやすい。関東限定のイタリアンカラーがたまたま取り寄せできるとのことで、その珍しいカラーもお気に入りの要素だった。(ちなみに、関西限定カラーは黒と黄色、そう阪神タイガースカラー、、、)

免許取得からバイク購入まで、タケルさんにアドバイスをもらったりもしたが、基本的には全部自分で調べて、自分で決めた。そんな風にして初めての大きな買い物(ローンを組むのも初めてだ)をして、手続きから全部できたのは自信になったし、何よりも世界がグーンと広がった。
次の休みの日にはどこへ行こうかと、地図でルート探しをするところから楽しくてたまらなかった。

親には全て事後報告である。
中型のバイクを買った(納車まで間があった)と言っても、何のことか理解できず、スクーターの大きなやつか?と聞かれた。両親にとっては未知の世界だったのだ。あっけにとられている親を尻目に、外に外に解放されていくのは痛快だった。

大阪市郊外のDIY大型店に転職したのは、そんな頃だった。
自宅から電車通勤すると、直接目的地に向かう路線がなく、ぐるっと回り道することになりかなりの時間を要した。その上働き出してみると、棚変と言ってディスプレイの変更や、棚卸しなど営業時間後に行う業務が多く、終電に間に合わないこともあった。今なら立派なブラックなのだろうが、当時はそんなものだったし、残業手当もあったので進んで残業する人も多かった。
一応バイク通勤は禁止されていたが、郊外なこともあり見逃されているようだったので、バイク通勤を始めた。片道20㎞の距離である。

一応禁止なこともあって、バイクを堂々と店舗の駐車場にも置けず、周囲をウロウロして駅前に止めていた。
すると休憩室で自分のバイクが話題になっているのを聞いた。珍しい出たばかりの車種だったことで、かなり目立っていたらしい。思わず、自分のバイクであることを告げると、その話をしている全員が一気に私に注目した。

正社員は全体の半分以下で、役職の人でも40代。もう残りの職員は嘱託社員と契約社員(今で言う非正規社員ということになるだろう)で20代から30代が圧倒多数の若い職場だった。
私は契約で、同じ契約の中にバイク乗りが10人程おり、サークル状態になっていたのだ。
あれこれ質問攻めになり、片道20㎞の通勤をしていることを知ると、おっコイツなかなかやるのではないか?という空気になり、ツーリングに誘われることとなった。それから、バイクを比較的安全に留めておける場所や、裏道情報など教えてもらったのだ。このメンバーの中に、師匠がいた。

一級整備士免許持ち、つい最近までレースに参戦していたが、お金が続かなくなってやめた、といっていた。そのバイク乗りグループのリーダー的存在だった。
バイクに乗るからには、たとえ女子であろうとも、基本的な構造ぐらいは理解するべき、最低限のメンテナンスは自分で出来るようにしておけ、コーナーのラインどりから、回転数とはなんぞやまで、丁寧に教えてくれるのである。
それは、最近で言うマウンティング的なものではなく、本当にバイクを愛するがゆえに、知識と技術を持って楽しんで欲しいという気持ちからだと思う。なので、まさにバイクの師匠であったのだ。

女子にありがちな、えーよくわかんないし?やってー?みたいな丸投げ女子は、却下である。あからさまに態度には出さないが、何だかんだ上手く逃げて相手にしない。
ある程度自分で調べたり行動に移したりしている人には、必要なことだけアドバイスしてくれる。
初心者ながらも慣らし運転ソロツーリングまで行っていた私は合格だったらしい。

その職場全体では10人程がバイク乗りだったが、シフト制の職場なので、いつも全員が希望休をとれるわけではない。基本は5〜6人のメンバーで女子は私を含めて2人だった。それから月1ペースでツーリングへ行くようになった。

また、バイク通勤では、深夜の帰宅時に、タイムアタックするのが、ちょっとしたブームだった。良くないことではあるが、とにかくすっ飛ばして帰るのである。深夜で空いている上に信号がスムーズにいくと1時間を切って到着するのだ。
一度まだ陽のある時間帯に同じ感覚ですっ飛ばしていたら、スピード違反で捕まってしまった。当時の帰路周辺の皆様方、申し訳ありませんでした。

往復40kmの通勤とツーリングで、あっという間に走行距離は8000kmを越えた。


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