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呪いの言葉 リターンズ

「呪いの言葉」ってありますよね。

超自然的な力や藁人形などのアイテムを使って誰かの不幸を願ったり、強い怨念を持った存在が何か仕掛けてくる、というのもよく使われる「呪い」のイメージですが、僕が今回書きたいのはその呪いではありません。

誰かから受けた嫌な言葉や態度がそのあとずっと心の奥に引っかかっていて、その先の人生を苦しめ続ける、というのが今回の「呪いの言葉」です。

このnoteでは僕に取り憑いているまあまあ軽めの呪いと、それとともに生きてきたここ数年の気づきを述べようと思うのですが、読んでいる人によってはかなり強力な呪いをお持ちで、これをきっかけに想起してしまう恐れがある方もいらっしゃるかと思います。そんな方はそっとこのページを閉じて深呼吸してから、リラックスできる環境でイエティクラブのことを検索してみてください。

「こんな動物いるんだ〜、へ〜」といった気分になるのでオススメです。


大学時代に受けた呪いの言葉

大学時代の終盤、イラストを絡めた卒業制作に着手していた僕は担当してもらっていた教授になんとこんなことを言われました。


「こんな下手な絵で食っていけるんだったら私もイラストレーターになろっかな〜」「絶対に食ってけないよ、早めに諦めた方が業界のためになる」「人を不快にさせるタイプの嘘つきだよね」(原文ママ)


こういうこと言う奴がとうとう出てきたな、、こわ〜〜

といった感想でした。絵を描いて評価されたい人間がいる以上、厳しい評価を下してくる人間は一定数います。ていうかなんでさらっと人間性の否定まで織り込んで来るんだ?でも特に言い返す言葉も思いつかないし嫌なことを言ってくる人間は普通に理解できなくて怖いのでいつもヘラヘラと「そうっすね〜」と笑っていました。僕からしたら正体不明の怪異、悪霊です。

その人は普段から他人の嫌がることをニヤニヤしながら言うタイプだったのであまり意外では無かったのですが、何よりびっくりしたのが思ったより自分が傷ついていたと言うことでした。

自分は絵がまだまだ下手だという自覚も大いにあるし、別に食ってけるかどうかはあなたが決めることじゃない、そんなんじゃ傷つかないし絶対に描くのやめませ〜ん!と強く思っていたのに、明確にこちらを傷つけようとする悪意になんだか力を吸い取られてしまったのです。他にもプライベートなことも言及されたりと嫌なことをたくさん言われたのですが、わざわざ引っ張り出すのも嫌なのでそれらは心の炊飯器の中に厳重に封印しておきました。

その後はスズメの涙の蒸留水のようなやる気をさらに無くしつつ卒業論文と卒業制作を大学史上稀に見る低レベルで仕上げ、悪霊を完全に退治できずに終幕を迎えるホラー映画さながら、逃げるように大学を卒業しました。


帰ってきた呪いの言葉

卒業後フリーのイラストレーターになった僕は、少しずつもらえるお仕事が増えるようになりました。そもそも絵を描くことが好きなので非常に楽しく、僕にとってはまさに天職です。

しかし絵を描いているとあの言葉たちが僕の手を鈍くさせます。まるでそこそこ好評で終わったはずのホラー映画の続編のように。

「下手」「嘘つき」「イラストレーターにならないほうが業界のため」

辛くなってきましたね。

実際、僕の絵は上手ではありません。特に構図決めや仕上げ部分などは同業者の方々に比べて劣っています。あの言葉たちは別に間違っていないかもな、と思っている自分もいます。

人に言葉の呪いをかけることは絶対に悪いことですが同時に認めたくない事実があります。それは僕が「ああ言われたから今頑張れている、というのも少しあるのでは?」と思ってしまっていることです。

・「下手」→下手だからもっと練習して上手くなりたい。

・「嘘つき」→つい小手先で描いてしまって印象だけよくしようとする癖があるから素直に実直に絵を描いていきたい。

・「業界のためにならない」→いやそれは知らん

といった具合に、悔しさをバネに頑張ってきちゃった自分もいるのです。これは由々しき事態です。呪いの言葉を投げかけてきた相手が絶対に悪いのに、その相手を1mmでも肯定してしまうことになるなんて。ああどうしよう。


怪異の正体を知る

たまたま悪霊の住むお家に入ってしまったり、変な場所で写真を撮ったり、特定の着信音を聞いたり、、些細なことをきっかけに悪霊は全力を出してこちらを攻撃してきます。

こんな時、無理に除霊しようとしてはいけません。怖くないさと突っぱねることも悪手ですし、音が聞こえた方に対して何か言い返したり立ち向かうとまず殺されます。

恐怖体験を経験したら、真相究明パートに早めに移行するのが良いと考えます。なぜ相手はこんな呪いをかけてきたのか?どうすれば呪いは解けるのか?なるべく冷静に、客観的姿勢で事態を観察する努力をしましょう。

するとだんだん見えてきました。どうやら今まで長い間ハードな働き方をしてきたその人は、煮え切らない態度で卒業製作に取り組み、イラストレーターとして仕事をしているなどとのたまう学生に対して苛立ちが募ってしまったらしいのです。こんなふうに考えると、やっぱり相手も悪い人ではないんだな、、

とはならず、感情をコントロールできない人なんだなと理解しました。

自分が傷つけられた以上、納得はできなくて当たり前です。大事なのは正体不明の怪異の真名を知って、物理で対抗できるようにすることでした。精神世界で何度も言い返すシミュレーションをしても状況は好転しません。

嫌な事を言われて頑張れてしまったのだって、呪いの種類を見極めて対処した自分が偉いのです。あの言葉のおかげで強くなれたな、、とは思いません。すごく怖い存在に追い詰められていたように思っていたけど、結局のところ感情のコントロールが苦手な人とお話をしていただけだったのです。

今回はたまたまじわじわと怖がらせ、追い詰めてくるJホラータイプの呪いでしたが刃物やチェーンソーで追いかけてくる洋ホラータイプの呪いもあるかと思います。すごくびっくりするし殺傷力があるタイプ。そう言った場合は安全な場所に避難すること、そしてその道のプロに相談するのがベストな方法だと思いますので、無理をせず早めに逃げてください。

しかしながら人を呪わば穴二つ、呪われちゃった!という態で書いていると、僕もまた相手を強く呪っていることに気づきました。なるべく面白おかしくしようと思ってもネガティブなことを書き出すと自分で勝手に落ち込んでしまうので、おそらくもう滅多にこの話は出てこないでしょう。

なんども反芻しながらも以前に比べて呪いの言葉たちが戻ってくることはぐんと減り、よりのびのびと絵を描いていられます。

もちろん、絵を描くのが好き、楽しいというのが描き続ける原動力ですが、お仕事の依頼をしてくれるクライアントさん、絵が好きだと言ってくれる皆さんの言葉が呪いに対抗するための一番の力になっています。いつもありがとうございます。

今回は何だかネガティブな話になってしまったので、近いうちに誰かに言われて嬉しかった「祝いの言葉 ウレピッピーズ」みたいな投稿をしようかと思います。

ではまた!





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