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休日の話

8月8日
 雨は夜の内に上がったようで、窓の外の洗いたての空気が気持ち良かった。
 僕とリンが起き出すと、座敷で寝ていたヨネヤが廊下に顔を出した。寝ぼけた顔で、散歩に一緒に行きたい言うので玄関で待っていると、リンは妙に嬉しそうにヨネヤが来る廊下の方を向いて待っている。人数が多いとリンも楽しいのだろう。
 散歩に出る前に、昨日作った餌台にオレンジを切って出しておいた。

 ヨネヤが紐を持ちたいと言うのでリンを任せてしまうと、なんとなく手持ち無沙汰になった。リンが時折立ち止まってヨネヤと僕の方を見る。
 今日は公園の方へ行こうかと言ってみたら、なんだか納得したようで、それきりなんでもない顔をしていた。

 散歩から戻って庭をこっそり覗くと、やはりメジロが来ている。
 すっかり物慣れた様子でおいしそうにオレンジを啄んでいた。ヨネヤが感心したようなため息をつくと、何故かリンが得意気にヨネヤを見上げていたのが可笑しかった。
 朝飯を食べてから、蔵の虫干しの続きに取りかかる。
 途中で祖母から電話が来て、明後日の十日に祖父と二人でこちらに来るという連絡。イズミヤさんの所へは、十二日に行くから忘れないようにと念を押された。

 ヨネヤは今日も虫干しの手伝いを買って出てくれて、本を運び出し、また元に戻すところまで手伝ってくれた。
 夕方近くにリンと一緒に、帰るヨネヤを駅まで送る。
 今度お礼をするから何がいいかと訊ねると、また虫干しの手伝いをしたいと言う。蔵に入るのが楽しいらしい。それならその後でささやかな宴会でもしようかと言ったら、それがいいと答えて、別れ際にリンの頭をわしわしと撫でてから帰って行った。

 夜、妹から電話。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんが来たら、泊まりに行きたいと言うので、いつでも来て良いと答える。
 それじゃあ、行く時に連絡をするねと言って電話は切れた。妹は祖母の性格に似て、いつも行動が唐突だから直前に連絡してくるかも知れない。
 リンに、しばらくしたら賑やかになるよと言ったら嬉しそうに鼻をすり寄せて来る。
 リンも成長してきたので、そろそろ座敷犬を卒業しなければならないかもしれないなと、ふと思った。

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