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Googleの独占禁止法違反訴訟の訴状を読む【広告編】 5

この節では、パブリッシャー広告サーバの一般的な機能を説明しつつ、GoogleがDoubleClick買収後、その圧倒的なマーケットシェアを背景に、如何にパブリッシャーにパブリッシャー広告サーバ経由で重い課金を課していったのかを解説している。

VI. 関連市場とGoogleの市場支配力

A. パブリッシャーの在庫管理: パブリッシャー広告サーバ

1. 米国におけるパブリッシャー広告サーバは、関連する反トラスト市場である。

61. 米国におけるWebディスプレイ在庫の為のパブリッシャー広告サーバは、関連する独占禁止法上の製品市場である。
パブリッシャー広告サーバは在庫管理システムで、パブリッシャーが彼らのオンラインディスプレイ広告 ― Webコンテンツと一緒に表示される画像ベースのグラフィカルな広告 ― を全体的に管理する為に使用する。
システムは次のような機能を提供する。
(1) パブリッシャーの直接販売をサポートする為の予約ベースの販売技術
(2)パブリッシャーがどの在庫が販売可能となるかを判断する為の在庫予測技術
(3)パブリッシャーの営業チームが直接販売したキャンペーンの要件入力
(4)直接および間接的な販売チャネルの共同管理
(5)広告在庫パフォーマンスのレポート生成
(6)パブリッシャーの直接キャンペーンの為の請求書発行機能
(7)歩留まり管理技術
62. ほとんどのパブリッシャーは、1つのプラットフォーム、1つの広告サーバを使用して、全てのWebディスプレイ在庫を総合的に管理している。
パブリッシャーが複数種類の在庫(Webディスプレイ、アプリ内、動画など)を販売している場合、ディスプレイ在庫には1つの広告サーバ製品を使用し、アプリ内や動画の在庫には2つ目の広告サーバを使用したり、2つ以上のフォーマットを管理する広告サーバを使用したりする事がある。
パブリッシャーが同じフォーマットに複数の広告サーバを使用すると、広告サーバ間の競合を解決しなければならず、広告サーバの在庫管理機能の意味がなくなってしまう。
63. パブリッシャー広告サーバはユニークな存在だ。パブリッシャー広告サーバは、大規模な広告主や小規模な広告主向けの取引所ツールやネットワークツール、広告購入ツールとは互換性がない。
これらのツールは、パブリッシャーの直接販売チャネルを管理しないし、パブリッシャーが総合的に在庫を管理し収益を最適化するために必要なレポート機能、請求書作成機能、予測機能を提供するものでもない。
64. Google は、DoubleClick の買収を求める際に、広告サーバと広告市場の非互換性に関して、連邦取引委員会に対して明示的な表明を行った。
Google は、広告サーバと広告ネットワークの互換性について●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●だと述べた。
具体的に、「AdSense」に関連して、当時「DFP」と呼ばれていた、その広告サーバについて、Googleは、以下のように表明した。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。
言い換えると、Googleは他社のパブリッシャー広告サーバは他のパブリッシャーの広告サーバはGoogleの広告サーバの代替となれるが、広告ネットワークや他の広告市場についてはそうではない事をGoogleはすでに認識しているのだ。
65. パブリッシャー広告サーバの顧客は、直接的な販売チャネルと間接的な販売チャネルの両方を管理する必要がある大規模なパブリッシャーで、例えば、CBS、Spotify、Time、ESPN、メジャーリーグベースボール、Walmart、Weather.com、The New York Times、The Wall Street Journal、eBay、NBC、Pandora、Trip Advisor、NPR、Buzzfeedなどのオンラインパブリッシャーが含まれている。
66. パブリッシャーディスプレイ広告サーバ製品市場に関しては、関連する地理的市場は米国である。
他の国で利用可能なパブリッシャー広告サーバは、米国で利用可能な広告サーバの合理的な代替品ではない。
したがって、米国が関連する地理的市場となる。

2.Googleはパブリッシャー広告サーバ市場で独占力を持っている。

67. 米国のパブリッシャー向けディスプレイ広告サーバ市場では、Googleが独占力を持っている。
この市場におけるGoogleの独占力は、その高い市場シェアによって確認されている。
刊行されたレポートによると、大規模パブリッシャーの90%以上がGoogleのパブリッシャー広告サーバのGoogle Ad Manager(GAM、以前はDFPという名前で知られていた)を使っている。
また、Googleの内部文書では、GAMは、2018年第3四半期の米国内での全オンラインディスプレイ広告のインプレッションの大部分―●●パーセント―を占めている。
68. Google自身の文書によると、少なくとも10年間、ディスプレイ在庫のパブリッシャー広告サーバ市場で一貫して独占的な地位を維持してきた事が確認されている。
2012年にはGoogleはDoubleClickを買収し、米国内の大規模オンラインパブリッシャーの●●パーセントがGoogleの広告サーバを使用しているとGoogleは見積もっていた。
それ以来、Googleの最も近い競合他社は市場から完全に撤退したか、あるいはごくわずかな市場シェアに追いやられている。
69. パブリッシャー広告配信市場におけるGoogleの独占的な力は、直接的な証拠によってさらに確認されている。
Googleは、パブリッシャー広告サーバ市場において、競争力のない料金を請求し、品質を低下させており、いかなる競争上の拘束力も存在しない。
例えば、パブリッシャーの間接的な販売チャネルを管理する一環として、パブリッシャー広告サーバは、取引所やネットワークに在庫を流すための手数料をパブリッシャーに請求することができる。
パブリッシャーがGoogle 以外の取引所に在庫を流す際にどれくらい課金するかを決める際に、Google は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、市場が何を負担するかなどの競争上の制約を考慮していなかった。
その上で、Googleの広告サーバは、広告ネットワークにパブリッシャーの在庫を流ために総取引額の●●パーセントの手数料を課金する。
パブリッシャーが在庫を取引所やネットワークに流す際に、競合するヘッダー入札と呼ばれる製品を使う場合は、パブリッシャーは取引所に流す為の手数料を一切支払う事はない。
広告サーバに対するGoogleの独占的な力は、Googleがそのパブリッシャー広告サーバの品質を低下させることができ、また実際に行っている事でも示されている。
その例は数多くあり、本訴状全体で取り上げている。
その一例として、Googleは、パブリッシャーが広告取引所や広告購入ツールごとに異なる下限価格を設定することを禁止し、パブリッシャーが在庫の利益を最大化する能力を低下させた。
Googleの広告サーバの価格や品質に対するパブリッシャーの不満が広まっているにもかかわらず、Googleは広告配信市場の優位性を失うことはなかった。

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