思い出の中の桜は
僕はそろそろ結婚する。
今度のお盆休みで彼女を家族に紹介する。
名古屋で同棲する家を探している。同棲後には籍を入れる。年明けには式を挙げるだろう。
結婚
言葉が重いようで軽いような、けれどもやっぱり重く。結婚や恋愛観を語りあった高校生の僕たちには決して理解することができない、いざ目前に来なければ分からないものもあると知る。
この人でいいのか、と。
よぎる思いは深く心に沈む。
と言っても、「この人以外」として人生史に登場する女性はあと一人しかいないのだけれど。
大学の頃に2ヶ月だけ付き合った女の子を、一生引きずっている。
青葉が色めく6月に付き合い、夏の入口で別れた。
たった2ヶ月かと言われると、本当にそうなのだけれど。なぜだか心がいつまでも焦がれてしまう。
今でも愛しているだとか、そういった話ではなくて。時たま振り返る人生史の、十八の項のたった2頁が放つ色鮮やかな輝きが、ずっとずっとまぶたの裏に残っているだけだ。
過去は美化されているのだと分かっている。そう分かっている。
思い出の中の桜は、いつまでも満開に咲き誇るように。過去は美化されるから美しいのだから。
アルバムは開くことなく、そっと閉まっておこうと思う。
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