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電車の広告とモダンタイムズ

 チャールズ・チャップリンという人が主演のモダンタイムズという映画をご存知でしょうか?

この世に車という乗り物が生まれてしばらく経ったアメリカが舞台。

馬に代わる移動手段を得た人々は、この干し草の要らない乗り物に感動し、瞬く間に車は普及していきます。

街には工場が乱立、大量生産が押し進められます。

そこで求められたのは、均一な品質の維持でした。

そのためには決まった場所に決まった部品を間違いなく取り付ける仕組みが必要です。そこで工場では取り付ける部品を順番に並べ、作業員が部品を振られた番号通りに取り付ければ、車が組み上がっていきました。

伸びる一方の需要に押され、作業員の賃金も順調に伸びていきます。

しかし、日がな一日順番通りに部品を組み付けるだけの毎日を過ごしていた作業員は、ある日仕事が終わってもボルトを締める手の動きが止まらなくなり、気がついたら機械のようにしか身体が動かなくなっていた。

みたいな話です。

僕はこの映画の作業員が機械のようになってしまう部分を大学の授業で見ました。アメリカの自動車産業発達に関する授業だったと思います。

当時は「毎日同じこと繰り返していたらそりゃそうなるよな」ぐらいしか考えず、ほとんど忘れていました。

先日、電車に乗ってぼんやり視線を上げると「〜大学に合格した〜メソッド」という学習塾や「〜資格に一発合格!」と書かれた予備校の車内広告が目に入りました。そして偶然、その広告の下で参考書を食い入るように読む高校生らしき制服姿がありました。僕の向かいに座っていた男性は膝の上でノートパソコンを叩いていました。

その時なぜか、大学時代に見たボルトから手が離れなくなったチャップリンの姿を思い出しました。

参考書やパソコンがボルトに見えました。

現代は、映画の時代と比べれば格段に便利な世の中です。

しかし、うまく言えないけど、何かとてもまずいことが起きている気がしました。

いい学校に行って、いい会社に入って、いい資格をとって(他人と比べた時の)自分の市場価値を上げて、上げて、上げて.......

ある日「自分は何をやっているんだろう?」ってなる人がいる理由ってこんなところにあるんじゃないでしょうか。



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