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【8月】鹿島アントラーズ定例報告

ーここはとある路地裏にある秘密結社。そこでは今日も月一での定例報告の会議が行われているのでした…

7月の定例報告はこちら

定例報告

ボス
では、今月も定例会議を始めていこうと思う。特派員、今月の鹿島アントラーズについての報告をよろしく頼む。

特派員
はい、まず最初に今月の試合結果と主なトピックスをご覧ください。

鹿島アントラーズ 8月の試合結果
・8/1 J1-8 大分戦(A) ○4-1
・8/5 YLC-2 川崎F戦(H) ●2-3
・8/8 J1-9 鳥栖戦(H) ○2-0
・8/12 YLC-3 清水戦(A) ○3-2
・8/16 J1-10 神戸戦(H) △2-2
・8/19 J1-11 横浜FC戦(A) ●0-1
・8/23 J1-12 G大阪戦(H) △1-1
・8/26 J1-26 FC東京戦(A) ○2-1
・8/29 J1-13 柏戦(A) ○3-2
鹿島アントラーズ 8月の主なトピックス
・内田篤人が現役引退
・佐々木翔悟がいわてグルージャ盛岡に期限付き移籍
・広瀬陸斗がG大阪戦で全治2か月の負傷
・JリーグYBCルヴァンカップはグループステージで敗退
・エヴェラウドが大分戦でハットトリック達成
・荒木遼太郎がリーグ戦初ゴール
・新アパレルブランド「F.D.」立ち上げ
・収容人数上限5000人は9月末まで継続予定

ボス
内田の引退、ルヴァンカップの敗退と悲しい知らせもあったが、リーグ戦は今月4勝2分1敗。現在暫定9位か…。ふむ、先月と比べて大分成績が上がってきたな。

特派員
はい、まだまだ目指す場所には遠いですが、結果がまずまずついてくるようになりました。チームとしての成長も感じられます。

浮上の理由

ボス
では、その成長してきたという部分を聞かせてもらおうか。

特派員
まず、スタイルが浸透してきたのが何より大きいかと。過密日程などで体力的に厳しかったり、メンバーを入れ替えたりする部分もあるので、理想形はもう少し異なるのかもしれませんが、チーム全体からこういうサッカーがしたいという姿勢、局面局面でこういうプレーを狙っているんだという意思がピッチからはかなり見えてくるようになりました。

ボス
もう少し具体的に聞かせてくれたまえ。

特派員
まずは何といってもビルドアップ、後方からのボールの組み立てでしょう。キーパーに沖悠哉や山田大樹といった足元の技術に長けた選手を起用し始めたのもあると思いますが、大分状況に応じた正しい位置取りが取れるようになり、陣形を整えながらボールを前に運べるようになってきました。

ボス
そうなると、何が良いんだ?

特派員
前線の選手にボールを扱うスペースと時間が与えられるようになりました。シュートをするにしても、ドリブルを仕掛けるにしても、パスを出すにしても、ある程度の余裕がないとそのプレーの成功率は下がってしまいます。これは、プレッシングにおいても同様のことが言えます。

ボス
どういうことだね?

特派員
プレッシングは単独でいってもあまり成功率は高くない、というのはお分かりいただけますか?せっかくボールを奪いに行っても、パスやドリブルで逃げられてしまえば意味がないですからね。ところが、その逃げた先にもプレッシングが掛かっているとどうでしょう。相手はまたそれを回避しなければなりません。次に逃げられれば、またそこにもプレッシングを掛ける。この連続の末にボールを奪い取る。それがプレッシングの有効な掛け方です。

ボス
ふむ。

特派員
つまり、プレッシングで重要なのは、1人目が行った後に2人目が行ける準備が出来ているか、ということです。そのためには準備が出来る位置にいる必要があります。1人目と2人目が20メートルも30メートルも離れていては、当然連動することなんて出来ませんからね。だからこそ、ボールを持っているうちにプレスを掛けられる準備をしておいた方がいい。なおかつ、それがボールを受けてもプレー出来る余裕のある位置だとより有意義になる。ビルドアップはそのために行う、という意識が鹿島では強いですね。

ボス
なるほど、ビルドアップは次のプレーへの準備という意味合いも大きい訳か。そう考えると、ビルドアップが上手くいきだしたから、連動性が上がってチームとしての戦いも良くなってきた、という流れが成り立ってくるな。

特派員
はい、自分たちで次のプレーが選択できるという状況ならば、試合の主導権も掴みやすくなりますからね。プレッシングも連戦の影響で体力的に難しい部分もありますが、仕掛ける時はレオ・シルバや三竿健斗といったボール奪取力のあるボランチのところで奪い取れるように追い込んでいく、という形がかなり意識付けられているように思えます。

ボス
個々の選手についてはどう思う?

特派員
新加入選手を中心に、かなり調子が上がってきましたね。7月の段階では広瀬陸斗のフィット具合が目立っていましたが、8月だけで6ゴールを奪ったエヴェラウドを筆頭に、移籍後初ゴールを奪ったファン・アラーノや和泉竜司もかなり戦力として重要な存在になりつつありますし、永戸勝也も柏戦で初アシストを記録するなど、キックの質がかなり上がってきました。

ボス
うむ、新しい環境で慣れるのには時間がかかる故に慎重に見守ってきたが、ここにきて良い兆しが見えてきたな。

特派員
また、ルーキーたちの活躍も見逃せません。特に染野唯月と荒木遼太郎は、フィジカル面と体力面にこそ課題を残していますが、その働きぶりは今やチームには欠かせない存在となりつつあります。荒木遼太郎の判断の速さと技術の正確さは末恐ろしいですね…。

ボス
特派員よ。荒木の存在は機密情報だ。くれぐれもヨーロッパのクラブに知られないようにな。彼らはいいところで平気で引っこ抜いていく。特に、ベルギーとポルトガルの連中には気をつけろ。

特派員
かしこまりました。

失点が気になる

ボス
ここまでの話を聞くと順調なように思えてくるが、2分1敗で勝点7を落としている計算になるし、7試合で8失点と守備のあたりは決して不安がないとは言えないな。このあたりどう思う?

特派員
はい、リーグ戦はここ5試合連続で先制点を奪われてますし、流れが悪くない展開の中で喫している失点も少なくないので、もったいない印象が強いです。ただ、単純にここが悪い、という部分がはっきりある訳ではないので、中々難しいな…、と。

ボス
そこを分析して報告するのが君の仕事だろう。何かないのかね?

特派員
はい…。ただ、まず前提として申し上げておきたいのが、今季の鹿島の守備はある程度プレッシングありきで組まれています。しかし、今季は度々申し上げている通り過密日程ですし、よりにもよって夏場の高温多湿の時期です。プレッシングをやるにしても、そもそも必要な体力さえ十分に担保できる環境ではありません。

ボス
なるほど、スタイルは浸透させていかなければならないが、今季はそれをやるには厳しい状況ということか。

特派員
また、これは従来からそうなのですが、鹿島はエリアを守るというよりは一人一人ケアする選手を決めて、その選手にやらせないようにする。マンツーマン意識の強い守り方をしています。ですが、それ故なのかどこかでマークが外された時のカバーやその後のマークの受け渡しが、今季の鹿島はあまり上手くありません。G大阪戦、FC東京戦、柏戦の1失点目はそこだけでありませんが、そうした受け渡しやカバーリングの部分の拙さを突かれている部分があります。

ボス
そこの課題と解決策としては何が考えられるかね?

特派員
おそらく、こうした部分はザーゴの中で取り組むべき優先順位が低いのだと思います。そもそもとして、高い位置からプレッシングを仕掛けたいチームとして設計していますので、後ろで引いて守るシーンというのはあまり想定にありません。むしろ、そうならないようになるべく高い位置でボールを奪いたい。そうした方向にザーゴはまず注力しているのではないかと。

ボス
弱点を直すということより、弱点がさらけ出されるシーンをそもそも作らせないようにする、ということか。

特派員
あとは、個々の成長に期待しているのだと思います。対人戦で無類の強さを誇っていたブエノが今季は抜けましたが、町田浩樹や関川郁万には彼の穴を埋めて余りあるパフォーマンスを期待したいですし、それが単純ですが失点を減らすことにも繋がっていくと思います。もちろん、ディフェンスリーダーとなっている犬飼智也やこれから出場機会を増やしたい奈良竜樹にも同じことが言えます。

ボス
彼らの頑張りには期待したいな。

特派員
また、FC東京戦や柏戦ではそうだったのですが、万が一失点しても相手がひきこもる前に得点できれば、そうした課題はカバーすることが出来ると思います。G大阪戦は前半迎えた決定機を逃してしまったことで、後半ブロックを敷いた相手を崩すという作業に取り掛からねばならず、失点が重くのしかかる結果になってしまいました。前線が点を取ってくれるので例え失点しても問題ないという考えと、取り返すのが難しいので絶対に失点は出来ないという考えでは、守備陣にのしかかってくるプレッシャーはけた違いですからね。

ボス
攻撃の選手たちも自分たちの仕事が出来れば、それが守備を助けることに繋がってくるという訳か。

8月のチームMVP

ボス
チームとしてはこれくらいにして、個人の方を報告してもらおう。では、特派員よ。今月一番良かった選手を一人挙げてくれたまえ。

特派員
はい、私が挙げるのは沖悠哉です。

ボス
今月デビューした3年目のキーパーだな。8月はリーグ戦4試合に出場、4失点か。彼のどういった点を評価しているのだね?

特派員
まず、プレイヤーとしては足元の技術と判断の正確さですね。世界的なトレンドを見てもそうですし、今季の鹿島のようなチームにとってキーパーの足元の技術はもはや必須要素です。鹿島も沖が定着してから、ビルドアップの際に躊躇なくキーパーを使えるようになりましたし、沖が入ることで今まで組み立てに割いていたフィールドプレイヤーの割合を減らすことが出来て、次のフェーズの準備に専念させることが出来るようになりました。

ボス
しかし、8月はルーキーの山田大樹もデビューしたな。彼も足元の技術に長けた選手だったが、彼と沖の違いはどう見る?

特派員
そこが判断の正確さという部分に繋がってきます。正直、足元の技術については二人にそこまで差は感じませんし、シュートストップやハイボールへの対応という面ではサイズが恵まれていることもあって、山田の方が上だと思います。ただ、山田は空中戦などで出ていくのか出ていかないのか、触れるのか触れないのか、といった判断の部分が怪しいところが伺えます。キーパーは判断を間違えると即失点に繋がるポジションですので、その点で安定感のある沖がチョイスされるという判断は理解できますね。

ボス
なるほど、沖について他に何かあるかね?

特派員
彼は鹿島の歴史を変えたと思っています。今までずっと曽ヶ端準とクォン・スンテの牙城が高かったですが、彼らが調子を落としたタイミングで沖は起用され、そしてそのデビュー戦となる鳥栖戦で完封勝利という結果を残しました。正直、沖を起用したザーゴも鳥栖戦の時は半信半疑の部分もあったと思うのですが、分かりやすい結果を残してくれたことで、沖を今後も使い続ける理由が出来ましたし、今季は若いキーパーを積極的に起用していくという踏ん切りがついたと思います。キーパーの世代交代は長年チーム内外で必要性が叫ばれてきましたが、ポジションが一つしかない分実行するのは非常に難しいです。沖の鳥栖戦のパフォーマンスがなければ、沖がレギュラーを掴む可能性も、山田が起用される可能性もグッと下がっていたと考えると、彼は重い扉をこじあけたといってもいいと思います。

ボス
そうした事情も込みでの選出か。引き続き沖には好パフォーマンスを期待したいところだな。

総括

ボス
話が長くなったな。では、そろそろ総括といこうではないか。

特派員
はい、徐々にではありますが結果も出てきましたし、チームとしても大分雰囲気が良くなってきたように思えます。あとは、この流れを維持しながら課題を解決しつつ、スタイルをより浸透させて、順位を上げていくことに繋げられればベストだと思います。

ボス
そうか、では9月の展望も頼む。

特派員
9月は初戦で現時点4位の名古屋、19日には2位のC大阪との対戦が待っています。どちらも上位勢なのはもちろん、守備の安定感に定評のあるチームです。FC東京や柏に勝つことは出来ましたが、今季の鹿島は上位陣との戦績が決していいとは言えません。特にこうしたチームに先制点を奪われた場合、そこからゴールをこじ開けるのに苦労して勝点を失うケースが少なくないです。名古屋とC大阪に対してどのように戦うのか、先に点を与えない戦い方が出来るが、万が一取られてもすぐに取り返して自分たちの不利な展開にもっていかないように出来るか。この2チームとの結果、特に最初の名古屋との対戦は注目です。

ボス
7月、8月ともう十分すぎるくらい勝点は落としたからな。そろそろ、連勝を重ねて上位を争いに加わりたいところだ。彼らにも勝ってくれることを期待しよう。

特派員、ご苦労だった。引き続き、調査にあたってくれたまえ。


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