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Googleの独占禁止法違反訴訟の訴状を読む【広告編】 4

この節では、Googleがどのように不正に広告購入ツールからの入札のプロセスを見えないようにしつつ、Googleに有利になるように処理しているのか、具体的な説明が書かれている。

3. 大小の広告主の為の広告購入ツール

53. パブリッシャーが広告取引所で在庫を販売する為に広告サーバに依存しているのと同じように、広告主は、自社の利益の代理人として、専門の仲介者、広告購入ツールを使用している。
大規模な広告主は、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)と呼ばれる広告購入ツールを使い、中小企業は機能縮小版の同様のものを利用する。
Googleはそれらを、小規模な広告主は「ファンドマネージャーがあなたのために銘柄を選ぶ」、大規模な広告主は「銘柄を自分で選ぶのにETradeを使用する」という金融市場における証券会社の購入ツールに類似させた。
54. パブリッシャーは通常1台の広告サーバしか使わないのと同様に、小規模な広告主は、複数の取引所やネットワークにまたがって購入を最適化する為に、一度に1つの仲介業者を使用する傾向がある。
広告購入ツールは、広告主が購入の意思決定に必要なパラメータを設定することができる。
これには、ターゲットとしたいユーザに関する詳細や、特定の種類のディスプレイ在庫に対して提出・支払い可能な最大入札額などが含まれる。
広告主に代わって、広告購入ツールは、これらのパラメータを使用して、最低コストで広告枠を獲得する為に、取引所やネットワークの広告スペースに自動的に入札する。
Trade Deskを含むいくつかの大企業向け購入ツールは、利益相反を最小限に抑えて競争し、取引の広告主側のみを代理する。
55. 小規模な広告主のために作られた広告購入ツールは、デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)と呼ばれる大規模な広告主のために設計された広告購入ツールと入れ替わることはほとんどない。
この2つの広告購入ツールは、提供する機能と最低出稿額の両方が異なる。
大規模な広告主向けに作られたツールは、複雑な入札や取引のオプションを提供しているが、同じような洗練された機能を持たない小規模な広告主には適していない。
実際、大規模広告主向けのツールは複雑であるため、ツール自体は実際の広告主(例えば、Ford)ではなく、広告主の専門の広告購入チーム(例えば、広告代理店や代理店の「トレーディングデスク」と呼ばれる専門部署)が使用・管理していることが多い。
そのため、広告購入ツールの種類によって、販売される価格も異なる。
大規模な広告主向けに作られたDSPツールは、通常、月額1万ドル以上の高額な最低支出額のコミットメントが必要だが、小規模な広告主向けの広告購入ツールは、わずか数ドルで始めることができる。
例えば、アマゾンの大規模広告主向けエンタープライズ広告購入ツール(=DSP)では、月額35,000ドル以上のコミットメントが必要だが、Googleの小規模広告主向け購入ツール「Google Ads」では、月額の最低支出額は0ドルだ。

図6どのようにして小規模な広告主はGoogle Adsの購入ツールを彼らの入札で使えるか

図6 どのようにして小規模な広告主はGoogle Adsの購入ツールを彼らの入札で使えるか

56. ユーザがパブリッシャーのWebサイトを訪れると、広告サーバはパブリッシャーの利用可能なインプレッションを、ユーザID、広告枠のパラメータ、価格設定に関するルールなどのインプレッションに関する情報とともに、取引所に流すことができる。
その後、各取引所は「入札リクエスト」を、その取引所で入札できる「席」を持っている広告主の仲介役を務める広告購入ツールに送る。この入札リクエストには、入札対象のインプレッションに関する情報も含まれており、広告主が「入札レスポンス」を返すまでの時間が設定されている。
これは「タイムアウト」と呼ばれている。このタイムアウトの時間内に、各広告購入ツールは、入札要求に含まれる情報を解読し、ユーザの個人情報を収集し、広告主に代わって入札するための適切な価格を決定し、時間切れになる前に入札応答を取引所に返さなければならない。
設定された時間が経過すると、各取引所はオークションを終了し、遅れてきた入札を除外して、勝者を選ぶ。
ユーザ広告サーバは、最も高い入札額で落札された広告を選択し、ページの読み込みが完了する前に、ユーザのページに表示する。
ユーザは、自分が読んでいるコンテンツの隣にディスプレイ広告が表示されるだけだ。
このリアルタイムオークションは、インターネットを利用している何百万人ものアメリカ人にとって、毎日毎分行われている。

図7どのようにして取引所は広告主の購入ツールからの入札を促すか

図7 どのようにして取引所は広告主の購入ツールからの入札を促すか

57. 取引所のオークションで効果的に競争するためには、広告購入ツールは、各インプレッションに関連するユーザの特徴(例えば、ジョン・コナーを対象としたインプレッションや、オートバイが好きなユーザを対象としたインプレッション)を識別し、タイムアウトが切れる前に取引所に入札を返すことができなければならない。
Googleのような大規模な広告取引所では、入札者の一部に情報面での優位性(ユーザに関するより確かな情報など)やスピード面での優位性(タイムアウト時間の延長など)を与えることで、オークションに参加する入札者間の競争を排除することができる。
58. Googleは、広告主向けの最大の買い手側仲介業を運営している。
つまり小規模と大規模の広告主向けの広告購入ツールである。
トヨタやネスレのような大規模な広告主を対象としたGoogleの大企業向け購入ツールはDV360と呼ばれ、GoogleがDSPのInvite Mediaを買収して構築したものだ。
小規模広告主向けのGoogleの広告購入ツールは「Google Ads」と呼ばれ、(Googleが言うには)●●●●●●●●●●●●●●●●で、DV360は広告主に取引所から在庫を購入するために●●●パーセントのコミッションを課金し、Google Adsは小規模の広告主にGoogleの取引所から在庫を購入する際、更に高く非公開の●●パーセントのコミッションを課金した。
59. Googleの幹部は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、彼らは究極的には取引所を所有しGoogleの買い手側の仲介業者に優先的なアクセス権を付与する事でGoogleに賛同して不正を行う事を選んだと認めた。
Googleの取引所は、広告主に代わって入札を行う際にGoogle AdsとDV360に情報とスピードの利点を与えた。
このような優先的なアクセス権は、なぜGoogleの広告購入ツールがGoogleが主導する取引所で開催されるオークションで圧倒的な大多数―●●パーセント以上―の落札かを説明する手助けになる。
60. Google の広告購入仲介業者は、金融市場のファンドマネージャーやブローカーとは異なり、しかも顧客の利益のために行動することはない。
Google は、小規模でよく理解していない広告主を、理解するのが非常に困難な複雑な裁定取引の対象としている。
具体的には、Google の取引所で広告主に代わって入札を行う際、Google は広告主の入札額を操作または調整することができる。
また、Googleは広告主の入札を2つのオークションで処理し、2つのオークション間のスプレッドを維持し、広告枠がGoogleの取引所で実際に決済された価格を広告主に開示しない。
Googleはこのことを、複数の文書に分かれた細かい文字で開示している。Googleは最終的に、広告主の入札を複数の市場に「自動的に」振り分ける理由を説明しているが、その言葉は誤解を招くものだ。
「真夏に蝶々狩りに行くなら、蝶々を捕まえる網が大きければ大きいほど、より多くの蝶々を捕まえることができます」
しかしGoogleは、誰が狩るのかを明確にしていない。

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