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Case4 : ぜんぶきんしゅのせい

*本編はすべて無料で読めます。最後にある症状の説明書きの画像のみ有料です。

身体にどこか不調な部分があれば、「歳だね」と言うのは、いつしか同年代の友人とお互いをねぎらうためのスイッチのようなものになっているが、思い返せばここ2年ほど、「調子のよい時」は毎月の1ヶ月のうち一週間くらいしかなかった。どうやら加齢だけじゃなかったようだ。


一週目・生理の一週間:出血の量が多くてふらふらする。(何十年経っても生理中の出血は不快で慣れない。)
二週目・生理が終わった直後の一週間:一番スッキリしている。運動も捗る。←この一週間だけよい調子。
三週目・排卵が始まる:排卵痛(生理痛の軽いやつ・チクチク痛む)があり、下腹がパンパンに腫れる。おりものが多い。
四週目・生理までのラストスパート一週間:PMSがひどい。憂鬱でイライラも激しく、家族にあたってしまう。死にたい思いにかられる。


こうして書き出してみると、「なんか調子悪い」みたいな状態がデフォルトになっていて、それが普通になっていた。辛かったはずなのに、慣れの中で不感覚になっていた。

他人の生理の辛さを体感することはできないので、今でも他人と比べて重いのか・軽いのかはわからない。

でも、精密検査が終わって話を聞きにT病院を再訪した際に、先生の説明で私は自分の病気についてやっとしっかり理解することができた。



「まず、今、タケダさんの子宮が今どうなっているかといいますと」

と言いながら、フレームの細い眼鏡をかけたひょろっと細い男性の先生はPCでカルテをカタカタと入力したあと、今度は白い紙とボールペンを取り出し、さらさらと私の体をよこから透視したような絵を描き始めた。筆がなめらかで迷いがない。さすが内蔵を描くことに慣れている。座ってるからわからないけど、身長何センチくらいかなあと関係のないことが頭をよぎった。


(*ここから先生のセリフ、記憶を頼りに書いているので、専門的な表現や文言などあってない可能性があります。ニュアンスとして受け取ってください)


「ここに大腸があって、膀胱。そしてこれが子宮です」

と、大腸と膀胱の間に子宮と思われる円をすっと描いたあと、その上からまたにゅっと大きい丸を描いた。

「今こんな感じで子宮筋腫があるので子宮が大きくなっているんですね」

というようなことを言って大きい丸を斜線でシャシャシャと塗った。

大きい丸は膀胱の上にも乗っていた。

「で、貧血もそうなんですが、子宮筋腫が他の臓器を圧迫していることもあってこんな症状がおこってるんです」

と言いながら、その横に今度は次々と漢字を書いていった。


・過多月経→貧血

・頻尿

・腰痛

・腹部ぼうまん


どれもすべて私がここ数年悩んでいたものだった。

数年前のJR SKI SKI のキャンペーンコピーをもじった言葉があたまに浮かんだ。


「ぜんぶ筋腫のせいだ」


貧血でちょっとした運動で心臓がバクバクするのも、トイレに頻繁に行きたくなるのも(なので映画館で飲みものが飲めない)、下腹がパンパンになるのも、子宮筋腫、つまり病気に起因していて、異常なことだったんだ。

こうやって原因を第三者からクリアにしてもらうと、なんだか今までの不調を認めてもらえたような気がして少し気持ちが楽になった。

私が前のめりで先生が描いた図を見ている間にも先生は説明を続けていく。

ちなみに、先生は字が私の100倍お上手だった。私は字も歌も下手なので、それらがうまい人達が圧倒的に羨ましい。

「治療には2種類あります。内科的治療と、外科的治療。内科的治療は偽閉経療法といって、薬を飲んで生理を止めます。生理を止めると貧血もおさまってきますし、筋腫も小さくなります。でもこの薬は六ヶ月限定でしか使えないので、タケダさんの筋腫の大きさを考えると、まずはこの偽閉経療法をして筋腫を小さくしてから、外科的治療をしたほうがいいかなと」

と話しながら、外科的治療の方法をふたつ同じ紙に書いた。

・子宮筋腫だけとる→子宮温存可能。妊娠脳可能性残る。再発する可能性あり。

・子宮とる→再発することはない。妊娠はできない。

そして、上のふたつの治療法にかかるように「どちらも卵巣はとらない」と書いた。卵巣をとらないと、更年期障害がおこりにくいらしい。知らなかった。

もともと、こどもはひとりで十分と思っていたし、最初に行った病院で、子宮筋腫が大きい場合は、筋腫だけとるよりも子宮ごととってしまったほうが楽、ということも聞いていたので、私の選択は決まっていた。


「子宮ごととりたいです」


心は決まっていたのに、口から言葉にして発すると、心拍数が一気にあがった気がした。

先生はほんの一拍、間をおいたあと、こう続けた。

「そうですね。まずは偽閉経療法を3ヶ月やってみて、3ヶ月後の子宮筋腫の大きさを見てから、どんな手術をするか決めましょうか。それに、今の貧血だと手術ができないので」

筋腫の大きさによって開腹手術か、腹腔鏡手術か決まるとのことだった。

三ヶ月後。1月の今はまだこんなに寒いけど、4月中旬にはもう桜も散っているだろう。最近は一ヶ月があっという間に感じるのに、この時はとても先のように感じた。

そして私は病院の近くの処方せん薬局で、生理をとめる薬「レルミナ」と鉄剤を三ヶ月分たっぷり処方された。


*ここから先は実際に先生に描いてもらった私の身体の説明イラストと治療法(1Pのみ)です。

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