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ULTRA誕生前夜 その1

どうも〜、レッツのヘルパー事業部アルス・ノヴァULTRAのさまよえるチーフ、ササキです。 ぼくがいまのようにパーソナルアシスタンス*的な支援を志向するようになったのには、その「種」となったようなできごとがいくつかある。折にふれて、話してきたつもりだけど、ちゃんと形に残したことはなかったなと、先日人と話していて気付いたので、そのうちのひとつのことを今日は書こうと思います。
*パーソナルアシスタンスとは、障害当事者が主導(「支援を受けた主導」も含む)してアシスタントを育てながら、生活の支援を利用していくこと。

それは2017年のはじめ、レッツが浜松の街なかで期間限定のオルタナティブスペースを開いた〈「表現未満、」実験室〉でのことでした。 実験室で開催されたとあるトークイベントの客席に、たけさんこと久保田壮さんが介助者とともにいました。精確には、観客ではあるけれど、客席もスピーカーの座る席も縦横無尽に動きまわっていた。もちろん、いつものように入れ物の石を鳴らしながら。 そのときたけさんの介助者をしていたのは、ヘルパー事業所ぴあねっと浜松の吉田さん。ぼくはトークの内容もそっちのけに、吉田さんとたけさんの織りなすセッションに完全に魅了されていた。 たけさんが一参加者として、そこにいる。そのことを吉田さんは絶妙なさじ加減で介添えしていたのだ。

記憶をたどって、具体的に描写してみよう。たけさんは基本的にひとつところに留まることをしないで一人で好きに動いている。吉田さんはそれを離れたところから、自身も一観客のような佇まいで、見守っている。スピーカーに向けられる他の人の視線を、たけさんの移動がさえぎる。吉田さんは動かない。たけさんが他の参加者に触れて、触れられた人はたけさんが横を通れるように身をかわす。吉田さんはそれを見つつ、じっと動かない。そんなとき、たけさんが参加者の鞄にガッと手をかけようとする。すると、吉田さんはサッと動いてたけさんと鞄の間に自分のからだを差しはさむようにいれて、たけさんが鞄を荒らしてしまうことを防ぎ、また離れていく。定期的な水分補給も欠かせない。たけさんの口元から、涎がきらりと光って垂れそうになれば、ささっと近づいて拭きさる。たけさんがちょっと飽きて激しくなってきたら、絶妙にボリュームをコントロールしながら小型のキーボードでメロディを弾いて気分を転換する。 たけさんがパフォーマーとして場をかきまわして生まれる混沌があり(そのような仕方で彼は議論に参加している)、けれどそれによって場が壊れきってしまうのでもないような線を、たけさんと吉田さんとが描いている様は、とてもダンシー(dancy)だった。 音楽好きの方には、そのときぼくには吉田さんがたけさんのローディーのように見えたといえば、その感じがより伝わるだろうか。

たけさんとどのような関係を築くのかということだけではなくて、彼と他者とがいろいろな関係を築くことを、アシストする。そんな支援のあり方があるんだということを、実感するような出来事だった。


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