見出し画像

京サラ×北枕タッグは果たしてプラスなのか

さて、いよいよ京サラの3年目、2023年募集馬が金額含め出揃ったわけですが、ここまでその話題を一身に集めているのが北枕鳩三郎なる人物。

https://kyoto-tc.jp/cn/1483

昨年の募集馬で2頭のプロジェクト馬を選出するとその2頭があっという間の満口に。
私含め(こいつ誰やねん)と思っていた人にも、その求心力の高さを見せつけました。

その功績を買われてか、今年はセレクトセールでブリックスアンドモルタル産駒のキープレイヤー2022を3410万という(京サラにしては)とんでもない高額で購買すると、返す刀でサマーセールに乗り込み7頭もの北枕セレクト馬をGET。
結果、今年の募集馬の25頭のうち8頭が北枕セレクトという圧倒的なシェアを獲得してしまいました。

これには当然多くの北枕クラスタが沸き立っていたわけなんですが、その一方であまりに急速に北枕氏に傾倒していくクラブの方針に不安を覚える会員も多く見受けられ、賛否両論を巻き起こす事態となりました。

この京サラ×北枕の蜜月タッグ、果たして京サラというクラブにとってプラスなのでしょうか?


【北枕鳩三郎なる人物のスイートスポット】

早速結論から言っちゃいますが、個人的にはこのタッグ大いにプラスだと思っています。

ぶっちゃけてしまいますが、ゴリゴリの血統&ライン派の僕は北枕氏の功績をあまり知りませんでしたし、これを書いている今現在もあまり解っていません。
それは、私自身が世間に数多いる『相馬師』なる方々が玉石混淆であり、それを信じるよりはより信頼感のある牧場関係者の声ならぬ声の方が信用が置けるというライン派の理念に基づいている部分が多分にあります。(別に相馬師の方を一括りに貶してるわけではないから気を悪くしないでね)

そして知らないなりに色んな方の北枕氏や北枕セレクト馬への評価を聞いてみた結果、一応の結論にたどり着きました。

そんな私の北枕氏への現時点でのイメージではこんな感じ。

・ゴリゴリのダート馬は好まない
・かといって芝のクラシック路線狙いでもない
・出力の高さ(筋力)よりは運動神経の良さ(機構)を重視している
・馬格はあまり気にしてない
・ブラックタイプ含め血統も多分気にしてない
・故障のリスクはそこまで気にしてない

まあ大体こんな感じで認識していたのですが、そのイメージをかなり確固たるものにする出来事が最近ありましてですね…。

それは去る9月2日の札幌7Rの新馬戦。
このレースに勝ったのはカリフォルニアクローム×ディープインパクトの牝馬スプリングノヴァでした。

スプリングノヴァ
https://db.netkeiba.com/horse/2021104318/

父カリフォルニアクロームについては今更アレコレ書くこともないと思うので割愛しますが、イチ血統ファンとしてはこの種牡馬が日本で成功するかどうかの大きなターニングポイントの一つがこの『ディープ肌との配合で芝の活躍馬を出せるか』ということでした。
なので当然この馬にも一応注目していたのですが、とはいえ400㎏にも満たない馬体で兄弟3頭は全て中央未勝利…。
セプテンバーで616万というのも、当日6番人気なのもまあやむなしと思っていたところ、見事快勝したわけです。

そして、後日とある方(わかる人にはわかる)のブログを見ていると「この馬をパドックで見た北枕氏が推奨していた」という衝撃の事実が判明しました。

その時に私の中での北枕氏へのイメージはほぼ固まりました。

「なるほど、この人は“こういう馬”が好きなんだな」と。
そりゃアリストロシュ坂路全然動かないはずだ、、。


【京都サラブレッドクラブの理念】

京都サラブレッドは元々個人馬主であった山上氏が、マイケル・タバート率いる超絶大問題クラブ(笑)であったニューワールドレーシングの負債を半ば引き継ぐ形で、自らの理念である『損を少なく』をそのまま落とし込んだクラブとして発足しました。

実質1年目から募集価格1000万のフルムがオープン入り、400万のデアノヴァが2勝と格安馬が続々と勝ち上がり。
この価格帯で大健闘と言える勝ち上がり率33.3%を記録すると、2年目も同じく33.3%を維持。
前身クラブの悪評をゆっくりと、しかし着実に払拭しながら会員数を徐々に増やして来ました。

しかし、私はその一方である懸念を抱いておりました。
それは、このクラブが『バイヤー系クラブ』であるという点です。

現在、国内には23のクラブが稼働していますが、上位に君臨するのはサンデーRや社台RHなどの社台系はもちろん、日高系でもラフィアンやノルマンディーなどのいわゆる牧場母体系が圧倒しています。
なにより今でこそこれだけのクラブが動いていますが、それほど遠くない過去にバイヤー系クラブにはまぎれもない冬の時代がありました。

JOY、ブルー、ゴールド、友駿、サウスニア、衰退するクラブは○外に頼っていた大樹や母体ごと破産したシルクを除けばほぼバイヤー系ばかり。

そもそもが採算の取りづらい一口馬主という趣味において、牧場がリスクヘッジのために運営している意味合いが強い牧場系クラブと違い、馬の仕入れ自体にリスクを伴うバイヤー系クラブのシステムは大レースを勝てなくなると同時に急激に完全に破綻してしまいました。

その後、競馬人気ひいては一口人気が再燃し、日高系のノルマンが急激に成長するにつれて日高色の強いバイヤー系クラブも再興し始めました。
ですが、昨今のバイヤー系は採算性を重視する方に舵を切り始め、確かに活路を見出し始めた部分はあるものの、その根幹がかつてと大きく変わったようには思えないんですね。

大躍進を遂げたノルマンディーは発足初年度の募集頭数が20頭。2年目も同じく20頭でしたが、会員の急増と同時に3年目には35頭、4年目には43頭と急激に募集頭数を増やしていきました。
これは牧場母体だからこそ出来た部分でもあるのですが、とはいえ当初はノルマンもセールでの購買も多くを占めてたんですよね。さすが牧雄。伊達に走る馬を見抜いて個人馬主に売りまくっているだけのことはあります(暴言)

そうなんです。京サラがここから更に躍進していくためには募集頭数の増加は絶対命題といっても過言ではない、避けては通れない道なんですよ。

だってね、皆さんこのクラスのクラブで一番のストレスってなんですか?
未勝利勝てない、使えない、それも当然あると思います。でもこのクラブにいる人はそう言った一口の、ひいては競馬自体『苦』の部分も一定受け入れてる人たちが多いんじゃないでしょうか。

そんな人たちにとって一番のストレスっておそらく、出資したい馬に出資できないとかそもそも出資したいと思える馬がいない、そっちの方が退会に直結すると思うんですよね。

当然山上さんの頭にもそれはあったはずで、そんな折にチームを組んだ北枕氏のプロジェクト馬が2頭完売したことは山上氏にとってはまさに僥倖の出来事だったんじゃないでしょうか。


【真のニッチ戦略】

多くの日高系クラブ、特に格安クラブや格安馬を中心に出資している方に聞きたいのですが、皆さん、芝馬とダート馬どっちを狙いますか?
おそらく多くの人が後者を選択すると思います。

理由は簡単で、そんなもん芝の一線級で社台含めた大手に勝てるわけないやん、、と思ってるからだと思うんですよね。他でもない私もそうです。

実際、種牡馬の勝ち上がり率上位はほぼダート種牡馬や芝ダ兼用種牡馬で占められてるので、潰しの利きやすいダート馬を狙うのはそこまで間違った選択だとは思いません。
ですが、それが反面落とし穴なんです。

それはなぜか。これも理由は簡単。『みんな同じことを思ってるから』です。

だってね、ダート馬狙う時ってどういう馬狙いますかって話なんですよ。
馬格の大きい馬と小さい馬。牡馬と牝馬。

100人いたら90人ぐらいは前者を選ぶ人が多いと思うんですよね。もちろんそれは間違ってません。
馬格の大きい馬の方が、牡馬の方が、芝でも多少そうですがダートではより良績を残してます。

そしてそれはセールで馬を買いに来てる人も同じなんですよね。よって当然相対的に値段も上がります。

つまりですね、ニッチ戦略のつもりでダート馬を狙ってるつもりが、実は全然ニッチでも何でもない、何ならダート路線という賞金期待値の低い狭いパイを取り合ってるレッドオーシャンである可能性もあるってことなんですね。

さて、長い回り道をしちゃいましたが、ここでようやく北枕氏の話に戻ります。

先ほども話したように、北枕氏がおそらく得意としているのはどちらかと言えばダートより芝、中でも2000m未満が適性の馬なのではないかと見ています。

以下はサマーセールで北枕氏が購入したラインナップの父馬の芝ダ出走比率です。

イスラボニータ(芝59%)
コパノリッキー(ダ89%)
ファインニードル(芝56%)
デクラレーションオブウォー(50%)
レッドファルクス(50%)
ディスクリートキャット(ダ70%)
フォーウィールドライブ(デビュー前)
アメリカンペイトリオット(芝51%)

どうでしょうか?
コパノリッキーがかなりダートに寄ってますが、概ね中間ぐらいの馬が多いですよね。

ちなみにコパノリッキーも同じゴールドアリュール産駒のエスポワールシチー(ダ92%)やスマートファルコン(ダ92%)と違って5代アウトなせいか、比較的母の傾向が出やすく芝でも走れそうな産駒が多いように思えます。

(母ステイゴールド、SS3×3のコスモフロイデは芝で中央2勝、芝での勝鞍はないものの芝の重賞で2度の5着に好走したアームズレインはコロナドズクエスト×スティールハート)

なお、山上さんが2頭購買したホッコータルマエは(ダ95%)、京サラ御用達のシニスターミニスターは(ダ98%)のゴッリゴリのダート傾向なので、北枕氏の食指が動かないのも納得です(笑)

今回の募集馬まだ測尺出てませんが、おそらく北枕セレクトの馬は現時点で小さい馬がほとんどだと予想してます。
だからこそ安く買えるし、芝馬ならそれでも構わないということなんでしょう。

いかにも良さそうに見えるダート馬ではなく、一見良く見えない小柄だったり非力そうな馬から芝でそこそこ活躍できる馬を安く発掘する。
それが北枕氏に与えられたミッションなのだとすれば、それこそが真のニッチ戦略、真っ赤な海の底に広がるブルーオーシャンなのかもしれません。

そして実際この価格帯で7頭、キープレイヤーも含めれば8頭のラインナップを増やしたわけですから、先述の募集馬を増やすというミッションもクリアしています。

これが現状、牧場系でない京サラが発展してゆくために山上氏が示した道筋なんではないでしょうか。

これらの馬がどういった活躍をするかはまだわかりませんが、少なくとも3年目に25頭ものラインナップを揃えることができたこと自体評価してしかるべきというのが私の見解です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?