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民主主義の回復力(The Economist 2020年11月26日版)

The Economist 2020年11月26日版から、「Democracy contains the seeds of its own recovery」の記事を取り上げてみたい。内容は「民主主義の回復」についてだ。

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記事の簡単な要約

11月に始まったアメリカの大統領選挙は、ようやく決着しそうである。今回のアメリカの大統領選挙では、「民主主義の後退」というメッセージが各所で出回った。

これはアメリカだけのことではない。インドのヒンドゥー教第一主義を進めるモディ氏や、香港の一国二制度を認めない中国政権の動きを見ると、「民主主義の後退」を感じざるを得ない。

「民主主義において最も脅威となるものは何か?」という問いに対して、本記事はクーデターではなく現政権であると指摘する。いわゆるポピュリストと言われるような指導者が、民主主義を後退させているのだ。

そして今回考えたことは、アイデンティティー政治である。従来の民主主義では、様々な議論を繰り返し着地点を見出すことができた。しかし、世界のポピュリストらは、アイデンティティーに訴えかける。宗教や人種といったアイデンティティーに関わるものは固有で変わるものではない。つまり、民主主義でそれらのアイデンティティーに関する議論をしたところで、着地点が見い出せないのだ。

人々が選挙に興味を持つことは大変良いことだ。日本は投票率が低いということに比べて、アメリカの大統領選挙の投票率は過去最高だ。ただ、この投票の裏には、自らのアイデンティティーを裏切りたくないという強い思いが入り込んでいる。本来民主主義とは、ここまで火がつくべきものなのだろうか。

結果として、国内はアイデンティティー別に分断していき、自分とアイデンティティーが異なる人間のことを受け入れられないどころか、恐怖心さえ覚えるようになってしまうのだ。

皮肉なことに、本来は社会問題を解決するために政治があるのに、社会問題を見事に作り上げているのが、現政治と言えるのだ。

さて、民主主義が回復するにはどうすれば良いのか。記事によると、民主主義には2つの強みがある。1つ目は、「やり直し」が効くことだ。選挙にいくら不正があったとしても、それを民意によって覆せる可能性はいつでもある。2つ目は、「適応力」である。どういう人々が、どの政権を支持するかは、時代や状況によってかなり変化していくのだ。

民主主義を作ったわけではない我々が、これだけ民主主義を求めるのはなぜなのだろうか。命がけで独裁者に対して訴えるものや、自らが収監される覚悟でデモを続ける若者…。こういう熱意をもって投票するということが、大切なのである。

自身の見解

これだけたくさんの考えを持った人たちが存在すると、議論をしたところでなかなかお互いの満足いく結果というのは出せないかもしれない。ただ、このなかなか互いの満足いく結果にならないところに民主主義の良さもある。

アイデンティティー政治が台頭することで、異なるバックグラウンド同士で尊敬し合うというのが希薄になってしまうかもしれない。そうなると、マイノリティーの意見も取り入れる余地が減ってしまう。

本来は、マイノリティーであっても自分の意見を堂々と言えることが民主主義であったのに、それが土台から崩れかけている。

おわりに

個人的には、民主主義がすべてだとは思わないし、絶対正しいとも思わない。ただ、民主主義について考えることやこれからの政治について考えることは止めてはいけないと感じる。

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