『静かな日々』にまつわる蛇足

 作者の意図みたいなものは、読書にはさして必要ない気がするのだけど、何故これを書いていたのか思い出したので書き留めておくことにした。蛇足なので読む必要はない。

 誰かに見せるつもりがあるようなないようなものを書いている人、を書きたいと思って過去にしばらく書いていた実験小説が『静かな日々』だ。
 主人公の視点のみで、主人公を取り巻く奇妙な状況が、少しだらけた感じに描き出されたら愉快かも知れないと考えていたと思う。

 そうして書き始めたのが2006年くらいで、だらだら始めたせいで尻すぼみになり、2008年くらいに気を取り直して改稿し始めた。それからまた尻すぼみになり、十二年もしてから再び書き直している。着地点は考えているが、この書き方でそこまでたどり着くのかは分からない。
 「サカエダさん(6月16日)」から順に日付を追うと、主人公のちょっと奇妙な日常が浮き上がってくる、つれづれ日記式連作小説。
 ある程度の量になったら、もう少し章立てして見やすくしたいと思っている。せめて季節ごとか、月ごとくらいにしないと読む気がしないだろう。

 夏休みの最終日に、夏休みの宿題の日記を一日ででっちあげたタイプの人が書いている。
 つまり、リアリティを持たせるために、何も起こらない日もあれば、ドラマティックな日もある。そんなリアリティはいらないのかも知れないけれど。
 我々は日常という言葉で日々を過ごしているが、日常というのは、良い事であれ悪い事であれ、たまたま何かが大事にならなかった日の連なりに過ぎない。
 そんなわけで、これはある主人公の日常の物語なのだ。

武田若千

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?