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久保田翠が考えるシリーズ

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NPO法人クリエイティブサポートレッツ代表であり、くぼたたけしの母でもある久保田翠が考えるシリーズ。「家族」や「自立」、「生活」について日々の想いを綴ります。
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2019年7月の記事一覧

たけしと生活研究会2~正解を求めないいいとこどりの暮らし方

2019年07月27日02:59  久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 7月22日 1回目は東京の風雷社中の中村さん。風雷社中が運営するトランジットヤードには重度の知的障害ある自閉症のゲンちゃんが、ヘルパーさんと一緒に生活している。その問題や、課題、日常風景を切り取ったドキュメンタリー上映から始まった。 とても刺激的だった。たくさんの示唆にあふれる言葉や矜持があった。  レッツが障害福祉施設アルス・ノヴァを立ち上げる少し前、障害者の法律が大きく変わった。「措置

たけしと生活研究会

2019年07月26日18:24 久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 「親なき後をぶっ壊せ」というブログ文章を書いたのはもう1年ほど前になる。 20歳を過ぎた重度障害者の我が息子、たけしとの生活で感じてきたことを綴っている。 二十歳を過ぎた青年が親と生活したいだろうか(多分したくはないだろう。私だっていやだ) 家族は「自分に代わる支援者」を望む。しかし、そもそも家族に代わる支援者なんているのだろうか。それよりも「ともだち」でいいじゃないか。 介護も、子育ても、障

たけしの自立~家族~

2019年05月31日 久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 3月17日、彼岸初日のうららかな春の日に、夫が亡くなった。 2年ほど浜松を離れ、親族のいる静岡で療養していたが、急に体調を崩し(心不全)帰らぬ人となってしまった。 夫は、2000年にレッツを設立してから、陰になり、日向になり支えてくれた。 今のレッツがあるのも、2017年に私が芸術選奨文部科学大臣賞といった大きな賞を受けることができたのも、夫の支えがあったからだ。 そして戦友だった。 夫は常にたけし

たけしの金髪~自立の姿~

2019年02月28日 久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 先日たけしが金髪になった。 3か月たけし文化センター連尺町に滞在している友人テンギョウ・クラさんとスタッフの尾張さんから「たけし金髪にしていいですか」と。 金髪か。 「どうして?」って聞くと、 「きっと似合うと思うんですよね」と。 その後、数日がたったある日、たけしの髪は金髪になっていた! しかし、何だからわからないけれど、悲しい気持ちになった。 それは、「本人の意思が確認できていない」と思えてしまう

家族の人権はどこいった?!

2018年07月25日 久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 先日、兵庫の「兵庫県知的障害者施設家族会連合会」に読んでいただきお話視させていただいた。 きっかけは朝日新聞の鷲田清一氏の「折々のことば」に掲載いただいたことだった。 これを読まれた代表の方が、HPで調べてご連絡してくださった。 折々のことばから(2018年4月3日) 【「本人が大切にしていることを、とるに足らないことと一方的に判断しないで、この行為こそが文化創造の軸であると考えています」 (久保田翠

重度の障害者の「日常」を晒す意味

2018年06月04日12:01  久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 6月3日、浜松駅南口にあるサザンクロス商店街での路上演劇祭で、「表現未満、実行室」を行なった。 ここ何年かお誘いを受けて毎年参加している。 例年、何かしら、ドラムや楽器を持ち込んで即興演奏を披露したり。それなりの「舞台」を少なからず用意していたように思う。 しかし今年は日曜日ということもあって利用者さんが少なくとくに動きがある人がほとんどいない。スタッフも3人。 3人で話し合っていたみたい

「親亡き後をぶっ壊せ」その2

久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 私が「親亡き後」と言うことば使いが嫌いなのは、この言葉の前提条件として、「親が死ぬまで子供の面倒を見る」と言う含みを感じるからです。 親が亡くなってしまうか、あるいは大きな事故(たとえば離婚、病気、など面倒が見れなくなった時)が起こった時のために、親に代わる擁護者を作らなければいけないといった、切羽詰まった感じを受けます。 その切実さは、福祉関係者や心ある人々の多くの共感を得ると共に、施設やグループホーム等を作る起動力になる

「親亡き後をぶっ壊せ」その1

2018年05月04日 久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 障害者の世界ではよく「親亡き後」と言うことばが使われます。 「親亡き後どうするか?」 は親の果てしないテーマです。 つまり、親が障害の子供の援助をできなくなった時、「この子はどうなるのだろう?」という不安や、「そうなっても大丈夫なようにしていく」といった決意など、親にとってはかなり重い言葉として捉えられています。 私はこの言葉が嫌いです。 まず、親亡き後に「困るだろう」と思っているのは誰なのか? こ

母親の生存権と文化権

2017年11月12日 久保田翠ブログ「あなたのありのままがいい」から 10月30日、ハート・ネットTVブレイクスルー放映されました。 今回の取材や、番組を見ていてつくづく考えたことがある。 レッツは確かに、たけしの問題や障害者の問題を、私なりに解決したいという思いからはじまり、それが社会化されて来ている。 しかし、20歳を超えて、親とは違う人生を歩いて行ってほしいと望むその背景には、私自身が、そこから開放されたいという思いが強くなっていることに気がついた。 たけしが3